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2008年05月25日(日)更新

「デザイナー誕生:1950年代日本のグラフィック」

今日は文京区小石川、飯田橋と江戸川橋の中程にある凸版印刷の印刷博物館
行ってきた。
50sgraphics

「もはや戦後ではない」といわれた1950年代、日本のグラフィックデザイ
ンの世界がいちばん活気づいていた時代のポスター、パッケージ、書籍、雑誌
などのグラフィックを500点も集めた展覧会だ。

亀倉雄策、山名文夫、河野鷹思などの大御所の有名な作品はもちろんだが、
数多くの名もないデザイナーの作品の中にも、光るものが多い。特にデパ
ートや商店の包装紙のデザインは箱を包装した立体の状態で展示する事で
そのデザインが「存在していた」状態を再現している。

単にこれらのデザインが今でも古くなく、新鮮に感じるだけでなく、力に
あふれている理由は明白だ。
デザインを起こす行程の全てが手仕事で今の何倍もの時間をかけていたか
ら、デザイナーは一つ一つの色や配置を試行錯誤をして自分の手に、頭に
その感覚をたたきこんでいったのだろう。
ネットもフォトショップもイラストレーターもない時代だから、人やツール
に頼る事なく自らの勇気を試す機会にあふれていたともいえる。
若いデザイナーがみれば、アナーキーなアイディアの巣窟と映るかもしれない。

常設展示以外にも、中国政府と共同で制作した「紫禁城」のバーチャルシアター
があり、視野角120°のワイドスクリーンで、まるで浮遊するように紫禁城を
訪れる事ができた。10分ちょっとの映像だが、なかなかの感動ものだ。

東京にはすばらしい企業の私設博物館が多いがそのなかでもこの印刷博物館は
内容、建物、ショップ、どれをとってもピカイチだ。
もちろん図録も良くできていた。

toppanmuseum

また併設されているコンサートホールはクラシック中心のアコースティック専
門ホールだ。以前中央アジアのアルタイ共和国の歌手、ボロット・バイルシェフ
のコンサートを見に行き、幾重のも倍音を発する喉と2弦しかないとは思えない
楽器による「一人オーケストラ」に驚いた。
壁、床、ステージも木で組まれており、会場自体が一つの楽器、という造りに
なっている。

2008年03月17日(月)更新

「カラーユニバーサルデザインセミナー」

数年前から「ユニバーサルデザイン」というキーワードが着目されて
来ている。日本でも「ユニバーサルデザイン研究機構」をはじめ「ユ
ニバーサルデザイン・コンソーシアム」
「ユニバーサルデザインフォ
ーラム」
など、いくつかの団体が活発な活動をしている。

加えて、色彩の活用の面から多様性に対応していこう、という動き
「カラーユニバーサルデザイン機構」だ。
これは主に「色盲・色弱」、「色覚異常」と呼ばれている人への配慮
を考慮する活動だ。
日本では男性の20 人に1人、女性の500人に1人、日本全体で300
万人以上、また世界では2億人を超える人数で、血液型がAB型の男
性の比率に匹敵するという。
有名人ではゴッホやターナーも色弱であったらしい。

ポイントはこれらの人々を「異常」として切り捨てるのではなく、「多くの
人と違う色覚を持った人」という捉え方をして、「では、様々な色覚を持
った人にも不都合なく活用できる色使いとはどういうものか、を考える」
のが「カラーユニバーサルデザイン機構」の活動だ。

実はサラリーマン時代から20年の付き合いになる京都が本社の大平
印刷
という会社がある。
そもそもは宝酒造の子会社でお酒のパッケージやラベルの印刷を手が
けていたが、ウェブへの取り組みも最初期からやっている先見性の高い
印刷会社だ。
環境配慮の点でも再生紙だけでなく、非木材紙やソイインクなども扱っ
ていた。

今回、東京営業所の重鎮である齋藤さん(20年のおつきあい!)のお
声がけで表題の「カラーユニバーサルデザインセミナー」に参加してきた
のだ。

セミナーは「カラーユニバーサルデザイン機構(CUD)」の設立メンバー
で、自らも色弱でありながら1級カラーコーディネータの資格を持つ伊賀
公一さんと大平印刷の樋野さんのプレゼンテーションで、伊賀さんは、
色覚の多様性とどのような差異があるのかを詳しく丁寧に説明してくだ
さり、樋野さんは印刷やカラー表現に携わる立場からどのような対応が
できるのかを紹介してくれた。

いわゆる一般的な営業セミナーではなく、世の中の現状と、わたしたちに
できることを紹介してもらえ、とても意義の高いセミナーだった。

戻って「カラーユニバーサルデザイン機構」のサイトを見てみたら、理事
長はかつて私が工業デザイナーの頃にお世話になっていた日本工業
デザイナー協会でお付き合いのあった武者廣平さんであった。
なんと世の中の狭いこと。

