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2008年02月20日(水)更新

私の好きな矢印

ウェブのインターフェイスデザインもそうなのだが、人の行動を示唆する
ピクトグラム(絵文字)デザインは非常に大事だ。

しかし優れていているものは、その存在すら意識させない。
米国や日本と違い、多言語、多文化の隣り合うヨーロッパ圏では昔から
文字による行動表記は優先することができず(表記する場合は6ヶ国語
ぐらい書かないといけない)、ピクトグラムが発達している。

近年はあまり訪問していないがロンドンやパリの地下鉄、ベルギーの
鉄道に乗ったときはとてもわかりやすく感心した覚えがある。

最近ではJRや首都圏の私鉄でも駅名や出入り口の表記に英語、韓国
語、中国語が併記されるようになっているのに気がついた。
ただ、そのわりにはピクトグラムがうまく活用されていない気がするのだ。
唯一、といっては失礼だが、パリやロンドンの地下鉄に負けないほど、
美しいと感じるピクトグラム(サインシステム)が東京メトロ(旧営団地下
鉄)だ。

その中でも私が一番好きなものは方向を示唆するための「矢印」のデザ
インだ。

単純なようだが遠くからでも視認性が良い。
通常矢印は芯線の長さが長くないと方向を明確に示唆できないが、この
矢印は矢の部分の線の端を水平線でカットすることで方向性を強調し、
ほぼ正方形(ひし形)の面積でコンパクトにまとめている。

矢印だけでなくこれらのトータルサインシステムは、なんと今から35年前
に黎デザイン総合計画研究所でデザインされたものだ。

いまだに古く感じないばかりか、近年もユリカモメや横浜市営地下鉄、
羽田空港をはじめ、様々な公共交通期間のサインシステムを手がけて
いる。(私が利用している小田急の駅舎もそうだった!)

http://www.rei-design.co.jp/fieldA.html

比較するとウェブのインターフェイスはまだ歴史が浅い(15年足らず)せ
いもあり、多くのデザイナーは近年まで惰性でキャラメルボタンを作って
きた。
さすがに最近はアクセシビリティや標準化から無意味なものは減ってきた
が、今度はウェブ2.0デザイン(「アクア風」と画像検索するといっぱい
出てくる)か。(某ソフトメーカーの新しいOSインターフェイスもこれ。わたし
は即座に”クラシック表示”にした)

流行を超えるインターフェイスを追求するなかから、コミュニケーションの
本質を見出せるような提案をしていきたい。
「デザインが古いからリニューアルしたい」とは言わせたくないのだ。

2008年02月15日(金)更新

ブランドを守るために企業サイトでできること

今日、ほとんどの大企業のウェブサイトは、
「製品・サービス案内」、「会社情報(IR,CSR含む)」、「採用情報」などを主
軸に作られているのではないだろうか?
加えて「ビジョン」や「独自コンテンツ」などが色を添えるぐらいだろうか。

顧客や社会信用を通して長い時間をかけて築いてきた企業の「ブランド」。
上記の情報内容(コンテンツ)は、きっとそれらを反映した内容になっている
はずだ。

さて、オンラインコミュニケーションで「ブランド」を育てる、あるいは守る方法
はいくつかある。
「育てる」には、今日であればむしろ企業サイトの外(前と後)を活用すること
だ。すなわち外部のコミュニティ、ブログ、ニュース投稿サイト、ブックマーク
サイト、検索エンジンなどのいわゆるソーシャルメディアと、社員や最近であ
ればその家族、あるいはOB・OGをつなぐ広義のイントラネットだ。
これらをコントロール(管理下におく)のではなく、理解し、認知し、対応し、協
力する姿勢を持つことだ。
反面、これを維持、発展させるためには「情報を提供する」といった一方的な
考えだけではダメだ。
広報、あるいはコミュニケーション部に「世の中が自分たちをどう捉えている
か」を判断する調査能力を持つことが肝要だ。

「守る」もほぼ上記と同義だが、加えてリスクマネジメントや起きてしまった危
機に対する対応が大きなファクターだ。(以下過去のエントリー参照のこと)

http://crossmedia.keikai.topblog.jp/blog/105/10003217.html
http://crossmedia.keikai.topblog.jp/blog/105/10005148.html

