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2008年07月18日(金)更新

IABC参加記(11)

さて、そのH&Hの通りをはさんで反対側にあるのが古本屋の
「Westsider Rare & Used Books Inc.」。
今回は有名な「Strand」をはじめいくつかのユニークな古本屋に立ち寄った
が、期待通り、ここは秀逸だった。
やはり日本の中古レコードショップ(やブックオフ)の質がその町の文化度に
比例するのと同様、この本屋の質もそのままアッパーウェストの文化度と
比例しているのかもしれない。
僕自身が買った本は3冊。

1936年刊の「The Power of print - and Man (ライノタイプ印刷の
未来と印刷業、という感じ)」
power of print
これは、活版からライノタイプへの時代の移り変わりで、これからいかに
印刷業が変化するか、という希望の書だ。実際にはそれから30年もすると
写植、さらにDTPへと取って代わられるのだけれど、
「便利になるがツールに惑わされずコンテンツ(文章だけでなくレイアウト
デザイン)のクオリティを保つことが重要だ」
と書いてあり、メッセージとしてはオンラインツールに振り回されて内容の
無いウェブサイトが多い現代と変わらない。
この本は装丁もバリバリのアールデコで非常に美しく、レジで店主の女性
が「あんた、印刷技術に興味があるの?へーキレイな本ね、え?12ドル?
ウチの亭主は何考えて値段つけてんだか。あんた、得したわね」とウィンク
された。

1937年刊の「シリアスビジネス」
これは戦前のイギリスの絵本だ。子供たちの日常を洒脱なタッチのイラスト
で綴ったもので本当に愛らしく見入ってしまった。
いまだにファンが多いらしく、帰国後ネットで調べても意外に高いので驚い
た。20ドル。
illust

1954年刊の「イギリスの産業年鑑」
これは写真(グラフ)本で、戦後のイギリス産業の興隆を各産業分野ごとに
紹介したものだが、その後のことを考えるとある意味イギリスの「ピーク」
の状態を切り取ったものだ。アメリカのおおらかな50年代と違い、ひたむき
さが伝わってきて興味深かった。
年賀状やウェブサイトへのコラージュ材料としても版権の切れている古い
グラフ雑誌は貴重で面白い資料だ。20ドル。
british industry

今回はこれ以外に初日のフリーマーケットで1932年のフォーチュンマガジ
ンを2冊買うことができた。これは1冊20ドルを2冊で32ドル。
1930年代のフォーチュンは大胆なアールデコデザインの表紙で非常に人
気が高く、米国でもあまり目に触れることが少なくなってきた。

参照:1930年代のフォーチュンマガジン

結局古本屋に座り込んで2時間が経っていた。
明日は朝が早いのでもうホテルに帰ってパッキングしないと、と思ったのだ
が本屋熱が収まらない。ホテル近くに戻ってきて、歩いていなかったブロード
ウェイの東側の路地に向かうとなにやら雑貨屋のような本屋がある。
気になって入ってみてこれまた驚いた。
ファッションやデザインを中心に世界中の雑誌を集めて売っている本屋だった。
もちろん日本のファッション雑誌もあるのだが品揃えはリッツォーリやバーンズ
とは比較にならない。こういうカテゴリーで成り立つのだから面白い。
欲しい雑誌は山ほどあったのだが、パッキングできなくなるのは目に見えて
いたのでメモを取りまくって特に日本でも見たことの無い、興味の高いものだ
けを2冊買った。
東京に帰れば青山ブックセンターがあるじゃないか、と思っていただけに、
最後の最後まで世の中の広さを再認識した面白い本屋だった。
aroundtheworld

2008年07月18日(金)更新

IABC参加記(10)

オフ最終日の今日はアッパーイーストの美術館めぐり。
「はじめて」といって良いぐらいまともな朝食をレストランで採った。
「エッグベネディクト」。
これもひとつのニューヨーク名物なのかもしれないが、トーストの上にハム
とポーチドエッグをのせ、さらに溶かしたチーズをかけたものだ。
ハムとチーズの塩気があるので、こしょうを少しかけるぐらいでそのまま食
べられる。
巨大オムレツよりは一皿ですむので簡単でおいしい。
eggs
さて、今日のお目当てのひとつはグッゲンハイムの隣にある「クーパー・
ヒューイット国立デザイン美術館
」。
もちろん近代美術館のデザインコレクションもすばらしいが、「デザイン史」
を手がけている点においてはイギリスのヴィクトリア&アルバート美術館
に次ぐ規模なのではないだろうか。
なにしろ展覧会の企画のあり方において「おもしろい!」とうならせるもの
を感じるのだ。

例えば今回は「ロココ展」をやっていたのだが、単に中世以来の極端な
曲線構成の装飾の嵐のような椅子や家具を見せるだけでなく、それらの
(思想を受け継いでいる近代のデザイン作品までも展示しているのだ。
しかもガレやラリックならまだわかるが、60~70年代のサイケデリックポ
スター、はては最近のコンピューターで生成されたフラクタル曲線やレー
ザー硬化樹脂で生成された椅子までを展示する。

*ウェブ担当者の方へ:上記美術館およびロココ展のウェブサイトは
デザインも秀逸です!

ただ、外国の美術館から借りてきて展示、ということが多い日本の美術館
と違い「何を伝え、感じてもらいたいのか」がしっかりと伝わってくる。
この美術館は前庭の感じも落ち着いていて、雰囲気も他の美術館と一味
違う。
cooper

その後、隣のグッゲンハイムを覗き、お昼過ぎまでセントラルパークを
散策しながら反対側のアッパーウェストに渡った。

このアッパーウェストにはいくつかユニークなお店がある。
ひとつはスーパーマーケットのZABARS。こじんまりとしたスーパーだが、
チーズ売り場とシーフード売り場の大きさを見ると、ここを利用している住
人の文化度が推し量れる。
オリジナル商品のギフトバスケットを見ていると、「このまま持って帰りたい」
という衝動に駆られること請け合いだ。

(下の写真をクリックするとサイトに飛びます)
zabars1

zabars

その隣には、ベーグル専門店のH&H。
カウンターの後ろで蒸し上げ、焼いているので入り口から湿気が逃げない
ように2重扉になっている。
出来立てのベーグルは本当にお餅のようだ。私に課せられた使命は、
ここのベーグルを買い、ジップロックで空気を逃がして小分けに密封し、
速やかに日本の持ち帰り家内に献上することだった。買ったとたんに
バックパックからジップロックを取り出し詰め替えている客など珍しい
のだろう、じろじろと怪訝な顔で見られた。

となりのZABARSのデリカフェでもH&Hベーグルのサンドウィッ
チが食べられる。
deli
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