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2008年10月31日(金)更新

「介護」を作った男

本日の日経産業新聞にこの経営者ブログのお仲間であられる
フットマーク株式会社磯部社長のインタビューが出ていた。

良くセミナーで紹介するが、社員数70名にして社員ブログ30
をこえる企業だ。

記事は「起業人」と言うコラムで、商品開発やビジネスでのご
苦労の話が中心だが、「介抱と看護を組み合わせて介護という
言葉を作った」ことや「商標登録をしたものの権利行使をせず、
誰もが使えるようにしたこと」などが書かれている。
もちろんしっかりとした経営計画を元に運営されているからこそ、
現在のフットマークがあることは間違いないが、直接この会社に
訪問差し上げると、なぜ半数もの社員がブログをやっているの
か、熱心に商品を作り、売っているのか、そもそもみんな良い顔
をして生き生き働いているのか、が伝わってくる。

それはお客様の喜びが何かを、全員でよくわかっていること。
それに応えるべく行動した自分たちのビジネスをお客様がどう
捉えられたかをしっかり共有しているからだ。

すなわち、仕組みやツールから始めるお仕着せのコミュニケーシ
ョンに頼らず、自己認識と相互理解を常に深めようと言う姿勢をし
っかりともっていると言うこと。それだけなのだ。

「社内コミュニケーションが悪いがツールを導入しても改善され
ない」
と言う会社が多い。

この会社には一般的に言われる洗練されたイントラネットやツ-
ルはすでに必要ないのかもしれない。
なぜならば各自が外向きのブログやウェブサイトのコミュニケー
ションを通して発信し、反応を得、それをフィードバックする流れ
を作ってしまっているからだ。

社内外のコミュニケーションの垣根は確実に変化してきている。

時々対談でご一緒する時事通信の湯川さんも、奇しくもこのタ
イミングにこんなエントリーをあげられていた。

企業の「ベルリンの壁」を叩き壊すのが広報の仕事になる

2008年10月27日(月)更新

「プロとは?」の会

私がサラリーマン時代の最初の15年お世話になった会社がある。
外資系の半導体メーカーだが、入社当時(1983年)は「世界最大
の半導体メーカー」だった。
ほとんどそんなことを知らずに入社したため、親はたいそう驚いたも
のだ。

しかしそんな喜びもつかの間、翌年には日本企業に抜かれ、インテ
ルに抜かれ、あれよあれよと言う間にトップ10ぎりぎりをさまよう身
になった。

とまれ、そんな激動の半導体企業を支える経営層には、たいそうユ
ニークな人材が多かった。直接ではないにしても、そんな人たちの
下にいて、とても多くの刺激を受けたことは間違いない。
その中でも当時の原価管理、製造企画、経理・財務本部長だった
方は、当時は笑顔を一度も見た事がないぐらい激しく厳しい方、と
いう印象しかなかった。

その方との10数年ぶりの邂逅はひょうんなことから訪れた。
同じTIのOBの先輩から、

「TIのOB連中が月に一度の勉強会をやっているのだけれど、プロジ
ェクターでネットをつなげたプレゼンテーショがやりたいので、会議室
を貸してくれないか」

と言う要請を受けたからだ。

もちろん2の句も告げず承知差し上げたのだが、当日お待ちしている
と件の本部長をはじめ、人事本部長など、歴々の方がぞろぞろとお見
えになり、恐縮しきりだったのを覚えている。

他の会社に移られた方、テクノロジーベンチャーの立ち上げ支援をさ
れている方、リタイヤされて企業の顧問をされている方など、様々だ
が、「学ぶことをやめたとき、人間は終わる」というように一様に皆さん
勉強熱心なのだ。
そして月に一度代わる代わる講師を務め、大いに議論する。そのテー
マが「ビジネスにおけるプロフェッショナリズムを問う」こと、すなわち
その会の名前は「プロトワの会」なのだ。

それ以来、OB勉強会のお誘いを毎月いただくようになったのだが、
自身のセミナーや出張と重なることが多くなかなか参加することも
ままならなかった。

いつもお誘いをいただきながらあまりに貢献がないので、今年は海
外のコミュニケーションの状況を勉強してきたのでそのようなことでも
ご興味いただけるならお伝えすることは出来ますよ、とご挨拶したら
「それは興味深い。では早速話してくれ」と言うことになった。

今月だけで10本もセミナーをこなしている自分だが、そのような大先
輩たちの前で話すのはとても緊張した。加えて当日会場に行ってみる
と、なんとデザイナー当時のマネージャー(恩師)までもが来ている。
これはとても嬉しかったが、同時に緊張はピークに達した。

しかし彼はとても優しい方で
「僕も参加するのは久しぶりで、タイトルだけ見て面白そうだから来て
みたら、なんだ、雨ちゃんが話すのかよ」と、とぼけて応えて下さった。
(それでも十分プレッシャーなのです)

いままでで一番短く感じた2時間だったかもしれないが、参加された
皆さんから

「こういうチャンスでなければ、見るどころか知ることさえなかったであろう
最先端の状況に触れ、また分かりやすい資料と巧みなプレゼンテーション
のおかげでよく理解ができました。たいへん 感謝しております。」

と謝辞をいただいた。

当時は(今も)出来の悪い弟子だったが、すこしだけ借りを返せた気がした。

わたしの奇異なキャリアスタートについては過去ログをご参照のほど。
http://crossmedia.keikai.topblog.jp/blog/102/10001526.html

2008年10月24日(金)更新

食品テロにどう備えるか?

