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2010年06月29日(火)更新

IABC2010トロント参加記(8)

今回のコンファレンスは自身の勉強以外に大きな目標がありました。
それはIABCのジャパンチャプター(日本支局)の設立です。

私自身がIABCを知ったのは20年前、そしていつかコミュニケーション
のプロフェッショナルが職能として企業経営者に認知され、キャリアモ
デルを確立することができるようになるというのが11年前に独立起業
したときのセルフミッションだったのです。

しかしIABCは40年続いている歴史と信頼のある団体、単なる思い付
きで「やってみたけどダメだった」では済まされません。

一昨年にニューヨークに行ったとき、その思いをぶつけ、汲み取ってもら
えたときはとても嬉しかったことを覚えています。今まで他に発起する
人がいなかったことも驚きでした。

そもそも
「世界中さまざまな国から参加者が集まるのに、何故日本だけ認知が
無く、参加も少ないのか?」
という質問を返されるぐらいです。

昨年は景気と自社の業績が厳しい中で「慎重に、賛同者をゆっくり募っ
ていきたい」と申し出させてもらいました。実際に自身もサバイバルモー
ドでした。

今年は4月の香港でもチャプターマネージャー会議に参加させてもらい、
どのようにチャプターを運営していけば良いのか、かなり勉強させても
らいました。さすが40年の経験。非常に建設的な仕組みと経験の共
有をしているなあと感心しました。

20100611o
(40周年を祝う巨大なケーキ!)
前置きが長くなりましたが、そんなわけで今年のトロントは運営側に近い
スタッフが集まる業績報告会議にも参加させていただきました。

やはり一昨年のリーマンショック以来、会員数は大きくダウンしたようで
す。しかし残った会員の活動はより活発になり、会員数のリカバリーも
徐々に起きているとのことでした。

たしかに会員数は会の収益に直結するのかもしれませんが、代表者の
ジュリーフリーマンさんのスピーチでは、量を落とすよりも質を上げること
に集中するという力強いコメントがあり、参加者はそのリーダーシップに
安心と信頼を新たにしていた様子です。

20100611p

感激だったのは、アジア大会でもご一緒させていただいたチャプター開
発マネージャーが、わざわざ代表者のジューリーさんを連れてきてくださ
り、直接紹介してくださったことです。

15000人以上もの団体なのに、非常にオープンでフラットな組織である
ことに驚きます。

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冒頭のコメントの通り、彼ら中枢部の方も、日本の社会や企業のコミュニ
ケーションにとても興味を持っているのです。ただ現状は「ジャパンナッシ
ング」。発言しなければ素通りなのです。

少しずつ、この期待に応えて行こうと思っています。

このレポートもそろそろ終盤です。

詳細については夏休み明け頃に「IABCトロントレポート」という形で発
表する機会を持とうと思っています。今回は同行した企業の方のお話や、
IABCのジャパンチャプターの取り組みの紹介もしたいと考えています。

興味のある方は気軽にご連絡(メールでも電話でも結構です)ください。

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e-mail : kaz.amemiya@crossmedia.co.jp
日本PR協会正会員、IABC( http://www.iabc.com/) 正会員
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2010年06月28日(月)更新

英語じゃなくて「グロービッシュ(Globish)」

ニューズウィーク日本版6月30日号の特集が面白い!

「グロービッシュ」とは「グローバル化に適応した簡易型英語」のことです。
すなわち、英語を母国語としない人口が急速に増えていく中で、お互いに
伝わりやすい、平易な表現を生み出した、というのです。

”かつて正当なイギリス英語から「より民主的な」アメリカ英語に移行し、
今度は世界の誰もが使える新しい道具になるだろう”


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わたしにも経験があります。

かつて働いていた外資系企業のプロジェクトでテキサスに滞在していたと
き、アメリカ人のマーケティングマネージャー以外、南米出身のエンジニア、
ヨーロッパのマーケティングマネージャはフランス人、品質管理は中南米、
製造担当は台湾人、デザイナーは日本人、という国際色豊かな会議でし
た。
お互いブロークンですが英語で議論は白熱し、そしてひとつの結論を得ま
した。

みんなで握手をして会議室をあとにしたあと、廊下でアメリカ人のマーケテ
ィングマネージャに呼び止められました。

「カズ、お前は今の会議にハッピーか?どうやらオレひとりだけがきちんと
理解してなかったようだ。わるいけど後で簡単に議事のサマリーを作って
メールで俺に送ってくれないか?」

といわれたのです。

私たちにしてみるとグロービッシュそのものは特別な「英語」ではなく、
「出来ることをやってみた」結果であり、それが母国語で英語を使う人に
「これはわたしたちの言語とは違う世界の共用語だ」と気づいた、という
ことなのでしょう。

