大きくする 標準 小さくする
前ページ 次ページ

2007年11月07日(水)更新

ロゴのガイドラインはありますか?

オンラインコミュニケーションのサポートを中心にしているが、
意外に相談が多いのが、「ロゴの利用規定に関する基準書
を作って欲しい」というオーダーだ。

多くは、企業合併に伴う場合が多いのだが、一番興味深か
ったのはある中央省庁から(間接的に)依頼を受けたときだ。

これだけ知的所有権がうるさい時代であるにもかかわらず、
ロゴやブランドに対する認識がかなりおろそかだった。
まず目に付いたのが名刺だ。約10名弱の方々(半数は官
僚)の名刺はそれぞれフォーマットがばらばらで、つい先日
リニューアルしたばかりのロゴの配置や有無もまちまちだっ
た。

それで理由を聞いてみると

「名刺の作成は各自のポケットマネーで各自が発注する」

からだったのだ!

それでは無理もない。
しかしそうだとすると、自身の信頼を一番最初に裏付けるは
ずの名刺に「ホンモノ感」がないこの状況は問題ないのだろ
うか?

企業や団体のロゴとは何か?
「その企業として行うビジネスや活動に責任を持つこと」だ。

なぜ利用規定を設置する必要があるのか?
「個々のビジネスや活動が同じ会社のものだということを理解
しやすくするため」だ。

会社を作って、あるいは合併などして、みなほとんど例外なく
新しいロゴを作る。しかしその利用規定(ガイドライン)に関して
はおざなりなことが多い。
以前知り合いのベンチャー企業会社(昨年上場)は7年前の
開業時、社長は僕にうれしそうに新しいロゴの図案を見せてく
れた。
それは有名なデザイナーに数百万円(上のほう)で発注したも
のだそうで、それなりにユニークな素敵なロゴだった。
しかし名刺やレターヘッドなど、いくつかの簡単な利用例がつい
ているだけで、システム化された利用規定はなかった。
些細なことかもしれないが、おかげでその会社のWebサイトは
制作会社の好みで作られており、ロゴの視認性が悪く、他の
インターフェイスが目立ちすぎていてロゴ自体の存在感が薄い。

内部告発による企業の不祥事や倫理の低下が顕在化する中、
「私たちはどうやって信頼を得、それを継続しているのか」を社
員全員で再認識するきっかけとして、企業ロゴをどう扱うのか
見直してみると良いのではないだろうか?
ブランドを失うのは一瞬だ。

企業ロゴのガイドラインを作るメリットはそんなところにもある。

2007年11月03日(土)更新

ドメインを失う恐怖

仕事に関連して毎日何十というウェブサイトを見ているとたまに
「おや?」ということに出会う。

杞憂(何かの間違い)であってほしいと思うのだが、昨日金曜日の
朝からあるベンチャー企業のサイトが見られなくなっている。
正確に言うと、
「このドメインは失効しています。再登録の手続きはこちら」
という、いわゆるドメイン登録業者の告知ページになっているの
だ。

ひょっとしてドメイン更新を忘れたのだろうか?
もし、そうだとしたら、気が付いてすぐに再登録すれば、すぐ元に
戻るはずだが、、。
もし、失効してすぐに他社に横取りされていたら。。。
そしてそれを取り返すのに、多額の金額を要求されたら。。。
最悪なのは、取り戻せなかったら。。。

ドメイン失効の場合、以前のドメイン保持者に一ヶ月以内の買い
戻し猶予があるのだが、以前「Pukiwiki.org」がドメイン売り業者
に取られて戻せなかった、という事例がある。

http://yoosee.net/d/archives/2005/09/06/002.html


すでに失効から2日たってサイトが戻っていない。
もしドメインが戻らないとするとメールアドレスも使えなくなる。

失効したのは「.com」ドメインなのだが、きちんとした法人なのに
なぜ「co.jp」を取らなかったのだろうか?
「co.jp」なら取得に謄本まで要求されるので簡単には横取りされない。
また、同じ名前の.jpも未登録で開いている。

以前はトヨタの「WILL-VS」という車のキャンペーンサイトが失効
してすぐにポルノサイトに取られたことがあった。
(4年たってやっと最近消失した)
民主党の大阪府連の女性議員でも同様にえげつないエロサイト
に取られたこともあった。(こちらはいまだに)

シリアスな事態にならないと良いのだが。
人事とはいえ、週末が落ち着かない。

2007年10月31日(水)更新

宣伝会議札幌:編集ライター講座

10月は姫路、金沢、札幌と、ほぼ毎週末アウェイのセミナーがあり、
その間を東京のセミナ-がつなぐ、という状況だった。まるで旅芸人
のような状況で、ホテルでは乾燥によって喉を痛めないように、携帯
の加湿器まで持参している。喉を酷使し、風邪をひきやすい季節だ
が、なんとかしのいでいる。

アウェイのラスト、先週末の札幌は、実はピンチヒッターで急遽決ま
ったものだが、通常おこなっているようなインターネット広報などの
ウェブ関連の講義ではなく、一般的な「編集・ライター」向けのシリ
ーズだった。そういうこともあって内容を変更し、聴講生の興味に応
えるように調整した。
sapporo

