大きくする 標準 小さくする
前ページ 次ページ

2010年12月01日(水)更新

日経パソコンが恒例の「企業サイトランキング2010」を見送ったワケ

セミナーでもよくいただく質問のひとつに「日経パソコンの企業サイトランキング」があります。
「昨年に比べて順位がはなはだしく落ちたことで上司から叱責された」
「競合企業に対してどのような対応をすれば挽回できるのか?」

もちろん企業サイトはステークホルダー(お客様)との関係構築を図るコミュニケーションを行うものですので、ランキングを競うことだけが全てではありません。

しかし長年ウェブを見ていると、このようなサイト評価はいくつか現れては消えており、3年以上継続してやられているのはほんの一握りです(企業サイト、IR、ブランドなど)。

日経パソコンのランキングの面白いところは時代の要請によって2年程度できちんと評価指標の内容を変更しているところです。そういう意味では指標が変化した年と前年をそのまま比較するのは多少無理があるのかもしれません。
通年、秋口になると発表されるこのランキングが、今年は発表されないので不思議に思い、ネットに詳しい友人に聞いて廻っていたのですが、なかなか的を得た回答がもらえず、ならば、ということで直接編集部の方に問い合わせをしてみました。

お返事はものの数時間でいただけました。さすが!
どうもありがとうございました。

以下、簡単にまとめてみました。
*********************
2010年8月に、Webページのアクセシビリティ対策の基準である「JIS 8341-3」が改定になり、企業サイトが順守すべき基準が改定になりました。今後、多くの企業が新規格(JIS8341-3:2010)への対応を進めるものと思われます。

2010年の春から夏にかけては、以下の企業が混在している状況でした。
(1)いち早く新JISに対応すべく、新JISの原案を基にサイト見直しを
   進めていた企業
(2)新JISの公表を待って、サイト見直しに着手した企業
(3)新JISへの対応を、当面は想定していない企業

こうした時期に企業サイトランキングの調査を実施すると、調査期間中にサイトが大きく変わる企業が多く出てしまいます。また、新JISの内容が原案から変わる可能性があったため、通常のように春から夏にかけて調査を実施すると調査基準と新JISの内容が大きくかい離する危険性がありました。こうしたことから、2010年は企業サイトランキング調査の実施を見送りました。

現在、新JISの内容を盛り込んだ新しい企業サイトランキング調査を実施できないか編集部で検討中です。この結果を踏まえて、2011年以降の調査について方針を決めたいと考えています。
どうかご理解いただきますようお願い申し上げます。

今後とも「日経パソコン」ならびに、弊社の刊行物をどうぞよろしくお願い申し上げます。

日経BP社
*********************

なるほどです!

この「JIS X 8341-3:2010」については、ウェブアクセシビリティ基盤委員会のサイトにも詳しい解説がでています。

2010 ウェブアクセシビリティ基盤委員会
http://www.ciaj.or.jp/access/web/docs/jis2010/

また、富士通が用意する「WebInspector(ウェブインスペクター)」(ウェブサイトのアクセシビリティを診断するソフトウェア)のウェブサイトにも対応についてのQAが掲載されています。

http://jp.fujitsu.com/about/design/ud/assistance/webinspector/

ご参照ください。

2010年08月13日(金)更新

グローバルコミュニケーションのヒント

ここのところ、私が関わっているIABC( International Association of
Business Communicators )
の本部とのあいだでほぼ毎日英語で
メールのやり取りをしています。

外資系のサラリーマンだったころは日常でしたが、離れるとやはり英語
力は落ちるものです。
日々のやり取りの中で生の英語に触れるのはリハビリには一番ですね。
今対応してくれている米国本部の女性はとてもスマートな方で、積極的
に活動する人に対し、倍返しで働くような方です。
私や私のスタッフの問い合わせに答えるだけでなく、この人に伝えると
メリットがあるかな?と思うとあっという間にメールを転送してします。
その結果、コネクションやネットワークが広がり、たくさんのヒントや解決
方法をいただくことができます。

手前味噌ですが、まさに「プロフェッショナル・コミュニケーター」の団体
です。

彼女とのメールのやり取りで気がついたことがあります。

それは人を紹介するときに性別がわかるように「Mr」や「Ms」などをきち
んとつけてくれるのです。

ちょっとしたことかも知れませんが、日本人やアジア系など、非英語圏
の名前は、文字だけでは性別がわかりにくいものです。

ちょっとした気遣いですが、実際に会う機会も多い団体だけに、「あなた
男性だったのね!」とびっくりされないためにも、とてもありがたく感じま
す。

2010年06月28日(月)更新

英語じゃなくて「グロービッシュ(Globish)」

ニューズウィーク日本版6月30日号の特集が面白い!

「グロービッシュ」とは「グローバル化に適応した簡易型英語」のことです。
すなわち、英語を母国語としない人口が急速に増えていく中で、お互いに
伝わりやすい、平易な表現を生み出した、というのです。

”かつて正当なイギリス英語から「より民主的な」アメリカ英語に移行し、
今度は世界の誰もが使える新しい道具になるだろう”


nw0630

わたしにも経験があります。

かつて働いていた外資系企業のプロジェクトでテキサスに滞在していたと
き、アメリカ人のマーケティングマネージャー以外、南米出身のエンジニア、
ヨーロッパのマーケティングマネージャはフランス人、品質管理は中南米、
製造担当は台湾人、デザイナーは日本人、という国際色豊かな会議でし
た。
お互いブロークンですが英語で議論は白熱し、そしてひとつの結論を得ま
した。

