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2010年01月21日(木)更新

NEC 社長と部長直接対話

本日の日経産業新聞に目立たないけど面白い記事が出ていました。

NECの矢野社長が、NEC本体の部長職にある方の約7割と一部のグ
ループ企業の部長職の方の一部、あわせて約1500人の方と直接
対話を行う、という内容です。

1回に150人ずつ、仕事や会社に関する質疑に答えながら現場の
リーダーである部長たちと問題意識の共有を行い、社内の活性化に
つなげる、というものです。

情報通信の最先端企業でもあるNECさんでさえ、今この時代にこの
ようにアナログな取り組みを行うというのは非常に印象的です。
(もちろん賞賛の意味で、です)
今の時代ですから、情報流通、共有ならナレッジシェアリングツールや
イントラネットで効率的に、と考えがちです。もちろんNECさんでも、
そのようなツールは活用しているでしょう。そんななか、NECの矢野社
長がこういうアクションを取る意義を考えてみました。

それはコミュニケーションの多様性です。
電子的なツールを使ったコミュニケーションは「行間」や「間合い」、
「顔色」や「ニュアンス」が伝わりにくいものです。
2チャンネルや携帯メール、ツイッターなども顔文字や独特の表現、
独自のマナーなどを織り込みながらある意味生き生きとした文化を
形成してきた(してきている)と思います。

ビジネスの現場で使うツール(イントラネットやナレッジシェアツール)
ではそういうコンテキストを加味しにくいことから、「どこまで話せばよ
いか、開示すればよいか、その間合いがつかめないからどうしても
情報開示や共有を臆してしまう」という意見が少なくないのです。

そういう意味でも、まずはアナログに会ってみる、というのは価値が
あると思います。(きっとアナログだけで終わらせないでしょうから)
その上でツールを使うことになるでしょうから、そこで共有された間
合い、コンテキストは急激に社内に伝播するでしょう。きっと近い将来、
NECさんのビジネスに(良い意味で)変化がおきると思います。

近年私が見聞きしたコミュニケーション先進企業の多くは、このよ
うなアナログな機会を生産性の高いデジタルツールに組み込むこと
に長けています。

たとえば紙媒体やカードなど、どこでも持ち運べる、目に付くマテリア
ルでスローガンやメッセージ、問いかけをデリバリー(可視化)し、
質問や意見を聞き入れる対応窓口を設ける。そこで起きたトランザクシ
ョンを逐次ネットツールで開示していく、というようなものです。
成功している会社は無理な情報管理や監査、コントールは行わず、まず
聞き入れること、細やかに対応することに集中しています。
そこで信頼形成を行うことで活性化が進むと信じているからです。

さらにコミュニケーションに関わる組織が機能している企業はこのしくみ
を持って外(顧客、株主、社会)と内(社員や内部関与者)とをつなぐ
役割を担っています。この段において、広報やコミュニケーション担当者
の役割がかなり変化してきていることがわかると思います。

振り返って今回のNECさんの記事は見た目には地味なもので(失礼)
広報として一般的にメディアリレーションを行っている立場からすると
よく記事になったな、という印象は否めないかもしれません。逆にみれ
ば、それほどコミュニケーションの問題は深い課題として多くの企業、
特にトップの念頭にあるという証左だと思います。

小さな記事の中に、大きな変化の兆しが見えたような気がしました。