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2010年06月22日(火)更新

IABC2010トロント参加記(4)

2日目~3日目の主だった参加セッションのなかから、いくつかご紹介
します。


アイディアジャム
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これは2日目の朝1晩のセッションです。7~8名がひとつのテーブルを囲み
みんなで意見を交換するセッション。

私が参加したのは「エンプロイコミュニケーション」。

このワークショップはファシリテーターがIABCチェアのマークシューマンさん
だったのですが、進行がとてもユニークで上手でした。

20100611d
(持参したポメラが写っています。今回はメモは全てポメラでタイプインし
とても重宝しました)

「不況、業務縮小、などから尾を引いている社員のネガティブな感情をどのように
ポジティブに変えていくか?」というテーマでスタートしました。
まず最初に社員や担当者が持つ「感情値」を出しあいました。

「怖れ」、「阻害」、「怒り」、「不安」、雇用の不安定さや仕事に対する「認知
の欠如」など、いくつかのキーワードが出てきました。これをテーブルごとにひと
つだけテーマとして選びます。

次にこれから6ヶ月でそれをどうリカバーするか、みんなでプランを考えます。

最後にそのプランを実施するためのバリアの認識とそれを回避する方法を考
えます。

アクションプランは理想論ではなく、コミュニケーションのプロとして組織をファ
シリテートするための具体的なアイディアでなくてはなりません。また、ネット
ツールなどに頼らないこと!という制約もありました。

ポイントは、
「それを達成するために自分たちはどう変化するべきか認識して行動する」
というところにありました。理解と等身大の働きかけが必要なのです。
「俺がやってやる」的な視点だけではダメだということは、洋の東西を問わ
ないのですね。
このあたり、今求められている「リーダーシップ」のプロファイルとも近いものが
あるなと感じました。

自分から社内に出て行って話を聴いたり、組織の壁を越えた対話の機会を
どう作っていくか、上の立場の人の引っ張り出し方など、ヒントになる意見が
数多く出てきました。

ほんの1時間足らずでぽんぽんとアイディアをまとめるなんて、できるのだろう
かと思いましたが、非常に民主的に会話がまとまっていくのがとても面白かっ
たです。もちろん皆さん仕事も国籍もバラバラ。

20100611e

社内コミュニケーションの場合、仕組みを作ることよりも「どういう結果を見い
出すか」を明確に持つことが重要なのです。

簡単なワークショップでしたが、日本向けには多少アレンジが必要なものの、
ヒントが多く、企業向けのセミナーの機会などで自分もやってみようと思い
ました。
(どちらかの企業でご興味があればお手伝いいたしますよ)

2010年06月21日(月)更新

IABC2010トロント参加記(3)

本格的にコンファレンスが始まるのは2日目の月曜日です。
スタートは朝8時!これもこのコンファレンスのユニークなところかも
しれません。合計3日半で約80ものプログラムがあるのですから、し
ょうがないですね。本当に一日盛りだくさんです。

朝2本、午後2本のセッションは、以下のようなカテゴリーがあります。
1.プロのコミュニケーターとしてのスキル習得セッション
2.参加者で意見をぶつけるアイディアジャム
3.企業事例などのコンファレンスセッション
4.企業やコンサルファームのエキスパートによるパネルセッション
5.業界で有名、あるいは人気のパネリストによるオールスターセッシ
ョン

合計3日半で約80ものプログラムが同じ時間帯にいくつかのテーマで
実施されるので参加者はその中から自分の興味にあったテーマ、プレゼ
ンテーションを選びます。

20100611a

テーマには以下のようなものがあります。
1.チェンジマネジメント
2.コミュニケーションリーダーシップ
3.エンプロイコミュニケーション
4.グローバルトレンド
5.マーケティング&ブランド
6.パブリックリレーション
7.ストラテジー&カウンシル

その間にゲストスピーカーや会長による講演、スピーチ、表彰、各地域の
パーティーなどがあります。

20100611b

初めて参加した2年前のニューヨークはリーマンショック前ということもあった
のかもしれませんが参加者が2000人を超え、その盛り上がりはすごいも
のがありました。翻って昨年。多くの人にとって参加しやすいはずのサンフ
ランシスコでも参加者は1500人。やはり景気低迷の影響は否めませんで
した。今年の参加人数は前年並みでした。

今年は日本からは私を含めて4人が参加していますが、初参加の某企業の
コミュニケーションマネージャの方は

「広報コミュニケーションをテーマにして、いわゆるコンベンション(展示会)で
はない純粋な会議に、世界中(約30カ国)からこんなに沢山の人が集まる
というのに驚いた」

