大きくする 標準 小さくする
前ページ 次ページ

2008年02月08日(金)更新

PMBOK:Project Management Body of Knowled

いつもはセミナーを実施する側である私も、できるだけ勉強の機会を
持つように心がけている。
そんな中、最初にお世話になった会社のOBが月に一度集まってや
っている勉強会で「PIMBOK」をテーマに話し合う、と言うお知らせを
いただき、さっそく先日参加してきた。

PMBOK(ピンボック)はアメリカの非営利団体であるPMI(Project
Management Institute)が策定したモダンプロジェクトマネジメントの
知識体系のこと。
数年前からにわかに脚光を浴び、「A Guide to the Project
Management Body of Knowledge」という書籍はいわゆる標準的な
リファレンスブックとして世界中で読まれている。(現在第3版)
私自身の会社でも、お客様である企業の広報部門でも、プロジェク
トマネジメントは大きな課題のひとつだ。
そもそも今までの形骸的な広報部組織では、「コミュニケーション戦
略」的なアプローチよりも短期の応対に忙殺されることが多く、「プロ
ジェクトマネジメント」スキルを身につけている人は少ない。(私自身
もそうだった)

結果、もしウェブサイトのリニューアルを行おうとすれば、プランニング
から実施まで丸投げできる代理店に預けてしまったほうが安心、とな
るわけだ。

PIMBOKの概念やメリットなどは文末のリンクに委ねるとして、ここ
では、そのときの勉強会で出た、興味深いポイントを紹介したい。

1.
私たちは通常、プロジェクトを行う際に「目的」や「目標」を掲げるが、
具体的になに(どんな評価軸)をもってそのプロジェクトを「成功」と評
価するのか、さらには何を持ってプロジェクトの「終結」とみなすのか、
を事前に、明確に定義しない場合が多い。
端的に言えば、「終わらないで解散するプロジェクトが多い」ということ
だ。

2.
PIMBOKの要点は上記のように「ゴール」イメージを明確に持つこと
で、途中で進捗を確認したときに、きちんとゴールに向かうために「プ
ロセス」をどう修正するかがとても重要だ、というところにある。
すなわち、最初に描いた「絵」のとおりに進むプロジェクトなどほとんど
無く、「つど確認し修正する」ことこそ成功の要点、ということだ。

となると米国産の考えをそのまま日本企業の現場に持ってきても適応
が難しいわけで、上記の弱点を克服するためのリファレンスは無いか、
と探していたら、なんと、数年前に人事系イントラネットASPサービスの
開発でご一緒した株式会社フュージョンの広兼社長がその名もずばり
「プロジェクトマネジメント標準 PMBOK入門」という本を書かれていた。
これぞ灯台下暗し。

早速読んだが、まさに現場での(多くの苦労や失敗、もちろん成功も)
経験の豊富な広兼さん、とても理解しやすくまとめられていた。
参考になるのが末項にある「失敗事例」。
たとえば家族での海外旅行のプランニングを妻と妹に任せ、収拾つか
なくなった家族の話などとてもわかりやすいエピソードで「なぜ失敗す
るのか」、「どこでどう修正すべきか」を詳細に説明している。

まず「ウェブサイトをリニューアルしよう!」、「イントラにツールを導入し
よう!」と宣言したり、「期内に立ち上げろ!」と言われる前に、必要な
プロセスがあるのではないだろうか?

いくら広報部が「コーポレートコミュニケーション部」などと名前を変えて
も、部門として、担当者として「意識」をもってプロジェクトを自身でハン
ドルしなければ会社を変える力を持った部署だ、と経営から認識される
ことはないし当人のキャリアアップも望めない。

本書を参考に、ぜひ自身でプロジェクトをマネージして欲しい。
そしてそういう企業を、広報部を、ご担当者を、ぜひサポートさせて欲
しい。

プロジェクトマネジメント標準 PMBOK入門 (単行本)
広兼 修 (著)


PMI東京支部(世界最大のプロジェクトマネジメント協会:PMIの日本国内唯一の支部)

2008年01月31日(木)更新

官公庁のウェブサイトのレベル

日ごろ国内外の様々な企業、団体のウェブサイトを定点観測して
いるが公共性の高い団体や企業、施設のウェブサイトほど、ひど
い状況で野ざらしになっているところが多い。

あえて紹介するが、コミュニケーションのプロ、というよりは一人の
利用者、もしくはその活動を税金で支える一市民として「これでよ
いのだろうか?」という思いを断ち切れないからだ。
(特別な意図は無く、恣意的に選んだ”一例”としてご覧いただき
たい)