実際、一般の人がブログを持ち、社会にも企業にもメディアにも対等
以上にものが言える世の中だからこそ、受けてたつ社会や企業、
メディアにとって「プロの編集ライター」の必要性が高まってきている
のだ。

特に企業のウェブの内容は
「アクセシビリティやユーザビリティに長けてはいるが内容はつまら
ない」
というものが少なくない。

なぜか?
それは、いまだに年次で出している印刷物の会社案内やアニュア
ル、CSRレポート、入社案内などを元にデジタル(HTML)化ではな
いのか?
そのような定量的な情報や型にはめられた文章に、もはや「感動」
や「共感」を感じられなくなっているのだ。

企業のコミュニケーションは、いままでそういうタイムスパン(年次
対応)で事足りていた。あとはせいぜい事あるごとに出していたニ
ュースリリースぐらいだった。

先日の続きだが、なぜ不祥事が顕在化するかというと、このような
対応の準備しかしていないためで、社会の興味は事が起きた後、
どのように継続的に追求される責任に対応していくかにあるのだ。

それがほとんどの企業がやっているように、記者会見に加えてウェ
ブではPDFの謝罪書面一枚の対応では納得し得ず、火に油を注ぐ
のは目に見えている。

今後、企業のコミュニケーション担当者は、一層恒常的かつ定性
的な情報発信・対応をおこなう必要がある。
だからこそ、企業のコミュニケーション部門をサポートする編集ライ
ティングのプロのサポートが必要不可欠になる。

事後、懇親会にも招かれ、直接話を伺えたのも良かったが、このよ
うな可能性を感じていただけたのであればありがたい。

宴が明けてひとつやり残したことがあった。それは前回食べられな
かった「うまいラーメンを食べる」ということだ(笑)。
もちろん夜10時以降ではメタボリックリスクが高いのも承知の上、
果たして飛び込んだ店のオススメは「ホタテのソテー入りコーンバ
ター味噌ラーメン」。
一杯5000キロカロリーぐらいありそうな重戦車だ。

おかげ翌日は朝食が取れなかった。。。
しかし札幌はすでに凛とした空気の中、街全体が針葉樹の香りで
包まれ、紅葉がまぶしく、とてもきれいだった。良い時期に機会を
いただいたことを感謝しつつ、少し街歩きをして空港に向かった。

2007年10月29日(月)更新

21世紀のリエンジニアリング革命

年初の不二家に始まって、「白い恋人」の石屋製菓、最近では個人的に
大ファンだった赤福まで。この数年で企業の不祥事発覚がかなり顕在化
してきた。

以前にも書いたが、その理由は紛れもなく「内部告発」である。

先週末、宣伝会議のセミナーで札幌に行ってきたが、懇親会で新聞社に
勤めていたフリーライターの方と話したが、やはりひと月に数十件の告発
が届くそうだ。(北海道地元メディア1社だけで!)

もちろんその中には、たんなる不平やグチに近いものもないわけではなく、
メディアとしてもすべてすぐに取り上げるわけにはいかないので、内容を吟
味し、本当かどうかの確認にかなり時間をかけ、そのうえで社会的影響力
の大きいものを取り上げていくのだそうだ。

特に中小企業やオーナー企業などでは、競争の激化から利益優先でコス
トカットやプロセスカットを行い、結果、一線を踏み越えるところも少なくない
のだろう。
今、石屋製菓や赤福の報道を見て、冷や汗をかいている企業は意外に多
いのではないだろうか。
米国の巨大エネルギー企業、エンロンが不正経理の告発で破綻したのが
1991年だ。破綻まで行かなかったが国内金融大手でも10年前に相次い
で大掛かりな不正利益供与事件が発覚したことがある。
しかしこの3年は明らかに不正発覚がスピードアップしている。その原因が
ブログやSNS、コミュニティサイトの充実によるものだということは間違いが
ない。今まで告発を行う個人の力は弱かった。仮に掲示板に書いたりメディ
アに持っていっても、確証をとることが難しかった。
しかし現在はソーシャルメディアの特性(相互検証性)により、ネット上でそ
の確を取ることも比較的容易になってきたのだ。

これも以前書いたが、昨年参加した米国のコミュニケーション関係の会議で
盛んにみんなが言っていたのが「透明性」という言葉だ。
多くの企業トップ、または従業員がブログを書く中で、それらのブログの華燭
や創作(いわゆるフェイクブログ)がばれたおかげで反論が集中し、ブログの
閉鎖からサービスの終了、ブランドの消失にまでつながる例が多かったから
だ。もちろん企業の不正の告発に端を発したものもある。

いずれにせよ、コンプライアンスやCSRの観点からも、企業は正直な経営を
(当たり前だが)徹底しないとあっという間に足元をすくわれかねない時代だ。

これを解決するためにはどうしたらよいか。

経営者が正しい経営をする。ごもっともだ。しかしそのためには根本的に「勝
てる」ビジネスモデルが必要になる。そうでなければ続かない。
また、従業員が「勝てる」ビジネスモデルを理解することが重要だ。
最後は、企業が顧客の意見を聞く耳を持つことだ。