具体的には色弱の方はどのように見えているのかをシミュレートできる
ソフトウェア(プラグイン)や模擬フィルターメガネなどがあり、参加してい
るグラフィックデザイン関係の会社や印刷関連の会社でもすでに活用し
ているところが多いのにも驚いた。
また自らも複写機やプリンターを販売しているリコーさんなどは、CUDの
認可を得て自社の印刷物(CSR報告書など)をユニバーサルデザイン化
している、という事例の紹介もいただいた。

今後もこのような活動の認知が進むことを願うとともに、印刷やウェブを
通して表現に関わるものとして啓蒙に少しでも寄与できればと思った。

2008年02月07日(木)更新

ギフトショー

昨日は現在行っている宣伝会議さん主催の「インターネット広報講座」の
参加者であられる「スーパープランニング」の広報の方から、現在東京ビ
ッグサイトで行われている「第65回東京インターナショナルギフト・ショー
春2008」
に招待をいただき、小雪の中、参加してきた。

ギフトショー自体も久しぶりだが、その規模の大きさに驚いた。
クラフトから伝統工芸、文房具、おもちゃ、スポーツ、ライセンス品にいたる
まで、とても半日で回りきれる規模ではなかった。
お誘いいただいたスーパープランニングさんは、代官山のユニークな雑貨
屋さん、という印象しかなかったのだが、現在ではトートバッグやエコバッグ
を幅広く展開しており、展示会場でも優に他社の3個分ぐらいのぶち抜き
ブースをもち、10メートルを超える壁一面のカラフルなトート・エコバッグは
壮観の一言だった。
このブログにお誘いいただいた久米さんのTシャツもそうだが、ここまでや
ると機能商品の枠を超え、グラフィックがメッセージを持つに至っている。

文章で書くと堅苦しいが、何しろ楽しい!の一言だ。

実は彼らのオリジナル商品である「ルートート」はすでに30周年ということ
もあり、招待状をいただいた私は、非売品のアニバーサリートートをひとつ
いただいた。しかもポケットに中、小、極小、というサイズ違いが入っており
作り手の思いや考えが伝わるにくい演出になっていたのだ。

このお土産のおかげで、以降のカタログやサンプルの収集が楽だったばか
りか、その丈夫さや使い勝手も体感できた。

実際、今回の展示の中ではエコバッグが目立っていたのだが、用途や意義
以上に純粋に「持ちたい!」と思わせる魅力=デザインまで考慮したものは
そんなに多くは無いのだ。
エコ(主義)の押し付けに終始せず、持つ楽しみも提供する、それが本物だ。

2008年01月28日(月)更新

現代において修理して使うものとは?

「靴」の話だ。

「足元を見る」とは「相手の弱点を見つけてつけこむ」という例えでよく
使うが、語源はWebで拾うと「昔、街道筋や宿場などで、馬方などが
旅人の足取りを見てのくらい疲れているか判断し、それによって旅籠
代を要求してたことから発生した言葉」だといわれている。

広報という職業柄、色々なエグゼクティブの方を見てきたし、今も多く
の経営者の方とお会いする。
所作のしっかりされている方、ひいてはきちんとビジネスの出来る方は
えてして手入れの行き届いた靴を履かれている。

販売系のご商売や、クリエイティブ系の方でも同様で、服をカジュアル
ダウンしている方でも、靴がきちんとしていると「抜かりないな」という印
象を持つ。
こういうのもひとつの「躾」なのかもしれないが、わたしも最初に入った
会社の人事の方が元アパレル出身のおしゃれな方で、

「学生じゃないんだからスポーツソックスをはくな」
とか
「靴やベルトとスーツの合わせ方」
など、結構指導してくれたものだ。

そんな中、今でも覚えているのが

「高い靴を買う必要はないが、毎日自分で手入れして履きなさい」
というものだ。

三つ子の魂、とはよく言ったもので、出張にも靴の手入れセットは欠か
さないようにしている。

さて、その肝心の靴だが、どんなに格好が良くても、マメができたり歩
くのが苦痛では元も子もない。
幸いにも、最初の職場の先輩が、ある日本の靴メーカーの2代目社長
の友人で、薦めもありそのメーカの靴を履いてみたのだが、いままでこ
れほど木型の合うメーカはない、というほどで、とにかくおろしてすぐ履
いても痛い思いをしたことがないのだ。

