大きくする 標準 小さくする
前ページ 次ページ

2010年06月24日(木)更新

IABC2010トロント参加記(6)

IABCコンファレンスは4日間のうちに、レギューラーコンファレンス以外の
イベントがあります。

たとえばアジア、ヨーロッパなど地域ごとに分化したパーティー、表彰式、
ゲスト講演、ネットワーキングパーティなど。

今年は4月に香港でアジアのコンファレンスがあったせいか、今までのア
ジア地域のパーティーに比べるとインド、ニュージーランド、中国の方が少
なかったのかもしれません。
ここでも特徴的なのはアジアのメンバーだけが集まるのではなく、アジアに
興味があったりビジネスで関係しているヨーロッパやアメリカの方々も顔を
だすところです。すなわち、セクショナリズム的ではなくビジネスオリエンテ
ッドなのですね。

20100611h
3日目のお昼前には全員が集まる大きなオーディトリアムで基調講演が
ありました。
「フリー・ザ・チルドレン(Free The Children)」という国際協力NPOの設立
者であるクレイグ・キールバーガーさんのスピーチです。

毎回必ずこのような社会活動家のゲストが呼ばれるのですが、彼がこの事
業をスタートしたのは12歳!
つまり、「子どもが子どもを支援する」国際協力を合言葉に活動しているの
です。

20100611h

事業の目的として、
「貧困や児童労働から子どもを解放する」

というのはわかりやすい、ありがち(といっては失礼)ですが、

「子どもには社会や世界を変える力がない、という考えから子どもを解放する」

というのが特徴です。彼は現在20代後半ですが、すでに15年の社会活動経
験から、企業や社会に対し、大きな影響力を与えています。

よって講演のテーマは「これからの企業文化のあるべき姿」というとても示唆
に富んだものとなっていました。

CSR活動を活性化させるものの、CSRはCSRとして割り切っておこなっている
企業は少なくありません。

彼はCSR活動を通じて社員のスキルアップや業務の質の向上、その底上げ
によって事業の継続性が高まり、評判やブランドの向上につながると述べてい
ます。

そのために活動の意義を社員にしっかり伝え、地域、社内外をつなぐコミュニテ
ィを形成、そのなかで企業と地域がプロアクティブに動く(行動なきところに成果
は現れない)基盤を作っていきます。

20100611j

事例として紹介された米国ソニー・エレクトロニックス社のサンディエゴテクノロジ
ーセンターの「Star Class」奨学金プログラムでは、学生に施す、という一方的な
ものではなく、社員と高校生との複数年の交流が行われ、相互がコミュニティー
の底上げと活性化のために協力していくとうもの。

「わたしとあなた」という関係から「わたしとわたしたち」という関係へのシフトが
大きいのだ、とくくりました。

環境やCSRなど、今後の日本の企業コミュニケーションにおいてますます重要
視される話題ではあるものの、ただやっている、という状況を脱し、このように芯
のある考えをもった活動、企業が評価される時代になってくるのでしょう。

フリーザチルドレンには日本支部があり、活発に活動されているようです。
http://www.ftcj.com/index.html

2010年06月23日(水)更新

IABC2010トロント参加記(5)

2日目~3日目の主だった参加セッションのなかから、いくつかご紹介
します。

変化のはげしい時代における企業の社内信頼形成
(エンプロイコミュニケーションの重要性)
===========================================================
エンプロイコミュニケーションはIABCにおいてもトップトピックのひとつです。

しかし社内報やイントラの活用法など、ツールレベルの話題はほとんどありま
せん。
今風の言い方をすれば「戦略(社内)広報」となります。

金融危機、景気後退、企業の不正やスキャンダルなど、後ろ向きな話題が続
くこの時代、社内コミュニケーションにおいては「関係構築」とともに、もうひとつ
の重要なトピックが「信頼形成」なのです。

20100611f
特に国際的な企業や団体の経営およびコミュニケーションに携わる人は地理
的条件、文化、国籍も違う海外オフィスと本社間で社内外の「信頼」をどのよう
にリードしていけばよいか。

ロンドンのビジネススクールの教授によるセッションですが、机上論など皆無。
以下のトピックにおいて非常に具体的な説明がなされました。

・ なぜ信用が今重要なのか
・ 職場では金融危機、景気後退後、誰が誰を信じているか
・ 失われた信用はどのようにしてリカバリーできるか
・ コミュニケーターとしてどのような役割を負うべきか

論旨のポイントは良い意味でも悪い意味でも「感情論」ではなく、それを維持発
展させることがビジネスに反映する(非効率的な業務が無くなる、営業利益の
増加につながる、社員の精神的な健康状態により退社や医療費が減る)こと
を統計的かつ論理的に追っています。

