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2008年03月12日(水)更新

渋谷陽一氏にみるインタビュワーの本懐

「ロッキンオン」という、70年代から続く音楽雑誌がある。
最近はあまり買わなくなったが、編集長(現社長)の渋谷陽一氏の
レッドツェッペリンへの傾倒はすざましい。
大好きなアーティストだからといっておもねることなく、ギタリストの
ジミーペイジ氏への以前のインタビューでは、アーティスト自身が一
番良くわかっている過去の失態についてまで芸能リポーターのよう
にしつこく聞き、本人に嫌われていた(笑)。
しかしそういうしつこさも、アーティストの本質に迫りたいという自分
自身の強い思いがあればこそ、なのであろう。

今回、プロモーション来日したジミーペイジ氏から当初「またおまえ
か」と嫌われつつも、結果的にかなり饒舌に語らせ、他誌とは違う
切り口で内容の濃いインタビューを成功させたのはさすがだ。
rockinon
「リハーサルはプラント抜きの3人でほとんどこなしていた」
「プラント以外の3人は最後までかなり気合が入っていた」
「なぜホワイトストライプスを気に入っているのか」
などなど、他誌にはないユニークな内容で、読み応えがあった。

インタビューはどちらかが受け手でどちらかが投げ手、のままでは
通り一遍のもの以上にはならない。インタビューを通して、お互いが
何を得るのか、というビジョンの共有(もしくは有無)が重要で、今
回の渋谷氏のインタビューは、それがジミーペイジ氏に伝わった
成果と見ることができる。

これを私たち企業側でコミュニケーションに関わる立場から見た時、

「リリースを出す」
「メディアの目に留めてもらう」
「取材してもらう」
「記事として取り上げてもらう」
「カバレージの量で効果測定する」

というように一方的な都合でしか捉えていなかった、ということはな
かっただろうか?
「私たちはおまえらの広報代理人ではない」という記者の声を聞いた
こともある。また、最近多いネット上のリリース配信サービスも、それ
だけに頼ると、効果は一時的なものにしかならない。

やはりコミュニケーションとは関係性の構築であり、一方的、一時的
なプロセスだけでは成り立たないものなのだ。

記事を読んだ私が新たなCDを買えるのも(買えないのも)、家内との
関係性の構築の所作によるのだ。