2年前にこのブログを始めてから、個別具体的には一番多く取り上げている
のが「危機対応」だ。
(拙ブログのサイト内検索→右上の窓で「危機管理」と検索して欲しい)

実際に長年お世話になっている日本生活協同組合連合会でも、今年前半の毒入り
ギョーザー事件を筆頭に、いくつもの課題に直面している。さらには今週は
カップラーメンの問題が浮上している。

弊社としてはウェブサイトのリニューアル、監修を継続的にお世話させていた
だいている関係で、数年前からトップページの危機対応(いわゆるシャドーサ
イト化)の準備をしておいたので思わぬ貢献をすることになったが、会(企業)
としてはもちろんそれだけで済むものではない。
弊社では企業の不祥事や危機が発生するたびにその企業の対応や周辺の
動向を定点観測しているのだが、ことは当該企業だけの問題ではないのだ。

たとえば半年前の毒入りギョーザ事件の場合、売り場で起きた現象は

「冷凍ギョーザや冷凍食品ってそもそもどれだけ安心なのよ。ちょっと買うの
は控えよう」

と言う消費者心理だ。

だとすると、天洋食品の製品を直接輸入したJTや販売した生協のみならず、
同じく冷凍食品を扱う企業全体が対応を迫られることとなるのだ。
実際、味の素やニチレイなども「対岸の火事」と看過することなく

「自社で扱っている商品に天洋食品のものはありません(味の素は後日、
業務用に取り扱いがあり、釈明)」

と言うだけでなく、安全な商品のパッケージ写真をウェブや新聞広告で開示
して

「これらのパッケージは安全です」

と視覚から記憶に訴える形で販売減少を防いでいた。

食品に関わる危機は、残留農薬や不正添加物など製造側の問題から売り
場における異物混入にまでわたる。

特に売り場に近いところで起きる異物混入に関しては「食品テロ」とまで呼
ばれるようになった。

これについては上で紹介した日本生活協同組合連合会の「生協出版」から
専門書が発行された。
食品製造関連の企業には参考になるのではないだろうか?

coopsyuppan

食品テロにどう備えるか? 食品防御の今とチェックリスト 
著者・発行:今村知明=編著 コープ出版
価格(税込) 2,625 円

2008年10月13日(月)更新

日本経営協会主催「企業Webサイト活用とリニューアルのすすめ方」セミナー実施

先週は自主セミナーに始まり、宣伝会議、そして最後は大阪出張し、
「企業Webサイト活用とリニューアルのすすめ方」と言うタイトルで全
日セミナーを実施してきた。

日本経営協会関西本部からご要請いただくのは本年の5月に続き2
回目。
前回はインターネット広報の全般的な話だったが、今回はより具体
的に企業のウェブサイトリニューアルに焦点を当てたセミナーを望ま
れる声が多かったとのことでかなりレジメをチューンナップした。

一般的には「ウェブリニューアルセミナー」というと、ウェブサイト制作
会社主催で「CMS導入による効率的なリニューアル」やアクセス増
加や営業強化を前提にした「ウェブマーケティング」セミナーが多いの
だが、弊社の場合は管理者の資質向上を重点に置いた、よりマネー
ジメントサイドの話が中心だ。
「最近ウェブの管理を担当するようになったのだが、十分な知識もなく
会社のウェブサイトをリニューアルしようにも、どこから手をつけてよい
かわからない」

と言う方はまだまだ多い。
しかし同様に

「急きたてられるようにリニューアルやイントラネットの導入を行ったが
効果がわからない、継続方法がわからない」

と言う相談も後を絶たないのだ。

今回も、本当に管理者側の意識付けと資質向上に特化した内容で
受講者の意識とのズレがないか、事前にアンケートまで寄せてもら
って確認した。

内容的には以下のようなものだ。


1.企業ウェブサイト活用の現状(国内事例研究)

日本企業のホームページ活用の歴史:変化と現状
企業ホームページ担当者の悩みとその根拠
日本の先進事例の詳解

2.今、ネットに何が起きているのか? (海外事例研究)

企業、メディア、ユーザーの関係の変化
ソーシャルコンピューティングの時代とマーケティングの変化
メディアルーム:ニュースリリースの開示と格納
社内コミュニケーションの重要性とポイント
オンライン危機対応事例
人材採用