20100611g

現実的に金融危機や景気後退に際し、マネジメントはリストラやさまざまな変革
モデルを取り入れざるをえませんが、社員がそのまま真意を理解することは難し
いのです。(感情として受容するのはかなりステージがあと)

トップやシニアマネジメントが直接対話の機会を設けるのは大事かもしれません
が現実的には余裕がなく、十分な時間はとれません。

プラクティカルな方法として、ここではミドルマネジメントとコミュニケーション担当
者が「通訳」としてその間に立つ、というアプローチを紹介していました。

当然ここには部署やヒエラルキーを越える施策が必要となります。
「社内通訳者」の役割の重要性に着目し、それを活用している企業やシニアマネ
ジメントは、日本においてはまだ皆無に等しいのではないでしょうか?

多くの場合、日本でコミュニケーションが良い、と言われる企業はシニアマネジメ
ント自身の積極性が目立つ場合がほとんどです。

「双方向の仕組み」(聞く耳を持ったふり)は入れても、それを「下意上達」
する機能、あるいは役割は足りていない気がします。

社内コミュニケーションの相談は近年増えています。しかもツールだけでは解決し
ない問題がほとんどなのです。このセッションは経営レベルの人に対しても説得
力のある内容でした。

2010年06月22日(火)更新

IABC2010トロント参加記(4)

2日目~3日目の主だった参加セッションのなかから、いくつかご紹介
します。


アイディアジャム
===========================================================
これは2日目の朝1晩のセッションです。7~8名がひとつのテーブルを囲み
みんなで意見を交換するセッション。

私が参加したのは「エンプロイコミュニケーション」。

このワークショップはファシリテーターがIABCチェアのマークシューマンさん
だったのですが、進行がとてもユニークで上手でした。

20100611d
(持参したポメラが写っています。今回はメモは全てポメラでタイプインし
とても重宝しました)

「不況、業務縮小、などから尾を引いている社員のネガティブな感情をどのように
ポジティブに変えていくか?」というテーマでスタートしました。
まず最初に社員や担当者が持つ「感情値」を出しあいました。

「怖れ」、「阻害」、「怒り」、「不安」、雇用の不安定さや仕事に対する「認知
の欠如」など、いくつかのキーワードが出てきました。これをテーブルごとにひと
つだけテーマとして選びます。

次にこれから6ヶ月でそれをどうリカバーするか、みんなでプランを考えます。

最後にそのプランを実施するためのバリアの認識とそれを回避する方法を考
えます。

アクションプランは理想論ではなく、コミュニケーションのプロとして組織をファ
シリテートするための具体的なアイディアでなくてはなりません。また、ネット
ツールなどに頼らないこと!という制約もありました。

ポイントは、
「それを達成するために自分たちはどう変化するべきか認識して行動する」
というところにありました。理解と等身大の働きかけが必要なのです。
「俺がやってやる」的な視点だけではダメだということは、洋の東西を問わ
ないのですね。
このあたり、今求められている「リーダーシップ」のプロファイルとも近いものが
あるなと感じました。

自分から社内に出て行って話を聴いたり、組織の壁を越えた対話の機会を
どう作っていくか、上の立場の人の引っ張り出し方など、ヒントになる意見が
数多く出てきました。

ほんの1時間足らずでぽんぽんとアイディアをまとめるなんて、できるのだろう
かと思いましたが、非常に民主的に会話がまとまっていくのがとても面白かっ
たです。もちろん皆さん仕事も国籍もバラバラ。

20100611e

社内コミュニケーションの場合、仕組みを作ることよりも「どういう結果を見い
出すか」を明確に持つことが重要なのです。

簡単なワークショップでしたが、日本向けには多少アレンジが必要なものの、
ヒントが多く、企業向けのセミナーの機会などで自分もやってみようと思い
ました。
(どちらかの企業でご興味があればお手伝いいたしますよ)

2010年06月21日(月)更新

IABC2010トロント参加記(3)

本格的にコンファレンスが始まるのは2日目の月曜日です。
スタートは朝8時!これもこのコンファレンスのユニークなところかも
しれません。合計3日半で約80ものプログラムがあるのですから、し
ょうがないですね。本当に一日盛りだくさんです。

朝2本、午後2本のセッションは、以下のようなカテゴリーがあります。
1.プロのコミュニケーターとしてのスキル習得セッション
2.参加者で意見をぶつけるアイディアジャム
3.企業事例などのコンファレンスセッション
4.企業やコンサルファームのエキスパートによるパネルセッション
5.業界で有名、あるいは人気のパネリストによるオールスターセッシ
ョン

