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2008年11月30日(日)更新

「純粋なる形象 ディーター・ラムスの時代-機能主義デザイン再考」展

先週あたりから年末進行に突入し、様々なイベントやそのセットアップに
奔走し、なかなかエントリーが出来ない状況だった。

そんななか、28日の金曜日は大阪である業界の国内/外資系の企業広報
の方が集まる勉強会に講師として招かれた。この件に関してはまた別途報
告したいと思う。さて、本来は夕方からのセミナー、その後の懇親会に参
加し、新幹線の終電でその日のうちに帰京する予定でいたのだが、自腹で
一泊し、翌日に帰る事にした。
その理由は大阪港のそばにあるサントリーミュージアム天保山で開催され
ているディーターラムス展
を見るためだ。

tenpozan
ディーターラムスは1997年に勇退するまで四十年以上に渡りドイツの
ブラウン社のデザイナー及びデザインディレクターを務めた方だ。

rams

その業績を網羅する300以上の製品を見られる稀な機会で、このタイ
ミングに大阪の仕事があって本当にラッキーだった。

数年前にも六本木のアクシスギャラリーで同様のものが開催されたが
規模が圧倒的に違う。特にポータブルラジオからモジュラーステレオ
のコレクションが圧巻だった。

ブラウン社のデザインはどれも究極に考え抜かれた謙虚さやストイシ
ズムのようなものに立脚しているのだけれど、そのデザイン言語を読
みくだいていくと到達点に朗らかさや優しさ、が感じられるのが、た
だひたすらすごい。

ブラウン社にはデザイン哲学がある。
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‐革新的であると同時に、自然である。
‐機能的であると同時に、感情に訴える。
‐識別的であると同時に、個性と、世界的に受け入れられることを
調和させる。
‐恒久的な品質を誇ると同時に、高水準の視覚的アピールを備える。
‐明確であると同時に、最適条件の多機能を提供する。
‐誠実に、誤った期待を抱かせることなく、みずからの基本価値を
肯定する。
‐審美的であると同時に、高度な合理性をも表現する。

これら対立するニーズを調和させ、デザイン要素の説得力ある統合を
達成できるようにするための価値の統合は不可欠と考えます。
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http://www.braun.co.jp/designs/index.html

そうなのだ。常に対立するニーズを調和させ、解決する。
私はそこにデザインやコミュニケーションの力や役割を見た。

面白かったのはロゴ(ブランドのマーク)の位置がそれぞれの製品で
意外に一定しておらず、上面や側面の場合すらある事だ。ただしどの
製品にも「ロゴをうつのはここしかない」という所に打ってある。そ
してそのまわりにくだらない品番表記(FX-800diみたいなもの)が
ないのが良い。

そんな些細な事もひとつひとつの製品が画一的にならず個性を持って
存在しているかも知れない。

この展覧会のために用意された図録の出来も素晴らしく、至福のひと
ときを過ごす事が出来た。

東京で開催されるかは判らないが、デザインやビジュアル表現に関わる
方にはお勧めだ。