大きくする 標準 小さくする
前ページ

2008年10月31日(金)更新

「介護」を作った男

本日の日経産業新聞にこの経営者ブログのお仲間であられる
フットマーク株式会社磯部社長のインタビューが出ていた。

良くセミナーで紹介するが、社員数70名にして社員ブログ30
をこえる企業だ。

記事は「起業人」と言うコラムで、商品開発やビジネスでのご
苦労の話が中心だが、「介抱と看護を組み合わせて介護という
言葉を作った」ことや「商標登録をしたものの権利行使をせず、
誰もが使えるようにしたこと」などが書かれている。
もちろんしっかりとした経営計画を元に運営されているからこそ、
現在のフットマークがあることは間違いないが、直接この会社に
訪問差し上げると、なぜ半数もの社員がブログをやっているの
か、熱心に商品を作り、売っているのか、そもそもみんな良い顔
をして生き生き働いているのか、が伝わってくる。

それはお客様の喜びが何かを、全員でよくわかっていること。
それに応えるべく行動した自分たちのビジネスをお客様がどう
捉えられたかをしっかり共有しているからだ。

すなわち、仕組みやツールから始めるお仕着せのコミュニケーシ
ョンに頼らず、自己認識と相互理解を常に深めようと言う姿勢をし
っかりともっていると言うこと。それだけなのだ。

「社内コミュニケーションが悪いがツールを導入しても改善され
ない」
と言う会社が多い。

この会社には一般的に言われる洗練されたイントラネットやツ-
ルはすでに必要ないのかもしれない。
なぜならば各自が外向きのブログやウェブサイトのコミュニケー
ションを通して発信し、反応を得、それをフィードバックする流れ
を作ってしまっているからだ。

社内外のコミュニケーションの垣根は確実に変化してきている。

時々対談でご一緒する時事通信の湯川さんも、奇しくもこのタ
イミングにこんなエントリーをあげられていた。

企業の「ベルリンの壁」を叩き壊すのが広報の仕事になる

2008年10月30日(木)更新

デザインの定量評価

昨日は宣伝会議さんの「インターネット広報講座」の第7回目の講義を
受け持った。
今月合計11回あったセミナーの最後の回だ。
今回のテーマは「企業Webにおけるデザイン・ビジュアルの理解」という
ものだが、一番お伝えしたかったことは

「自分の好みだけではなく、客観的にデザインやビジュアル表現を評価
出来るようになる指針の持ち方」だ。

「できるだけ多くのものを見て味わうこと」

と言ってしまえば身もふたもないが、見るポイントを因数分解していくと
判断が容易になるのだ。例えば、レイアウトの間、使う色彩の明度、彩
度、色相、色数、文字のレイアウト、色、ボリュームなど。もしくはリンク
の配置やナビゲーションプロセスなど。
内容を理解しようとページを繰っていくだけでも「これは辛いな」とか「理
解しやすい」と言う差は生じてくるものだ。それらの経験値を積み重ねて
いくと自社にとってふさわしいデザインはどういうものか、という指針が
築かれてくるのだ。
そのなかでも他社との差別性は重要なポイントだが、一概に差別性を
つけること=奇をてらう、ということではない。パナソニック株式会社の
ウェブマネージャーであられる次田寿生さんが言うように「コアバリュー
の表出」がキーになってくるのだ。

実は企業ウェブサイト、特に日本企業のウェブサイトはここ数年トップペ
ージのレイアウトや構成が非常に似通って来ている。
弊社がコンサルに入っているある企業ではリニューアルコンペを実施し
たときに5社ともほとんど同じレイアウト、企画の絵を持ってきて広報部
長がキレかけた、ということもあった。

レイアウトの独自性=コアバリューの表出と言うことではないが、ブラン
ドロゴを隠してしまったらどこの会社かわからない、というものが多いの
も事実だ。逆に言えば、コアバリューの表出をきちんと行っている会社
はデザインにもオリジナリティがきちんと見られるといえる。

