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2008年01月25日(金)更新

天才ミュージシャンの息子、時を超えた幸せな親子関係を作る

今週は仕事や講演、加えて決算であわただしい中、間隙を縫って
ひとつのコンサートを見に行ってきた。

「Zappa plays Zappa」というもので、1993年(もう15年前か!)に
亡くなった偉大な音楽家フランク・ザッパの音楽を、当時一緒に演
っていたミュージシャン(レイ・ホワイト、スティーブ・ヴァイ)をゲスト
に迎え、息子のドゥージル・ザッパが演奏する、というものだ。

父のフランク・ザッパが日本で公演したのは1976年。今回のもの
は実の息子によって32年ぶりにフランク・ザッパの音楽が日本で
甦ったことになる。
zappa plays zappa
フランク・ザッパといっても、ほとんどの方が耳にしたことはないだ
ろう。ただ、ディープパープルの「スモークオンザウォーターの歌詞
に出てくるミュージシャン」といえば思い出す人も居るだろう。
生涯60枚を越すアルバムをリリースし、その曲調は現代音楽から
ジャズ、リズムアンドブルース、ハードロックまでを取り込んだ幅の
広い(逆に言えばとっつきにくい)ものだった。
面白いのは楽曲の創作方法で、ツアーのリハーサルに半年をか
け、数百ある曲をいつでも演奏できる状態にしていたことだ。結果
コンサートはその日ごとに曲が変わることも珍しくなく、新曲もそう
やってライブレコーディングされたものを後日編集しなおしてアル
バムとしてリリースするというユニークなスタイルをとっていた。
演奏が完璧なのでイントロはニューヨーク、歌はシカゴ、ギターソ
ロはロスアンジェルスのテイクからつなぎうあわせる、といった具
合だ。

さて、息子のコンサートも大阪、東京、横浜で半分ぐらい曲が違っ
たようで、すべてを見られなかった参加者(私もその一人)の悲鳴
がネットのコミュニティで響いていた。1回のコンサートがおおよそ
2時間45分なので、その充実振りも理解できる。

なぜ「共演」かというと、亡くなった父は、そうやって生前自分の
ライブの音源やビデオを几帳面に録っておいたため、今回のコン
サートでも、何曲かは背景のスクリーンに30~20年前の父のコ
ンサートが映り、その父のボーカルトラックやギタートラックに合わ
せ、ステージ上の総勢9名のメンバーが演奏するという、ユニーク
なものだったのだ。
時として息子のギターソロをバッキングする姿さえあった。
(もちろん当時は他のギタリストがソロをとっていたのだが)

テクノロジーってこういう風に使うんだよな、という見本だ。

ただでさえ口うるさい親ザッパのファンが集まる中での演奏は息
子として相当緊張を強いられたであろうし、逆に偉大な父に「なに
くそ!」と挑みそうなものだが、実際の彼は始終笑顔でリラックス
し、「僕もみんなと同じく父の音楽の大ファンなんだよ」とスクリーン
上の父との共演を楽しんでいるようだった。

親子と、一緒に演奏した仲間と、そしてファンが同じ気持ちで作り
上げたと言える、今まで経験したことのない暖かい空気に包まれ
た本当にすばらしいコンサートだった。
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