とまれ、ここまでは正攻法だ。
コミュニケーション戦略をしっかり持っている会社(ほとんどが海外企業だが)
はもっと根源的で強烈な手法をオンラインで使う。

たとえば90年代後半のナイキ(米国)。
スポーツブランド各社が同様の手法でオンラインマーケティングを発展的に
展開する中、経営層は

「このままではブランドがぼけていくだけだ。わたしたちは”その中の一社”と
いう立場でシェア争いしているだけでよいのか?」

という質問をコミュニケーション部門に投げかけた。
結果、ナイキはそれを見直すために半年近くロゴだけの表紙を残してブランド
サイトをシャットダウンしてしまったのだ。
ステークホルダーは「いったい何がおきるのだろう?」という期待感に胸が膨
らみ、注目度を集める中で、サポートする(超有名選手ではない)スポーツ選
手の人間ドラマを中心とした「静かなサイト」として再出発を行うことができた。
(近年はまたメディアリッチなコンテンツとオンラインマーケティングに戻ってい
るが)

また、数年前にチョコレート菓子で有名なM&M’sは、カラフルで有名なチョ
コレート製品をパッケージも中身もすべて白と黒とグレーにして、「中身がカラ
ーの商品を見つけた人にはフロリダ旅行とクルマをプレゼント」というキャンペ
ーンを展開した。
それだけならよくある販促イベントに過ぎないが、M&M’sはなんと、会社概
要やIR、社会貢献など、企業全体にわたりすべてのサイトをモノトーンに変え
てしまったのだ。一時的(半年間)にせよ、これはコミュニケーションパスが縦
割りではなしえないことだ。
チョコレートを使ったケーキレシピのページやスポンサーになっているカーレ
ース(NASCAR)のクルマの外装すらもモノトーンにする徹底振りだ。

また、海外では1995年あたりから本格的にスタートした企業のウェブ活用だ
が、1999年近くまで「トップページのみ、コンテンツなし」を貫いていた大手企
業(ブランド)がある。それがエルメスだ。

エルメスはなぜオンラインサイトを開示することを拒んでいたのだろう?
これは推測の域だが、

「自分たちはブランドの頂点にあり、不用意なコミュニケーションを行うことで
そのブランドを下げるぐらいであれば無理に有り体なサイトを作る必要は無
い」

と考えたのではないだろうか?

確かに公開企業の場合、オンラインでもIRなど最低の情報開示が義務付け
られてはいるが、強い意志の元にサイトを運営することは、今日相当の(広告、
マーケティング、ブランド、広報)価値を生む可能性を持つ。

「WebX..0」というような世代論も結構だが、上記のような自由度を得るきっかけ
は、まず企業のコミュニケーション組織のリセッションから始まるような気がし
てならない。

2008年02月13日(水)更新

リスクマネジメントは企業を守る。

3月13日(木)に宣伝会議で「危機管理広報セミナー」を開催すること
になった。
このセミナーは通常のものと違い、朝から夕方まで一日かけて、4人
の講師がメディア対応、オンライン対応、実体験からの事例紹介を
行うものだ。
わたしはオンラインにおける事例紹介と対応方法などを担当するが、
これらは過去数年にわたるオンラインの対応を時系列にバックログを
取っていたものを事例としてご紹介するものだ。
すなわち、オンラインの危機対応は経過を見られるため、「謝っておし
まい」にはならないのだ。

また、実体験からの事例紹介は不二家の広報室長が参加してくだ
さる。
興味本位では済まされない、生々しいお話しが聞けることを今から
楽しみにしている。

お世話になっている宣伝会議さんによると、元々広告宣伝系で始めた
教育講座だが、近年は広報コミュニケーション系の講座が増え、しか
も参加者の集まりが早くなってきているという。

危機管理広報セミナー
http://www.sendenkaigi.com/kyoiku/crisis/index.html

2008年02月08日(金)更新

PMBOK:Project Management Body of Knowled

いつもはセミナーを実施する側である私も、できるだけ勉強の機会を
持つように心がけている。
そんな中、最初にお世話になった会社のOBが月に一度集まってや
っている勉強会で「PIMBOK」をテーマに話し合う、と言うお知らせを
いただき、さっそく先日参加してきた。

PMBOK(ピンボック)はアメリカの非営利団体であるPMI(Project
Management Institute)が策定したモダンプロジェクトマネジメントの
知識体系のこと。
数年前からにわかに脚光を浴び、「A Guide to the Project
Management Body of Knowledge」という書籍はいわゆる標準的な
リファレンスブックとして世界中で読まれている。(現在第3版)
私自身の会社でも、お客様である企業の広報部門でも、プロジェク
トマネジメントは大きな課題のひとつだ。
そもそも今までの形骸的な広報部組織では、「コミュニケーション戦
略」的なアプローチよりも短期の応対に忙殺されることが多く、「プロ
ジェクトマネジメント」スキルを身につけている人は少ない。(私自身
もそうだった)