以来、毎年銀座の本店に1~2足は買いに行くのだが、そのときに必
ず1~2足、修理に持ち込むのも慣習になっている。

このメーカー、そんなに目が飛び出るほど超高級シューズというわけで
はないが、実直に職人が日本で作っているというせいもあってか、実に
丈夫なのだ。
普通に手入れして履いていれば最低でも2~3回はオールソール(底
の全とっかえ)が可能だ。

今回も2足持ち込み、1足はかなりくたびれていたので見てもらってだ
めなら廃棄と思っていたのだが、「いやこれ、まったく問題ないですね」
と軽くいなされ、戻ってきた靴は新品同様だったから驚きだ。

もっている靴の中で一番古いものはすでに15年以上前のもので、ハー
ドビブラムソールのハーフブーツだ。
重いので寒い日や雪の日にしかはかないというのもあるが、手入れを
してあるので表面上の傷はあるものの、いまだに崩れもほとんどないま
まだ。

このメーカーの靴は市場調査による「ビジネスマンの買う靴の平均単
価」からすると150%ぐらいの価格帯だが、これだけ丈夫で、度重なる
修理により再生できることを考えると、結局保持コストは同等以下では
ないだろうか。
デザインも、日本車に対するヨーロッパ車という感じのモデルチェンジで
緩やかに流行を取り入れていくので、長く履けるのだ。

家電製品は言うに及ばず、多くの「モノ」が明確な(短い)耐用年数で
管理され、「使い捨て」という言葉の印象が悪ければ「リサイクル」と
いう正義の元、消費が加速されていくことに変わりはないような気がす
るのだ。

手入れをして、修理をしながら使い続けるものが少なくなってきた。
物を選ぶとき、たまには「修理しながら付き合えるもの」という選択肢
も加えてみたらいかがだろうか?

メンテナンス(修理)前提でモノを売ってくれるお店


http://www.scotchgrain.co.jp/

ベルト、サイフ
http://www.frame.jp/

傘(別途ショッピングサイト探してください)
http://maehara.co.jp/

万年筆・筆記用具
http://www.shosaikan.co.jp/

2008年01月24日(木)更新

ブラウンのデザイン思想を引き継ぐアップル?

オリジナルの記事はGizmodoのようだが、先日のらばQに
「Appleがあのブラウンからパクったグッドデザイン10の原則」
という興味深い記事があった。

* The Future Of Apple Is In 1960s Braun: 1960s Braun
  Products Hold the Secrets to Apple's Future


* らばQ : Appleがあのブラウンからパクったグッドデザイン
  10の原則


紹介された写真を見ると、たしかに良く似ている。
「パクった」という言い方が適当かはわからないが、参照され
ているブラウンのデザインディレクターだったディーター・ラム
ス氏の「良いデザインの10の原則」には確かに則っている。

アップルを擁護するわけではないが、元工業デザイナーとして
見てみると、アップルはアップルなりに求められる条件や制約
の中で、そのブランドに足るデザインへと昇華させていると感じ
る。実際に工業デザインに関わっている方なら理解いただける
ことだが、機能や用途、素材などの条件が違えば、単に見た
目や構成(レシオ)などを真似てもオリジナルと同等以上にま
とめることは非常に難しい。
古くはアイボ(犬のロボットおもちゃ・なつかしい)もどきのおも
ちゃ、今ならそれこそアイポッドもどきのmp3プレイヤーを見れ
ばわかる。

実際、現在デザインディレクターのジョナサン・アイブ氏が指揮
を取る以前、アップル社およびマッキントッシュ製品の初期の
デザインの多くはフロッグデザイン社が行っていたが、こちらも
ドイツ系企業ということで、ほぼラムスの主張を踏襲するシンプ
ルで美しいデザインを行っていた。

私が個人的に始めて購入したパソコン「Quadra700」はCX、
IICiと続くシンプルな直方体のデザインだが、抜きテーパーの
ない6面抜き(!)というとんでもなくコストのかかった金型で
作られている。
当時のマックユーザーが鉄板を曲げて作られたウィンドウズ
マシンを受け入れられない理由なこんなところにもあるので
はなかっただろうか?
「人の暮らしを豊かにするすばらしいデザインが増えて欲しい」
と願う者からすれば、「もどき」以上の結果を出しているのであ
れば他社(アップル)が彼の思想を継承するのも良いのではな
いか?とも思う。

あえて話をブラウン社に戻すと、現在のブラウン社のシェーバ
ーのカタチは逆にディテールが増え、ディーター・ラムス氏の
思想から離れつつあるのではないだろうか?
(あえてデザインの良し悪しは問わないが)
却ってライバルのフィリップスの製品のほうがディテールをそぎ
落としどんどんシンプルで強い形になっているような気がしてな
らない。

ブラウン
http://www.braun.co.jp/default.html


フィリップス
http://www.arcitec.philips.com/jp/ja/
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