国際的なニュースに対するツイッターやユーチューブ上でのコメントは、み
な、わかりやすい平易なものです。

もうひとつ、英語のブラッシュアップをせねば!と考えていた自分にとって
も、少し肩の荷が下りるとともに、これでいいのだという自信(笑)にもつな
がりました。

これもネット化によって加速した文化の変化だと思います。
ぜひ読んでみてください。

2010年06月28日(月)更新

IABC2010トロント参加記(7)

IABCのコンファレンスに参加する意義は色々あるのですが、そのひとつは
数多くの企業の事例が聞けることです。
時に危機対応や危機的な状況からのリカバリーなど、マイナスイメージに
関わることが少なくないのです。
今回の例で言えば、GMのコミュニケーション担当者の話が秀逸でした。

倒産に瀕する状況の企業が、どのような社内コミュニケーションをおこない、
この厳しい時期を乗り切ろうとしたか。

この話は夏休みに明けに実施する予定の振り返り報告会でぜひ詳細にお
話できれば、と思うのですが(もったいぶってすみません)、いつも感じるこ
とは日本の企業で広報やコミュニケーションに関わる方から、自社での対
応事例を聞く機会はとても少ない、ということです。
とくにネガティブな状況に関する話題は稀有です。

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今後、企業内コミュニケーターやコミュニケーションに関わる部署が経営に
認められ、職能としてプロフェッショナルとなるためにも、経験をシェアでき
る方がどんどん出てくる状況を作らなければならないと感じます。なぜなら
ば、広報や企業コミュニケーションを取り巻く役割の変化、価値の変化が
大きいため、社会にも社内にも、改めてその価値を伝える必要があるから
なのです。今までのように粛々と守りの広報をやっていると、更なる予算
や組織の縮小を免れなくなります。
それもこれも、「広報は生涯のキャリア」と位置づけられていない多くの企
業の現状にあるのかもしれません。

かつて宣伝会議さんの主催の危機管理セミナーで不二家の広報の方が
不祥事対応を語ってくれたとき、参加者は予約で満杯、立ち見が出るよう
な状況でした。

みんな聞きたがっているのに、自分のことは話さない。
これは何とかしたいですね。以前、社内広報について、コミュニケーション
担当者の意見交換会を実施したことがありましたが、思いのほか多くの参
加者がありました。改めてまた同じようなことを企画してみても良いかと考
えています。

話をIABCに戻すと、もうひとつ参加して興味深かったセッションも、上記に
関連している話でした。

「企業内コミュニケーターはエージェンシーのように振る舞え」

というタイトルで、プレゼンターの2人は私と同様、企業の広報から独立され
たエージェント(コンサルタント)の方々です。

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コミュニケーションエージェンシーのアプローチとして、社内コミュニケーター
に欠けている点は、

1.経営視点、特にコスト意識
2.プロジェクトマネジメントスキル
3.戦略思考、特にアウトプットよりもアウトカム(成果)

と、それらに対する強力なコミットメントと述べています。

このセッションのポイントは以下の2つに集約されます。

1.
社内コミュニケーターとしてエージェントの強みを有効活用する。そのために
も上記の理解に務め、エージェントからタクティクス(具体的なアイディアや
対処法)を引き出すのではなく、成果を最大化すべくより戦略的なアプローチ
に助言を求める

2.
社内のコミュニケーターがエージェント的な思考やアプローチを吸収すること
により、経営や他の事業部に対し貢献度の高いコミュニケーション活動を実
施できるようになる

20100611l

最後にビル・ゲイツさんの言葉を紹介していました。

「社内に自分と違うスキルセットを持ち、共感力があり、コミットメントがある
信頼できる仲間がいることはとても重要なことだ」

こういう理解を社内で取り付けること、これこそがコミュニケーション職の
価値化なのではないでしょうか?

2010年06月24日(木)更新

IABC2010トロント参加記(6)

IABCコンファレンスは4日間のうちに、レギューラーコンファレンス以外の
イベントがあります。

たとえばアジア、ヨーロッパなど地域ごとに分化したパーティー、表彰式、
ゲスト講演、ネットワーキングパーティなど。

今年は4月に香港でアジアのコンファレンスがあったせいか、今までのア
ジア地域のパーティーに比べるとインド、ニュージーランド、中国の方が少
なかったのかもしれません。
ここでも特徴的なのはアジアのメンバーだけが集まるのではなく、アジアに
興味があったりビジネスで関係しているヨーロッパやアメリカの方々も顔を
だすところです。すなわち、セクショナリズム的ではなくビジネスオリエンテ
ッドなのですね。

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3日目のお昼前には全員が集まる大きなオーディトリアムで基調講演が
ありました。
「フリー・ザ・チルドレン(Free The Children)」という国際協力NPOの設立
者であるクレイグ・キールバーガーさんのスピーチです。