結果、もしウェブサイトのリニューアルを行おうとすれば、プランニング
から実施まで丸投げできる代理店に預けてしまったほうが安心、とな
るわけだ。

PIMBOKの概念やメリットなどは文末のリンクに委ねるとして、ここ
では、そのときの勉強会で出た、興味深いポイントを紹介したい。

1.
私たちは通常、プロジェクトを行う際に「目的」や「目標」を掲げるが、
具体的になに(どんな評価軸)をもってそのプロジェクトを「成功」と評
価するのか、さらには何を持ってプロジェクトの「終結」とみなすのか、
を事前に、明確に定義しない場合が多い。
端的に言えば、「終わらないで解散するプロジェクトが多い」ということ
だ。

2.
PIMBOKの要点は上記のように「ゴール」イメージを明確に持つこと
で、途中で進捗を確認したときに、きちんとゴールに向かうために「プ
ロセス」をどう修正するかがとても重要だ、というところにある。
すなわち、最初に描いた「絵」のとおりに進むプロジェクトなどほとんど
無く、「つど確認し修正する」ことこそ成功の要点、ということだ。

となると米国産の考えをそのまま日本企業の現場に持ってきても適応
が難しいわけで、上記の弱点を克服するためのリファレンスは無いか、
と探していたら、なんと、数年前に人事系イントラネットASPサービスの
開発でご一緒した株式会社フュージョンの広兼社長がその名もずばり
「プロジェクトマネジメント標準 PMBOK入門」という本を書かれていた。
これぞ灯台下暗し。

早速読んだが、まさに現場での(多くの苦労や失敗、もちろん成功も)
経験の豊富な広兼さん、とても理解しやすくまとめられていた。
参考になるのが末項にある「失敗事例」。
たとえば家族での海外旅行のプランニングを妻と妹に任せ、収拾つか
なくなった家族の話などとてもわかりやすいエピソードで「なぜ失敗す
るのか」、「どこでどう修正すべきか」を詳細に説明している。

まず「ウェブサイトをリニューアルしよう!」、「イントラにツールを導入し
よう!」と宣言したり、「期内に立ち上げろ!」と言われる前に、必要な
プロセスがあるのではないだろうか?

いくら広報部が「コーポレートコミュニケーション部」などと名前を変えて
も、部門として、担当者として「意識」をもってプロジェクトを自身でハン
ドルしなければ会社を変える力を持った部署だ、と経営から認識される
ことはないし当人のキャリアアップも望めない。

本書を参考に、ぜひ自身でプロジェクトをマネージして欲しい。
そしてそういう企業を、広報部を、ご担当者を、ぜひサポートさせて欲
しい。

プロジェクトマネジメント標準 PMBOK入門 (単行本)
広兼 修 (著)


PMI東京支部(世界最大のプロジェクトマネジメント協会:PMIの日本国内唯一の支部)

2008年02月07日(木)更新

ギフトショー

昨日は現在行っている宣伝会議さん主催の「インターネット広報講座」の
参加者であられる「スーパープランニング」の広報の方から、現在東京ビ
ッグサイトで行われている「第65回東京インターナショナルギフト・ショー
春2008」
に招待をいただき、小雪の中、参加してきた。

ギフトショー自体も久しぶりだが、その規模の大きさに驚いた。
クラフトから伝統工芸、文房具、おもちゃ、スポーツ、ライセンス品にいたる
まで、とても半日で回りきれる規模ではなかった。
お誘いいただいたスーパープランニングさんは、代官山のユニークな雑貨
屋さん、という印象しかなかったのだが、現在ではトートバッグやエコバッグ
を幅広く展開しており、展示会場でも優に他社の3個分ぐらいのぶち抜き
ブースをもち、10メートルを超える壁一面のカラフルなトート・エコバッグは
壮観の一言だった。
このブログにお誘いいただいた久米さんのTシャツもそうだが、ここまでや
ると機能商品の枠を超え、グラフィックがメッセージを持つに至っている。

文章で書くと堅苦しいが、何しろ楽しい!の一言だ。

実は彼らのオリジナル商品である「ルートート」はすでに30周年ということ
もあり、招待状をいただいた私は、非売品のアニバーサリートートをひとつ
いただいた。しかもポケットに中、小、極小、というサイズ違いが入っており
作り手の思いや考えが伝わるにくい演出になっていたのだ。

このお土産のおかげで、以降のカタログやサンプルの収集が楽だったばか
りか、その丈夫さや使い勝手も体感できた。

実際、今回の展示の中ではエコバッグが目立っていたのだが、用途や意義
以上に純粋に「持ちたい!」と思わせる魅力=デザインまで考慮したものは
そんなに多くは無いのだ。
エコ(主義)の押し付けに終始せず、持つ楽しみも提供する、それが本物だ。
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