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2007年09月15日(土)更新

価値の創造

今のっているヨーロピアンワゴンのディーラーから、クーペの新型車と今のっている車種のマイナーチェンジのお知らせが来た。
行けばミニカーがもらえるという事もあり、子連れで見に行って来た。
北欧=インテリアというのは短絡的だが、さりげなくアルネ・ヤコブセンがデザインしたアントチェアをカタログに置いているのだが、その理由はセンターコンソールとドアパネルの肘置のところにその椅子と同じようなプライウッド(積層合板)の本物の木が使われているのだ。

集積合板とはいえ、曲げ加工が入っているし目も違うから、手間もかかるし歩留まりも良くないだろう。そんな高級車でもないのに本物の木が使われている事にちょっと感動した。
よくやるなあ、と思いつつ、5年前にある日本の自動車メーカーに取材に行った事を思い出した。
volvo
約5年前だが、セダンの再建をかけて企画された新車で、テーマは「インテリア」だった。
担当したデザイナーもベテランで、コストや条件の厳しい中でコンセプトをまとめる苦労話はとても共感する事が多く、面白かったのだが、最後の一言が辛かった。
それは、
「今回はインテリアがテーマなのでシートのみならずパネルも家具調で”木目”も新たにパターンを起こしてかなりこだわった」
というものだ。
それが「プラスチックの成形パネルに木目の転写シートを貼付けたもの」という事はわかるが、恥じらいもなく誇らしげに語るところに一抹の寂しさを感じたのだ。

全体のコストの厳しさはわかるが、結局のところコンセプトの具現化は均質的なところでとどまり、細かいところに気が届く反面、貧乏くささを払拭できない。それが多くの日本車の「所有する楽しさ」のものたりなさに通じるのではないか。
ヨーロッパ車など、シートやドアパネルのつくりが安っぽく、エンジンのうなりも乱暴だったりするのだが、一点突破的な良さがどこかにあると愛着につながるから不思議だ。
日本に入ってくる外車は大体トップグレードのものばかりだが、ヨーロッパのレンタカーのサンクやパンダは笑っちゃうぐらい何もついていなくて、却って「走らせてやる」という気になる。

バランスしないところから生じる意外性を尊重したり、そこから価値の創造をみる事が、私達は弱い。