国家公安委員会
http://www.npsc.go.jp/


宮内庁
http://www.kunaicho.go.jp/


航空自衛隊三沢基地
http://www.mod.go.jp/asdf/misawa/

さて、みなさんはどういう印象をもたれただろうか?
単にデザインや実装技術が古い、という以前に、対応する姿勢
(コミュニケーション)の有無や活動そのものの信頼感すら
損ないかねない状況だ。

ではなぜ、このような状況のまま10年近く看過されたままなのだ
ろうか?
やはり「入札制度」が前提である以上、なかなか十分な考えを盛
り込む余裕が無いのだろうか。

いや、予算が潤沢に無くとも、内部の担当者の熱い思いさえあれ
ば、航空自衛隊入間基地のようなすばらしいサイトは作れるはず
だ。(以下の記事参照)

http://crossmedia.keikai.topblog.jp/blog/105/10001589.html

そんな中、すばらしい記事が目に飛び込んできた。

なんと、札幌市の「コミュニケーションテレコム」というインターネット
関連企業が、財政再建中の夕張市のウェブサイトを無償で作成し
寄贈した、というのだ。

ご存知のように夕張市は2006年に財政破綻(はたん)が発覚。
職員は実質的な対応で手一杯な中、ウェブの更新にまで手が回
らず、対応が遅れがちだったようだ。

ある程度「おまかせ」とはいえ、通常この会社が法人向けにウェブ
サイト作成を請け負うと約500万円かかるというから、それなりの
貢献にはなっているのではないだろうか。

どのようなプロセスで作られたかは定かでないが、今日的で使いや
すいサイトになっているのはさすがだ。
(これで自社の宣伝すら載せない潔さがあれば、なおカッコヨイ!
とも思うのだが、経営としてはやはり投資効果を営業でカバーする
という計算をするのも否めないのだろう)

http://www.city.yubari.hokkaido.jp/

このような活動はウェブ制作会社やコミュニケーション関連企業に
とってもひとつのヒントになるのではないだろうか?

2008年01月22日(火)更新

週刊ダイヤモンド「恐怖のクレーマー」

今週号の週刊ダイヤモンドを手に取った。
特集は「恐怖のクレーマー」だが、現在多くのメーカーが如何に
常識はずれのクレームを受けているかに始まり、歴史的(?)
に有名な「東芝ビデオ事件」の当事者だった方へのインタビュ
ー、そして「クレームを如何に企業の糧とするか」という結びに
つなげている。

http://dw.diamond.ne.jp/index.shtml

普段、企業の危機対応や不祥事対応をクリッピングしているの
で今回の特集も大変興味深く読めた。
一言でいうと「まったく笑えない世界」がそこにあるのだ。

先週のH&K会長の話ではないが、実際に企業が対峙しなけ
ればならない様々なステークホルダーはすべて善意の方とは
限らない。
それでも「会話」をしなければならないというのは言うは易しだ
が、そもそも「想像しきれない相手」に対してどれだけの準備が
出来るのだろうか。やはり実際にことが起きてみないと、という
企業が圧倒的ではないだろうか。

昨日、これもタイムリーなのだが、お世話になっている日本PR
協会の第10回日本PR大賞「PRアワードグランプリ」表彰式と
新年懇親会に出席してきた。

そこで表彰された一社に「広報/危機管理マニュアル」を作ら
れた株式会社タカオ・アソシエイツさんがいらっしゃった。

「広報/危機管理マニュアル」
http://www.takao-associates.co.jp/pr/main4.html


まずはこのようなマニュアルを元に(あまり楽しくはないが)少し
ずつでも自ら想像を働かせて気持ちの準備をする必要があるの
かもしれない。

20年ぐらい前、米国出張の際に現地の新聞の日曜版を読むと
良く
「Do you hurt? We solve your problem」
という広告を目にした。

これは弁護士事務所が、企業の施設や製品、サービスを使って
怪我や事故を起こした個人に対し損害賠償訴訟を起こす手伝い
をするぞ、という広告だった。
確かに被害をこうむった人の権利保護や保障は大事だし、文化の違
いも理解できるのだが、こうもストレートだとそれ以上のものを感
じずにいられないような広告だった。

(直接関係は無いが、今朝のニュースで観た船場吉兆の会見でも
経営陣を横でサポートしているのはPRエージェンシーではなく
2人の弁護士だった。。。)

ネットの世界で日本は米国の数年後を追いかけ続けている、という
ような記事を読んだことがあるが、これはあまり繰り返したくない
未来だ。
以降米国がどうなったのか、出張も少なくなりアップデートしてい
ないが、もしご存知の方がいらっしゃればご教示願いたい。
(変わっていないかも?)
私たちの未来を明るくするためのヒントを得るために、まずは企業
コミュニケーションに関わる私たちが話し合い、考えをシェアしてい
く必要があるのかもしれない。