毎回必ずこのような社会活動家のゲストが呼ばれるのですが、彼がこの事
業をスタートしたのは12歳!
つまり、「子どもが子どもを支援する」国際協力を合言葉に活動しているの
です。

20100611h

事業の目的として、
「貧困や児童労働から子どもを解放する」

というのはわかりやすい、ありがち(といっては失礼)ですが、

「子どもには社会や世界を変える力がない、という考えから子どもを解放する」

というのが特徴です。彼は現在20代後半ですが、すでに15年の社会活動経
験から、企業や社会に対し、大きな影響力を与えています。

よって講演のテーマは「これからの企業文化のあるべき姿」というとても示唆
に富んだものとなっていました。

CSR活動を活性化させるものの、CSRはCSRとして割り切っておこなっている
企業は少なくありません。

彼はCSR活動を通じて社員のスキルアップや業務の質の向上、その底上げ
によって事業の継続性が高まり、評判やブランドの向上につながると述べてい
ます。

そのために活動の意義を社員にしっかり伝え、地域、社内外をつなぐコミュニテ
ィを形成、そのなかで企業と地域がプロアクティブに動く(行動なきところに成果
は現れない)基盤を作っていきます。

20100611j

事例として紹介された米国ソニー・エレクトロニックス社のサンディエゴテクノロジ
ーセンターの「Star Class」奨学金プログラムでは、学生に施す、という一方的な
ものではなく、社員と高校生との複数年の交流が行われ、相互がコミュニティー
の底上げと活性化のために協力していくとうもの。

「わたしとあなた」という関係から「わたしとわたしたち」という関係へのシフトが
大きいのだ、とくくりました。

環境やCSRなど、今後の日本の企業コミュニケーションにおいてますます重要
視される話題ではあるものの、ただやっている、という状況を脱し、このように芯
のある考えをもった活動、企業が評価される時代になってくるのでしょう。

フリーザチルドレンには日本支部があり、活発に活動されているようです。
http://www.ftcj.com/index.html

2010年06月23日(水)更新

IABC2010トロント参加記(5)

2日目~3日目の主だった参加セッションのなかから、いくつかご紹介
します。

変化のはげしい時代における企業の社内信頼形成
(エンプロイコミュニケーションの重要性)
===========================================================
エンプロイコミュニケーションはIABCにおいてもトップトピックのひとつです。

しかし社内報やイントラの活用法など、ツールレベルの話題はほとんどありま
せん。
今風の言い方をすれば「戦略(社内)広報」となります。

金融危機、景気後退、企業の不正やスキャンダルなど、後ろ向きな話題が続
くこの時代、社内コミュニケーションにおいては「関係構築」とともに、もうひとつ
の重要なトピックが「信頼形成」なのです。

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特に国際的な企業や団体の経営およびコミュニケーションに携わる人は地理
的条件、文化、国籍も違う海外オフィスと本社間で社内外の「信頼」をどのよう
にリードしていけばよいか。

ロンドンのビジネススクールの教授によるセッションですが、机上論など皆無。
以下のトピックにおいて非常に具体的な説明がなされました。

・ なぜ信用が今重要なのか
・ 職場では金融危機、景気後退後、誰が誰を信じているか
・ 失われた信用はどのようにしてリカバリーできるか
・ コミュニケーターとしてどのような役割を負うべきか

論旨のポイントは良い意味でも悪い意味でも「感情論」ではなく、それを維持発
展させることがビジネスに反映する(非効率的な業務が無くなる、営業利益の
増加につながる、社員の精神的な健康状態により退社や医療費が減る)こと
を統計的かつ論理的に追っています。

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現実的に金融危機や景気後退に際し、マネジメントはリストラやさまざまな変革
モデルを取り入れざるをえませんが、社員がそのまま真意を理解することは難し
いのです。(感情として受容するのはかなりステージがあと)

トップやシニアマネジメントが直接対話の機会を設けるのは大事かもしれません
が現実的には余裕がなく、十分な時間はとれません。

プラクティカルな方法として、ここではミドルマネジメントとコミュニケーション担当
者が「通訳」としてその間に立つ、というアプローチを紹介していました。

当然ここには部署やヒエラルキーを越える施策が必要となります。
「社内通訳者」の役割の重要性に着目し、それを活用している企業やシニアマネ
ジメントは、日本においてはまだ皆無に等しいのではないでしょうか?

多くの場合、日本でコミュニケーションが良い、と言われる企業はシニアマネジメ
ント自身の積極性が目立つ場合がほとんどです。

「双方向の仕組み」(聞く耳を持ったふり)は入れても、それを「下意上達」
する機能、あるいは役割は足りていない気がします。

社内コミュニケーションの相談は近年増えています。しかもツールだけでは解決し
ない問題がほとんどなのです。このセッションは経営レベルの人に対しても説得
力のある内容でした。
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