とおっしゃっていました。



確かに単なる勉強の機会として捉えるならば、参加費(海外の場合は少な
くない旅費も含む)はけっして小さいものではありません。

私が参加して常に感じることは、

「プロのコミュニケーターは経営視点、利益意識、活動持続性」

を常に意識しているということです。
すなわち、広報コミュニケーションの仕事が、会社にとって「コスト」ではなく
「プロフィット」になるべく働いているのでしょう。

やはり昨年から今年にかけて、大きなテーマは「エンゲージメント(関係構築)」。
そのひとつはソーシャルメディアの発達による社会や顧客あるいは社員との
「対話」、もうひとつはソ-シャルレスポンシビリティの視点です。

もちろんツイッターなどの新しいツールの話も出ますが、より永続的な観点か
らのコミュニケーション戦略について語られることがほとんどです。

2010年06月18日(金)更新

IABC2010トロント参加記(2)

IABCのグローバルコンファレンスはいつも日曜日の午後からスター
トします。しかしお昼に受付に行くとまだ人影はまばら。

これで本当に1500人も来ているのだろうかと少し心配になりま
すが、セッションが始まるとなんだかんだ、一部屋に数百人が集ま
ります。
toronto0610a

初日は主に初心者向けのスキルアップセミナーがあるのですが、勉
強熱心なベテランの顔も多く、ファシリテーターもすこしやりにく
そうな表情をするときがあります。

toronto0610a
2つのセッションをこなすと夕方にオープニングイベントがあります。
昨年はシスコのコミュニケーションマネージャー(バイスプレジデント)
の女性による、社内コミュニケーション革新の話でしたが、今年は
趣向を変え、ドラムカフェというパーカッションパフォーマンスチー
ムの演奏でした。

toronto0610d

彼らは会場に集まる参加者(1500人強)の人数分のジェンベ(ア
フリカの打楽器)を用意し、椅子においていたのです。すなわち彼ら
のパフォーマンスに合わせて聴衆が全員参加でリズムを作り出してい
く、体験型のパフォーマンスなのです。

1対1では臆してしまうでしょうが、1000を超える数の音、しか
もそれが会場でひとつにまとまると瞬時にすごいパワーを感じること
ができるのです。

toronto0610f

彼らのメッセージは「コミュニケーション」という一見とらえどころ
のない、評価しづらいものも、やりかた一つでわかりやすく、圧倒的
につたえることができる、というものです。

toronto0610g

景気の後退から少しリカバリーが見えたのか、全体的に昨年のサンフ
ランシスコよりも参加者の元気を感じますが、それを後押ししてくれ
るような、勇気の沸く、すばらしいオープニングでした。本当にIABC
はコンファレンスの企画設計がクリエイティブだと感心します。

toronto0610h

チェアマンのマークシューマンさんはさすがに香港のときよりも堂々と
していました。「ちょっとしたことでもみんながすぐひとつになれるこ
とができることを忘れてはいけない」という力強いメッセージを語って
くれました。

本来であればこの後はレセプションパーティーが開かれたのですが、
同行スタッフが体調を崩し、日本チームで軽めの夕食を取り、明日か
らのハードなセッションに備え、早めにホテルに戻りました。

2010年06月18日(金)更新

IABC2010トロント参加記(1)

先週いっぱい、カナダのトロントに行っていました。

IABC(International Association of Business Communicators)
アニュアルコンファレンスで、参加するのはニューヨーク、サンフ
ランシスコに続き3回目です。

カナダに来るのは5年ぶり。前回は仕事のついでにバンクーバーに
住むガラス工芸アーティストに会いに行ったのですが、トロントは
バンクーバーにひけをとらない美しい町でした。

テキサスのダラスのような、ひたすら地平、というところも好きで
すがやはりウォーターフロントの街はなんとなくほっとしますね。
仕事なのでできるだけ疲れたくはないと思うものの旅費の軽減で米
国トランジットの飛行機を取りました。やはり米国入国審査はとて
も厳しく、乗り継ぎはぎりぎりで少しヒヤッとしました。

今回のデトロイトもそうですがアメリカのハブ空港の大きさは尋常で
はなく、さりとて走ると周りの人がパニックになると聞くのでなんだか
競歩しているような感じでした。
比較するとトロントの入国はあっけなく、拍子抜けするようなものでし
た。