そのきっかけを与えてくれる貴重な特集記事だった。

2008年01月18日(金)更新

PR会社に求められる資質と役割

今日はお世話になっている日本パブリックリレーションズ協会主催の
特別国際セミナーに参加してきた。

世界最大級のPR会社「 ヒルアンドノウルトン(H&K)」の会長兼CE
O、ポール・テーフ氏の講演だ。

「グローバル化、デジタル化が進む中で今後のPR会社に求められる
資質と役割」という演目で、年初に申し込んだときにはすでに満席キ
ャンセル待ち。
それが本日開演1時間前に「キャンセルが出た」と連絡をいただき、
ラッキーにも参加することが出来た、というわけだ。
ほぼ1時間のお話はレジメなし、通訳のみだったが、非常に簡潔にま
とめられており、さすがはコミュニケーション企業のトップと唸らせる素
晴らしいプレゼンテーション(講演)であった。
ある意味、通訳を通しての講演というのは一定のセンテンスごとに間
があるので、ゆっくり内容を反芻出来るメリットも有る気がする。
とてもよく主旨を飲み込めた。

さて、内容は「変革の時代を支える重要な3つのキーワード」というもの
で、一つ目は「Globalization(国際化)」、2つ目が「Digitalization(デジ
タル化)」、最後が「Rise of stakeholders(多様なステークホルダーの
出現)」だ。
以下、簡単におさらいしてみる。

「Globalization(国際化)」
20世紀の国際化はアメリカ中心。後半になって日本が台頭してきた。
21世紀はEU、BRICs、中東が台頭してきているので既存の経済大
国からの情報の一方通行ではすまなくなる。
よって多くの国際企業はその商品、サービス、ブランドの再ポジショニ
ングをしなければならない。
この動向には大きなチャンスとリスクが存在するが、いずれにせよアク
ションを取らないことはリスクの増大を意味する。

「Digitalization(デジタル化)」
インターネットの普及率は現在、地球規模で約10億人。利用言語は
英語に次いで日本語が僅差で2番手という状況だ。しかし上記のよう
な新興国の台頭で、これからわずか2~3年で20億人に倍増する、
とも言われている。
増加の大半は企業ユーザーではなくユーザーサイドだとすれば、この
点においても情報は企業からステークホルダーへの一方通行にはな
らず、より水平(ホリゾンタル)なコミュニケーションになって行く。

その際のキーワードが「Conversation(カンバセーション:会話)」だ。

かつて企業のコミュニケーションで重要だったのは「Awareness(認知
度)」だったが、今後は「Relevancy(関連性)」と「Credibility(信頼性)」
がそれを凌駕する。
既存のマスメディアに圧倒的な影響力はすでになく、人々は企業に対
話を求め、企業はそれに応えなければならない状況にきている。

企業コミュニケーションに関わる私たちは、これらステークホルダーとの
会話がどのような価値を生むのか、その影響力などを測定し、分析する
力を要求されているのだ。

「Rise of stakeholders(多様なステークホルダーの出現)」
現在世界には1億を超えるブログがある。多くの人が自分の意見を言う
ようになって来た。
もはや企業は法規で守られた機密以外に社内外に「かくしごと」はでき
ない状況にきている。今までのように学生、消費者、株主、社員と、ス
テークホルダーごとの個別のコミュニケーションは成り立たないのだ。

またここ数年、企業コミュニケーションで重要なキーワードのひとつに
「Transparency(透明性)」がある。企業は自ら積極的に情報を開示し
ていくことによって多様なステークホルダーと良い関係を築くことができ
る。

最後に、まとめとして繰り返し語っていたのは、やはり企業コミュニケー
ションに関わる人々の測定、分析、判断力の重要性だ。

特に、多様性の時代にすべての人を満足させることは不可能、という前
提がある以上、どんなコミュニケーションを行ったら、誰が、どんな反応を
するか。その結果、どんな関係を築くことを望むのか。それらを事前にで
きるだけ考えておくことが重要だという。

質疑応答で一番印象的だったのは、日本におけるPR/コミュニケー
ションの仕事の「Credibility(信頼性)」をあげるためにはどうしたらよい
か?という質問に対してのものだ。
彼は米国の大手PRエージェンシー企業のトップだが「米国と他の国で
のアプローチはさほど変わらないが日本だけは特殊だ」と語った。

多くの日本企業はPR/コミュニケーションに(特に戦略面において)外
部のプロをあまり使いたがらない、という背景もあると語っていたが、一
番の問題は多くの日本企業が前述のような世界的なミュニケーションの
変革の波に対する意識がまだまだ低いからではないだろうか?