参考になる書籍として、
「売れる商品デザインの法則」
と言う本がある。主にプロダクトデザインを紹介しているのだが、単に
形や色だけでなく、秩序の法則や人間工学、認知工学、そして「心に
届くかどうか」まで言及しているのだ。
デザインの読解能力をつけるヒントになる優れた書籍だ。

以下の既出エントリーも参考にして欲しい

盗作とインスピレーションの境界線

その2:盗作とインスピレーションの境界線


これからの広報:新しいチャレンジを、確実に世に問う方策

2008年10月28日(火)更新

けんかしないでください

週末は幼稚園の記念祭でずっと子供の世話をしながら幼稚園界隈
をぶらついていた。

記念祭とは文化祭のようなものだが、そうは言っても幼稚園のこと、
父兄のバザーや子供が楽しめるゲームが中心だ。

午前中に合奏会を見て、午後は子供の絵画や工作などの作品展を
みていた。そこで発見したのは特別養護老人ホームに訪問したとき
に息子が描いた絵だった。
他の子供たちはお決まりのように「お元気で」とか「いつまでも長生き」
とか書いているのだけれど、一人だけ

「けんかしないでください」

と描いていた。

hiroki

老人になればすべての人が達観している、というわけでもなく、そこでも
当然人間らしい感情の発露としての諍いや思いの違いは発生している
ようだ。不機嫌な人や笑わない人もいたそうで、お年寄もどちらかという
と子供に還るに近い状況なのだ。息子は同じ目線でそれを機敏に感じ
そのまま感じたことを描いたのだと言う。

まあ、毎日姉ちゃんにやられているからいつも言いたいことの筆頭だった
というのもあるのだろうが、子供の素直で率直な視点にはいつもはっと
させられることが多い。

つい視野狭窄でつまらない諍いをしてしまう自分に冷や水を浴びせられ
たような気持ちがした。
ありがとうの替わりにドーナツでも買って帰ろうか。

2008年10月27日(月)更新

「プロとは?」の会

私がサラリーマン時代の最初の15年お世話になった会社がある。
外資系の半導体メーカーだが、入社当時(1983年)は「世界最大
の半導体メーカー」だった。
ほとんどそんなことを知らずに入社したため、親はたいそう驚いたも
のだ。

しかしそんな喜びもつかの間、翌年には日本企業に抜かれ、インテ
ルに抜かれ、あれよあれよと言う間にトップ10ぎりぎりをさまよう身
になった。

とまれ、そんな激動の半導体企業を支える経営層には、たいそうユ
ニークな人材が多かった。直接ではないにしても、そんな人たちの
下にいて、とても多くの刺激を受けたことは間違いない。
その中でも当時の原価管理、製造企画、経理・財務本部長だった
方は、当時は笑顔を一度も見た事がないぐらい激しく厳しい方、と
いう印象しかなかった。

その方との10数年ぶりの邂逅はひょうんなことから訪れた。
同じTIのOBの先輩から、

「TIのOB連中が月に一度の勉強会をやっているのだけれど、プロジ
ェクターでネットをつなげたプレゼンテーショがやりたいので、会議室
を貸してくれないか」

と言う要請を受けたからだ。

もちろん2の句も告げず承知差し上げたのだが、当日お待ちしている
と件の本部長をはじめ、人事本部長など、歴々の方がぞろぞろとお見
えになり、恐縮しきりだったのを覚えている。

他の会社に移られた方、テクノロジーベンチャーの立ち上げ支援をさ
れている方、リタイヤされて企業の顧問をされている方など、様々だ
が、「学ぶことをやめたとき、人間は終わる」というように一様に皆さん
勉強熱心なのだ。
そして月に一度代わる代わる講師を務め、大いに議論する。そのテー
マが「ビジネスにおけるプロフェッショナリズムを問う」こと、すなわち
その会の名前は「プロトワの会」なのだ。