3.課題検証(ワークショップ)

参加企業のウェブサイト検証と質疑応答
課題の共有
対策とアドバイス

4.ウェブサイトリニューアルのプロセス

現状の把握と課題の掘り起こし
改善目標の優先度付けと戦略策定
ツール選定とサイトプランの作り方
要件定義と制作会社、代理店への対応方法
制作・開発管理

5.ウェブサイト管理の実際

品質管理と継続的な発展を見る運営管理方法
担当者育成と社内の組織作り
経営に対するアプローチ
効果測定と継続的な発展方法

さすがに一日のセミナーはエネルギーを使うが、帰りの新幹線の中で
受講者のアンケートのコピーを読んですこし疲れが取れた。
以下のようなありがたいコメントを多数いただき、自信につながった。

「表現技法ではなく、その前提の大切さを痛感していますが、ずばりの
ヒントをいただきました」

「技術の話ではなく、このような構成の講義内容が一番知りたかった
ことでした」

「対話のパートもあり、事例が豊富だったので理解しやすかった」

「レジメは後日マニュアルとして活用できそう。内容は豊富だが、やや
時間が足りないぐらいだと感じた」

事務局からはすぐに次回の打診をいただいたのも有難かった。
「今度は2日間はどうですか?」とも言われたが、東京では経験あるも
のの地方では前後に移動があるので体力が持つかどうか。。。

とまれ、まずは企画案立ててみよう。
聞いてくださる人がいらっしゃれば応えるのみだ。

2008年10月03日(金)更新

なぜ日本企業のウェブサイトはみんな同じ顔なのか

今週行ったセミナーの終了後、残られた受講生の方から相談を受け
た。内容はこうだ。

「私はある業界の広報部で最近ウェブサイトの管理担当者になった。
今回、数年ぶりにフルリニューアルすることになり、割と大手の制
作会社を4社リストしてコンペにかけることになった。」

「しかし実際に提案を見てみたら、企画案はともかくレイアウトデ
ザインは4社ともほぼ同じようなものを持ってきて”最近の企業サ
イトのスタンダードはだいたいこういう形ですから”という。」

「せっかくコストをかけてリニューアルするのに、見た目の変化も
わずかだし結果がどこにでもあるようなデザインでは食指が動かな
い。」

「いまさら別の会社を呼んでも多分変わらないだろうし、どうした
ものかと本気で悩んでいる。」

というものだ。
実はこの手の話は珍しいことではなく、わたしたちがコンサルテー
ションで関わる企業界隈でも散見することなのだ。
これを「制作会社の創造性の欠如」のひと言で片付けることが出来
るのだろうか?

問題点は3つある。

1.要件定義の不備(発注側の問題)

定量(数値)化できる条件を要件定義に書くのは簡単だが、デザイ
ンは定性(感覚)値だ。
ニュアンスを伝えるためには数多くの参照事例から自社デザインに
求めるデザインの条件や傾向を正確に伝える必要がある。


2.ヒアリングや調査、理解力の不備(制作会社側の問題)

同様に制作会社側も、どこまでの変化を求めているのかオリエンテ
ーションはもちろん、様々な角度で定性調査を調査を行えば、その
企業に対する理解を深めることが出来る。


3.選考基準とアプローチの不備(両方の問題)

コンペの期間はたいがい短期間である場合を考えると、評価のポイ
ント(どんな提案が評価されるのか)を具体的に提示、確認するだ
けでも良い結果に結びつくものだ。
提案のデザイン案が凡庸でつまらない大きな理由は「リアリティが
強すぎて夢がなさ過ぎる」からだ。

クルマのコンセプトスケッチも最初は空を飛びそうな絵だったりす
る。
「これはちょっと行き過ぎだけど、私たちのことを理解してここま
での提案をしてくれているのだな。この会社ならもうすこし話を詰
めれば良い結果を出せそうだ」と思わせる、またそういう点を評価
するのも重要だ。もちろんこれには勇気がいる。しかしその判断を
確信に変えるためには企業側にしっかりとしたコミュニケーション
戦略が必要なのは言うまでもない。

       ◇      ◇      ◇

そろそろ「ロゴを隠したらどこの会社かわからない」ようなウェブ
サイトを考え直す時期なのではないだろうか?

私たちは企業担当者側についてこれらの下地作り(理論武装)のお
手伝いをする事が多いが、同時に制作会社や代理店側から、提案の
サポートに回ってほしい、という相談も受ける。
要は双方のギャップを埋めるためのミドルマン的な役割が求められ
ているのではないかと感じる。

企業におけるオンライン・コミュニケーションのプロフェッショナ
ルを育成し、彼らのキャリアプランをサポートするのが本懐なのだ
が、目前のリニューアルはその道を待ってくれない。

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