合計3日半で約80ものプログラムが同じ時間帯にいくつかのテーマで
実施されるので参加者はその中から自分の興味にあったテーマ、プレゼ
ンテーションを選びます。

20100611a

テーマには以下のようなものがあります。
1.チェンジマネジメント
2.コミュニケーションリーダーシップ
3.エンプロイコミュニケーション
4.グローバルトレンド
5.マーケティング&ブランド
6.パブリックリレーション
7.ストラテジー&カウンシル

その間にゲストスピーカーや会長による講演、スピーチ、表彰、各地域の
パーティーなどがあります。

20100611b

初めて参加した2年前のニューヨークはリーマンショック前ということもあった
のかもしれませんが参加者が2000人を超え、その盛り上がりはすごいも
のがありました。翻って昨年。多くの人にとって参加しやすいはずのサンフ
ランシスコでも参加者は1500人。やはり景気低迷の影響は否めませんで
した。今年の参加人数は前年並みでした。

今年は日本からは私を含めて4人が参加していますが、初参加の某企業の
コミュニケーションマネージャの方は

「広報コミュニケーションをテーマにして、いわゆるコンベンション(展示会)で
はない純粋な会議に、世界中(約30カ国)からこんなに沢山の人が集まる
というのに驚いた」

とおっしゃっていました。



確かに単なる勉強の機会として捉えるならば、参加費(海外の場合は少な
くない旅費も含む)はけっして小さいものではありません。

私が参加して常に感じることは、

「プロのコミュニケーターは経営視点、利益意識、活動持続性」

を常に意識しているということです。
すなわち、広報コミュニケーションの仕事が、会社にとって「コスト」ではなく
「プロフィット」になるべく働いているのでしょう。

やはり昨年から今年にかけて、大きなテーマは「エンゲージメント(関係構築)」。
そのひとつはソーシャルメディアの発達による社会や顧客あるいは社員との
「対話」、もうひとつはソ-シャルレスポンシビリティの視点です。

もちろんツイッターなどの新しいツールの話も出ますが、より永続的な観点か
らのコミュニケーション戦略について語られることがほとんどです。

2010年06月18日(金)更新

IABC2010トロント参加記(2)

IABCのグローバルコンファレンスはいつも日曜日の午後からスター
トします。しかしお昼に受付に行くとまだ人影はまばら。

これで本当に1500人も来ているのだろうかと少し心配になりま
すが、セッションが始まるとなんだかんだ、一部屋に数百人が集ま
ります。
toronto0610a

初日は主に初心者向けのスキルアップセミナーがあるのですが、勉
強熱心なベテランの顔も多く、ファシリテーターもすこしやりにく
そうな表情をするときがあります。

toronto0610a
2つのセッションをこなすと夕方にオープニングイベントがあります。
昨年はシスコのコミュニケーションマネージャー(バイスプレジデント)
の女性による、社内コミュニケーション革新の話でしたが、今年は
趣向を変え、ドラムカフェというパーカッションパフォーマンスチー
ムの演奏でした。

toronto0610d

彼らは会場に集まる参加者(1500人強)の人数分のジェンベ(ア
フリカの打楽器)を用意し、椅子においていたのです。すなわち彼ら
のパフォーマンスに合わせて聴衆が全員参加でリズムを作り出してい
く、体験型のパフォーマンスなのです。

1対1では臆してしまうでしょうが、1000を超える数の音、しか
もそれが会場でひとつにまとまると瞬時にすごいパワーを感じること
ができるのです。

toronto0610f

彼らのメッセージは「コミュニケーション」という一見とらえどころ
のない、評価しづらいものも、やりかた一つでわかりやすく、圧倒的
につたえることができる、というものです。

toronto0610g

景気の後退から少しリカバリーが見えたのか、全体的に昨年のサンフ
ランシスコよりも参加者の元気を感じますが、それを後押ししてくれ
るような、勇気の沸く、すばらしいオープニングでした。本当にIABC
はコンファレンスの企画設計がクリエイティブだと感心します。

toronto0610h

チェアマンのマークシューマンさんはさすがに香港のときよりも堂々と
していました。「ちょっとしたことでもみんながすぐひとつになれるこ
とができることを忘れてはいけない」という力強いメッセージを語って
くれました。

本来であればこの後はレセプションパーティーが開かれたのですが、
同行スタッフが体調を崩し、日本チームで軽めの夕食を取り、明日か
らのハードなセッションに備え、早めにホテルに戻りました。
«前へ 次へ»