そもそも企業もエージェンシーも、まだあまり積極的にコミュニケーショ
ンを行っていない(開かれた対応をしていない)。
それでは担当者は経験値を築けないので、前述のような分析力や判
断力はいつまでたってもつかない。
結果、いつまでたってもコミュニケーション業務の重要性や信頼性を
経営陣に説明できない。

負の連鎖を断つために、おまえたちはやらなきゃいけないことがたくさん
あるぞ。もっと危機感を持て!と語っているようでならなかった。

目の覚める思いで会場をあとにした。

2008年01月15日(火)更新

情報技術の進歩から生き方を守る

お世話になっているある社団法人から、「ITの影響とルールづくり」に
ついて寄稿して欲しいと依頼された。
特に顕著な電車の中や会議中の携帯電話利用のマナーの悪さを例
に、これら携帯端末やパソコンなどのITツール利用における子供・大
人・社会への影響について考えたい、というものだ。

偶然同じタイミングでフジゼロックスさんの出している広報誌「グラフィ
ケーション」でも同じような内容の特集が組まれていた。

「ケータイ文化を考える」
http://www.fujixerox.co.jp/company/fxbooks/graphication/

ここでは、「携帯電話」はもはや「電話器」ではなく「ケータイ」という名
のコミュニケーションツールだという認識のもと、明暗取り混ぜて今後
私たちがどう付き合ってどんな文化を創っていくのかを語っている。
いつもながら非常に内容の濃い、良い広報誌だ。
(上記サイトより申し込み可能で無料で購読できます。オススメです)

それでは同じ話題に落とし込んでもしょうがない、ということで少し視点
を変えてこの問題を考えてみた。

それは、「情報技術の進歩から生き方を守る」というものだ。

これらの情報機器の進歩で昔に比べ大きく変わったことは、仕事や生
活のプロセスだけでなく、生き方そのものがスピードアップしていること、
そして拠り所となる情報が飛躍的に増えたことだ。

「調べようと思えば答えはすぐに、しかも豊富に見つかる」
「事前に予定を立てなくてもいつでもケータイやメールで連絡できる」

など、一見とても便利なことだ。「どうせ携帯で連絡取れる」ということで
最近では待ち合わせもかなりファジーになっているではないか。

反面、仕事を例に見てみると、作られたものやサービスの質において
以前に比べて荒さが目立つものや考えられないような不具合、間違い
などが起きることも多くなってきているような気がするのだ。
思うに、
「相対的に考える時間が減り判断力が弱まっている」
のではないだろうか?

結果、他人に対する思いやりや慮り、想像力に欠ける事例が増えてい
るのだ。公共交通やスペースでの携帯電話のマナーや生活の中での
ネット依存、それらが引き起こす犯罪などはこの結果なのではないだろ
うか。

だとすると、これらは誰かが対策を提言しても規制を設けても簡単に解
決できるものではない。グラフィケーションでも言及しているように、規制
の一方で輪をかけた新しい機能や楽しいサービスが日々生み出されて
いるからだ。

世の中は便利になる反面、私自身もこの恐怖感に日々苛まされている。
オフィスでは仕事がほぼ情報化されており、業務のプロセスも成果もす
べてネットを通して管理できる状況にある。だからこそ一人で考える時
間を持つためにデスクから離れてカフェで黙考したり、スタッフと1対1で
ゆっくり話が出来る落ち着いた会議室を設置している。彼らはわたしより
はるかに集中力が高く、朝から一日中パソコンに向かったままでいるこ
とさえ珍しくないが、仕事の評価をすると近視眼的になっていて出口を
見定められずに悶々としていることも少なくないのだ。
たまには机から離れ、ライブラリでデザイン関連の本に目を通したり、同
僚と雑談しながら意見を交換するようなことがとても重要になる。

政府の「ゆとり教育」も意味を履き違えたまま見直しを迫られてしまった。
本当の「ゆとり」とは自分でものごとをしっかり考える時間を持つことで、
それによって判断力と学習能力を伸ばし、社会的良心を持ち、良い仕事、
良いアウトプットの出来る人を育てることを意図していたのではないだろ
うか。

「決まりだから言うからね」的な車内アナウンスは聞きたくないものだ。
ましてや注意して刺されたのではたまったものではない。
規制とは別のところからこの問題を捕らえると、解決のきっかけはつか
めるのかもしれない。
«前へ 次へ»