ホテル送迎の乗り合いバスで20分ちょっとですから空港と都市の
距離を考えるとトロントは利便性の高い都市だという事がわかります。
(SFは電車で30分、)
成田は都心まで70キロ以上ありますから1時間半。
厳しいものがありますね。

torontobus

いつものことですが会場になるのはヒルトンやシェラトン。
会員価格だとは言えそれでも高いので2ブロックほど離れた安めの
ホテルを取りました。
アメリカにしては小さめのワンルームですがバスタブはあるし、ベ
ッドも大きいので十分です。
なによりここはモダンデザインで室内が木のフローリング、湖が近
いせいとフロアが6階で窓が開けられることであまり激しく乾燥し
ないので居心地が良く助かりました。

strascona

トロントはとてもわかりやすい町でほとんどの通りが縦横のグリッ
ドになっており、センターから10ブロック(徒歩20分)圏内で
ある程度まとまっているので時間があれば歩いても周れる感じです。

torontosky

ちょうど会場のホテルの東がショッピングモール、西側のストリー
トが個性的な店やブティックなどが並ぶエリア、その上が中華街、
イタリア街。まるでニューヨークのようですがあれほど高層ビルが
いっぱいあるわけではないので見通しや日当たりはよさそうです。

到着が夕方なので初日はホテルの周りを散策して終了。

toronto0609night

2010年06月15日(火)更新

Time Magazine 6/14 ワールドカップの一方、アフリカの妊産婦の現

先週、IABCのアニュアル・コンファレンスで、一週間カナダのトロントに
行っていました。
レポートはまとめて数日後に書きます。

さていよいよワールドカップが始まりました。
オープニングゲームの南アフリカ対メキシコはちょうどトロントの空港
で出発待ちをしているときに見られました。

帰国後は時差ぼけが幸いしてか、夜中のゲームは以上に集中して
見られます。(日中の午後にツケがくるのですが)

トロントで書店に寄ったとき、手に取った「Time Magazine」。
もちろん特集はワールドカップ。
しかしページをめくっていくと、そこに驚愕のフォトレポートがあったの
です。

それは、アフリカの妊産婦の置かれている現状。
十分な設備がないまま出産をすることで命を落とす母親が少なくない
というもので、たまたまなのでしょうがその一部始終を写真取材してい
るものです。
命を育むことに現代でもそんなにリスクがあるというのは信じられませ
ん。
帰国してタイムマガジンのウェブサイトに、そのフォトレポートがアップさ
れているのを発見しました。

sierraleone


英語のナレーションは簡単に要約してみました。
ご参照までに。

==========================================================
アフリカ、大西洋岸に位置するシエナレオネ共和国での、妊産婦死亡の
現状のフォトドキュメンタリー


概要

シエナレオネ共和国は妊産婦の死亡率が世界で最も高い国のひとつです。

8月、ジャーナリストが立ち寄った国内最大規模の病院で、ちょうど出産した
女性に出会いました。ところがその女性は、その直後に大量出血を起こしま
した。

ドクターやナースたちが必死の処置を施しますが、間に合わず、女性は生ま
れたばかりの娘がお腹をすかして泣いているすぐ横で亡くなりました。

実はこの病院には医療物資が常備されていません。
そのため親族が輸血用の血液を提供し、点滴用の薬から綿棒といった物ま
で手に入れなければなりません。

生まれたばかりの赤ちゃんは、同じように母親を出産でなくした多くの子ども
たちのように、写真でしかその姿を見ることが出来ず、周囲から話をしてもら
うことでしか、母親の面影を知ることはもうありません。

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この状況を少しでも改善しようと働きかけているNGOが日本に存在します。

国際協力NGO ジョイセフ (財団法人 家族計画国際協力財団)
http://www.joicfp.or.jp/jp/


海外支援のNGOは沢山ありますが、日本発、しかも40年続けている団体
というのは稀有だと思います。

伺った話です。
日本も戦前は妊産婦死亡率が高く、お産にもかなりリスクが生じていたそう
です。
そこでジョイセフの創設者であった國井長次郎さんが戦後、民間団体の活動
の中で検便による回虫や鉤虫などの寄生虫駆除から公衆衛生、予防医学、
家族計画および母子保健の普及に努め、戦後復興から高度成長を支えた日
本人の健康改善に大きく寄与したのだそうです。
結果、日本は世界一安全にお産ができる国(妊産婦死亡率が最低)となった
のだそうです。
ジョイセフはその活動を基盤に国際協力という形で日本を代表し、海外に活動
拠点を広げています。

仕事を通じてこの団体の広報に関わらせていただきました。
ウェブサイトをぜひ見てください。
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