ここまでは教科書的なことだ。
しかし多くの企業が悩んでいるのは、この問題をどのようなプロセスでそれを
実現していくか、ではないだろうか?
(弊社への相談もこの点が多くなってきた)
何しろ旧来の広報ブには新しい問題を解決する予算も経営の理解もない。

「リエンジニアリング」は15年前のビジネスプロセス見直しの理論だ。
本もベストセラーになったが、今ではブックオフで105円だ。

しかし、当時の日本企業は製造開発にしか、これを取り入れなかったような
気がする。この本の真意は、事業全体で業務プロセスを見直すところにあっ
たはずだ。
米国と日本のウェブサイトがどうしてもうも違うのだろう、と思うとき、米国は
リエンジニアリングプログラムの延長線上でタイミング良くネット戦略を考え
てスタートしたという気がしてならない。10年過ぎても、「骨」があるから余り
おおきな変化がなく、「コミュニケーションの積み上げによるコーポレートブラ
ンディング」が実現できているからだ。
例外的な危機があったとしたら、皮肉なことだが2000年のSIPSブームの
ときだったかもしれない。このころはいくつかの企業がSIPSによってテクノ
ロジーエンターテイメント化していた。

話を戻すと上記の問題のブレイクスルーには、日本企業でも、もう一度間接
部門を中心にしたの「リエンジニアリング革命」が必要なのではないだろうか?

目先で小手先の対処をしても、手に余るほど、問題は大きくなってきている
気がするのだ。
手探りだが、今年の仕事のほとんどがこのようなアプローチに近づいている
のが証左だ。

2007年10月18日(木)更新

ReuseとCreativity

約10年ほど前、まだウェブサイトを持つこと自体がステータス
だった時代、ある雑誌のインタビューでシーナ&ザ・ロケッツ
の鮎川誠さんが自分のウェブサイトについて語っていて、とて
も感心したことがある。久しぶりにひょんなきっかけで思い出
した。(細部表現は忠実ではないかもしれないが容赦)

インタビュアー(以下・イ):素敵なデザインのウェブサイト
ですね。

鮎川誠(以下・鮎):まあ、ファンと直接対話ができるメディ
アをもてるということはすばらしいことだよね。
イ:音楽活動でも精力的に世界中を走り回ってお忙しいと思い
ますが、ウェブサイトの構想はどのようにして考えられたので
すか?

鮎:言いたいことや伝えたいことがたくさんある、それだけだ。

イ:デザインも相当凝られているようですが、これは奥様のご
意見なども取り入れているのですか?

鮎:いや、まったく。実際のところ、デザインなんて自分には
できないからネットを見ていて気に入ったサイトのデザインや
ボタンなどのパーツをそのまま拝借して使っているだけなんだ。

イ:えっ?著作権の問題など、そういうことをするのは鮎川さ
ん自身、アーティストとしても問題があるのではないですか?

鮎:そりゃあ、まったくないとは思っていないけど、これでだれ
かの権利を奪っているとは思えないな。だいたいあなたはイン
ターネットの雑誌のくせにインターネットのことがわかってい
ないのではないか?そもそも回線もコンテンツもみんなとシェ
アするためにやっているのではないか?みんなが行き過ぎた権
利主張したらネットは味気のないものになってしまうだろ?
第一、突き詰めてみたら、本当にオリジナリティのあるものな
んてそんなにないはずだ。
人からインスパイアされたものを、もがきながら自分のものに
する、それがロックンロールなんだと思う。
要はオリジナルに対するリスペクトがあるか、ないかだ。

      ◇      ◇      ◇

オリジナルは博多弁だったので、もっとケンカっぽく伝わった
が、写真は笑っていた。多少理論展開に無理があるとは思うも
のの、96年当時にこういいきる鮎川誠はかっこよかった。

そして「ひょんなことで思い出した」きっかけは以下のブログだ。
とても共感した。

株式会社ヘッドストロング・ジャパン
北添 裕己さんのエントリーです。
http://blogs.itmedia.co.jp/torapapa/2007/09/reuse_creativit_a251.html

(抜粋ここから)
コンサルタントには創造力が求められる、とは思いますが、じゃあ単純に
Creativeに富んでいればそれが効率的かというと、必ずしもそうでもなく、
どっちかというと高い「再利用」能力があるかどうかの方が、はるかに戦
略コンサルタントとして大成できそうだし、実際、個人がCreativeをうたう
そのコンテンツ自体は、かなりの割合、いろんな過去の資産、他者から
得た知識・知恵の「再利用」で構成されていることが多いそうです。

「ReuseはCreativityに勝る」
Creativeだといわれる人は、その過去の秀作を上手にReuseする能力に
たけているのだと思います。
(抜粋ここまで)

鮎川誠のインタビューの真意とは少しずれるかもしれないが、彼自身の
楽曲の真意はまさに「最高のReuse」だ。
«前へ 次へ»