それ以来、OB勉強会のお誘いを毎月いただくようになったのだが、
自身のセミナーや出張と重なることが多くなかなか参加することも
ままならなかった。

いつもお誘いをいただきながらあまりに貢献がないので、今年は海
外のコミュニケーションの状況を勉強してきたのでそのようなことでも
ご興味いただけるならお伝えすることは出来ますよ、とご挨拶したら
「それは興味深い。では早速話してくれ」と言うことになった。

今月だけで10本もセミナーをこなしている自分だが、そのような大先
輩たちの前で話すのはとても緊張した。加えて当日会場に行ってみる
と、なんとデザイナー当時のマネージャー(恩師)までもが来ている。
これはとても嬉しかったが、同時に緊張はピークに達した。

しかし彼はとても優しい方で
「僕も参加するのは久しぶりで、タイトルだけ見て面白そうだから来て
みたら、なんだ、雨ちゃんが話すのかよ」と、とぼけて応えて下さった。
(それでも十分プレッシャーなのです)

いままでで一番短く感じた2時間だったかもしれないが、参加された
皆さんから

「こういうチャンスでなければ、見るどころか知ることさえなかったであろう
最先端の状況に触れ、また分かりやすい資料と巧みなプレゼンテーション
のおかげでよく理解ができました。たいへん 感謝しております。」

と謝辞をいただいた。

当時は(今も)出来の悪い弟子だったが、すこしだけ借りを返せた気がした。

わたしの奇異なキャリアスタートについては過去ログをご参照のほど。
http://crossmedia.keikai.topblog.jp/blog/102/10001526.html

2008年10月24日(金)更新

食品テロにどう備えるか?

2年前にこのブログを始めてから、個別具体的には一番多く取り上げている
のが「危機対応」だ。
(拙ブログのサイト内検索→右上の窓で「危機管理」と検索して欲しい)

実際に長年お世話になっている日本生活協同組合連合会でも、今年前半の毒入り
ギョーザー事件を筆頭に、いくつもの課題に直面している。さらには今週は
カップラーメンの問題が浮上している。

弊社としてはウェブサイトのリニューアル、監修を継続的にお世話させていた
だいている関係で、数年前からトップページの危機対応(いわゆるシャドーサ
イト化)の準備をしておいたので思わぬ貢献をすることになったが、会(企業)
としてはもちろんそれだけで済むものではない。
弊社では企業の不祥事や危機が発生するたびにその企業の対応や周辺の
動向を定点観測しているのだが、ことは当該企業だけの問題ではないのだ。

たとえば半年前の毒入りギョーザ事件の場合、売り場で起きた現象は

「冷凍ギョーザや冷凍食品ってそもそもどれだけ安心なのよ。ちょっと買うの
は控えよう」

と言う消費者心理だ。

だとすると、天洋食品の製品を直接輸入したJTや販売した生協のみならず、
同じく冷凍食品を扱う企業全体が対応を迫られることとなるのだ。
実際、味の素やニチレイなども「対岸の火事」と看過することなく

「自社で扱っている商品に天洋食品のものはありません(味の素は後日、
業務用に取り扱いがあり、釈明)」

と言うだけでなく、安全な商品のパッケージ写真をウェブや新聞広告で開示
して

「これらのパッケージは安全です」

と視覚から記憶に訴える形で販売減少を防いでいた。

食品に関わる危機は、残留農薬や不正添加物など製造側の問題から売り
場における異物混入にまでわたる。

特に売り場に近いところで起きる異物混入に関しては「食品テロ」とまで呼
ばれるようになった。

これについては上で紹介した日本生活協同組合連合会の「生協出版」から
専門書が発行された。
食品製造関連の企業には参考になるのではないだろうか?

coopsyuppan

食品テロにどう備えるか? 食品防御の今とチェックリスト 
著者・発行:今村知明=編著 コープ出版
価格(税込) 2,625 円
«前へ
<<  2008年10月  >>
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31