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2009年01月20日(火)更新

広報部が「ガラパゴス」にならないために

少し前の日経ビジネスに「人材ガラパゴス」と言う特集があった。

要は、日本企業の経営や人材の国際化が遅遅と進まないことについて

「日本企業の経営陣や社員は、日本でしか通用しない考え方で世界を
見ていたのではないか。ガラパゴス化した思考から早く脱却しないと、
存在感を失うどころか存亡の危機に直面することになる。」

ということなのだ。

1月13日の日本経済新聞の社説にも同様の記述が見受けられた。

「日本の情報通信産業が壁に突き当たっている。ハードの技術力はあ
るのに、世界市場で存在感が薄くなった。携帯電話が典型だ。技術は
進化しているが、日本でしか利用されないものが多く、世界のニーズを
つかめない。
特殊な生態系を保つ南米沖の諸島になぞらえ、「ガラパゴス現象」と
呼ばれている。持てる技術を世界に広める努力が、国際競争力の再強
化には不可欠だ。
(もちろんiPhoneのアプリケーションは日本発のユニークなものが散見
し始めているようなので動きはないわけではない)

この件に鑑み、昔の会社の先輩がコメントを送ってくださったのでご紹
介したい。
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●この「ガラパゴス現象」が妙に記憶に残っていて、つらつら考えて
みた。たしかに
 『日本でしか通用しない考え方』
 『日本でしか利用されない技術』
が、国民一人当たりGDPが1993年の世界第2位から2007年、
世界18位と後退した原因のひとつとも考えられる。
自分の30年に及ぶInternational Business の経験からみてこの
指摘は正しいと思う。

●しかし、実は日本企業の問題点は、この文章の中の 【日本】を
読み替えるところに、もっと深刻な問題がある。
【日本】を、【自社】と読み替えたとたんに慄然とする。
【ガラパゴスゾウガメ社員】がいかに多いか、という点である。

企業現場の実態には、【日本】どころか、【世の中】に通用しない考え
がまかり通っていて、いずれ【自社】は絶滅の時間待ち状態ということ
がいかに多いことか。

●「企業内ガラパゴスゾウガメ社員」には、四種類ある。
自分の業界しか知らない
自分の会社しか知らない
自分の部門しか知らない
自分の仕事しか知らない

(中略)

●こうした社員は、社歴20年以上、人員規模300人程度以上の場合
には、ほぼ例外なく数多く見られる。
これらのいずれもが、表向きは仕事熱心で、善意の熱心な社員に
見えるから始末に悪い。

●多くのケースでは、遮眼帯をかけた競走馬のごとく、一生懸命に走って
いる。
遮眼帯は英語ではblinkerというが、その使い方は
・have blinkers on
~が理解できない
・run in blinkers
周囲の状況が分からぬまま[気にせず]突き進む
だから、「ガラパゴスゾウガメ社員」はまさに「遮眼帯社員」でもある。

●こうした存在を、企業組織全体の目標のために、いかに有機的に
統制一体化させていくかがまさにマネジメントの仕事だろう。
でも、自分自身どうかをまず振り返ってみることが大事だ。
気がつかないうちに、そうなっている人はいずれ組織に不要どころか
邪魔になる。
この伊東情報を読んで、素直に自分を見直して
「俺にも当てはまると思うことがある」
「俺にも遮眼帯社員の要素がある」
と思う人は、まちがいなく、ガラパゴスから脱出できる。
「真性ガラパゴスゾウガメ社員」は、自分を自覚しないからこそ「ガラ
パゴスゾウガメ」であるわけで、そう人は、この伊東情報を他人事と
片付け、自社のあいつやこいつを思い浮かべるだけだろう。
さて、あなたはどうか・・・?

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先輩のコメントは、私自身の仕事のテーマである「広報コミュニケーシ
ョン人材のプロフェッショナル化」ともつながり、とても共感するところが
大きい。

10年以上インターネットに関わってきて、正直、企業のネット活用など
の課題の本質はここに尽きると思うのだ。

「リニューアルしたいのだが、何を目的にすればよいのかわからない」
(十分情報提供できていると思っているが、自社の視点や都合ばかり
で他者が見て面白くも感動もないことに気づかない)

「イントラの機能はそろっているので、後は社員が使うだけ」
(仕事が忙しいからそんなもの見たり使ったりする暇などない)

こんな状況で「戦略策定」を外任せにしていては短期的には良い結果
が出るかも知れないが、放置するか管理しきれずに痛手をこうむるか
どちらかだ。

正直、昨今のように市況が悪いと「予算がカットされ、広報として新し
ことができなくなりました」と言われることが多いが、仕事がなくなって
次にきられるのは社員の番だ、という危機感を持って欲しい。
考えれば、こういう状況だからこそ(できるだけ制作外注コストなどに
お金をかけずに)広報として会社に貢献できることは多いのだ。

次代に活躍するプロの広報コミュニケーション人材とは?と考えると、
単に情報技術やコミュニケーションプロセスに詳しいだけでは片手落
ちだ。むしろこのガラパゴスの話を先に反芻して自分の立ち位置を考
えたほうが答えは早く見えるかもしれない。

この時期にこれからの広報コミュニケーションパーソンとしての資質を
磨くことができれば、強靭なキャリアモデルを築くことができるはずだ。

私の知見で役に立つことがあれば助言は惜しまない。ぜひ課題や意
見をぶつけて欲しい。