みんなで握手をして会議室をあとにしたあと、廊下でアメリカ人のマーケテ
ィングマネージャに呼び止められました。

「カズ、お前は今の会議にハッピーか?どうやらオレひとりだけがきちんと
理解してなかったようだ。わるいけど後で簡単に議事のサマリーを作って
メールで俺に送ってくれないか?」

といわれたのです。

私たちにしてみるとグロービッシュそのものは特別な「英語」ではなく、
「出来ることをやってみた」結果であり、それが母国語で英語を使う人に
「これはわたしたちの言語とは違う世界の共用語だ」と気づいた、という
ことなのでしょう。

国際的なニュースに対するツイッターやユーチューブ上でのコメントは、み
な、わかりやすい平易なものです。

もうひとつ、英語のブラッシュアップをせねば!と考えていた自分にとって
も、少し肩の荷が下りるとともに、これでいいのだという自信(笑)にもつな
がりました。

これもネット化によって加速した文化の変化だと思います。
ぜひ読んでみてください。

2010年01月22日(金)更新

ググレカス

仕事柄、検索エンジンを使わない日はありません。
最近はiPhoneを持ち歩いているので、いつでもどこでも気がつけば
すぐ「検索」で確かめます。

ウェブはある意味集合知ですから検索結果をいくつか見比べてみ
れば事の真偽や意見の方向性なども見えてきます。

しかし大事なことはそれらを鵜呑みにせず、「自分の判断」を持つこ
とです。
ましては最近では検索のみならずツイッターなどでは知人や友人、
気になる人の意見や考えがどんどん流れてきますから黙っていても
「ほう」とか「へー」を連発してしまいますよね。対それに流されないよ
うにしないとノイズメーカーと呼ばれてしまいます。
実はこれは自省をこめて書いているのですが、ネットにずいぶん助け
てもらっていますが、もちろん失敗も沢山しています。

失敗することは、それを反省し、次につなげらるように咀嚼できれば
問題はないのですが、振り返ってみると自分の場合、失敗のほとん
どは上記のように「自分の判断」を持たなかった場合のような気がし
ます。

さて。
数年前に近所で表題の「ググレカス」と書かれたTシャツを着ている
女性を見かけ、「ナンだろう?」とおもって検索したのです。

gugurekasu


これはインターネットの掲示板などで、自分でろくに検索もせずに
他人にいろいろ質問してくるユーザに対し、「まずは自分で検索エン
ジン(グーグルなど)で調べろ、このカス野郎(失礼)」という意味なの
だそうです。

確かにその通りなんですが、ググれば済む問題でもない気がします。
きっと、
「情報は出すところに集まる」のセオリーから言えば、「質問の仕方」
にコツがあるのでしょう。

たとえば「それってどういう意味?」と聞くのではなく、「こういう問題
について調べるとおおよそこういう見解が得られるんだけど、私はこう
考える。あなたはどう思う?」というような具合です。

もちろん興味の範疇にない人に質問しては失礼ですが、うまく興味が
合えばお互いに得られるものがあるのではないでしょうか。

昨日の続きですが、なかなか活性化しない企業を尻目に掲示板や
コミュニティは熱いコンテキストの共有が存在しており、
「○○ってどうよ」
のひと言で多くの意見が集まっています。

コミュニティの住人が「ググレカス」というのは排他的だからではなく、
お互いを尊重し合い、築き上げたコンテキストを高め、維持するため
にも質問力をつけろ、と説いているからかもしれません。

2010年01月21日(木)更新

NEC 社長と部長直接対話

本日の日経産業新聞に目立たないけど面白い記事が出ていました。

NECの矢野社長が、NEC本体の部長職にある方の約7割と一部のグ
ループ企業の部長職の方の一部、あわせて約1500人の方と直接
対話を行う、という内容です。

1回に150人ずつ、仕事や会社に関する質疑に答えながら現場の
リーダーである部長たちと問題意識の共有を行い、社内の活性化に
つなげる、というものです。

情報通信の最先端企業でもあるNECさんでさえ、今この時代にこの
ようにアナログな取り組みを行うというのは非常に印象的です。
(もちろん賞賛の意味で、です)
今の時代ですから、情報流通、共有ならナレッジシェアリングツールや
イントラネットで効率的に、と考えがちです。もちろんNECさんでも、
そのようなツールは活用しているでしょう。そんななか、NECの矢野社
長がこういうアクションを取る意義を考えてみました。

それはコミュニケーションの多様性です。
電子的なツールを使ったコミュニケーションは「行間」や「間合い」、
「顔色」や「ニュアンス」が伝わりにくいものです。
2チャンネルや携帯メール、ツイッターなども顔文字や独特の表現、
独自のマナーなどを織り込みながらある意味生き生きとした文化を
形成してきた(してきている)と思います。

ビジネスの現場で使うツール(イントラネットやナレッジシェアツール)
ではそういうコンテキストを加味しにくいことから、「どこまで話せばよ
いか、開示すればよいか、その間合いがつかめないからどうしても
情報開示や共有を臆してしまう」という意見が少なくないのです。

そういう意味でも、まずはアナログに会ってみる、というのは価値が
あると思います。(きっとアナログだけで終わらせないでしょうから)
その上でツールを使うことになるでしょうから、そこで共有された間
合い、コンテキストは急激に社内に伝播するでしょう。きっと近い将来、
NECさんのビジネスに(良い意味で)変化がおきると思います。

近年私が見聞きしたコミュニケーション先進企業の多くは、このよ
うなアナログな機会を生産性の高いデジタルツールに組み込むこと
に長けています。

たとえば紙媒体やカードなど、どこでも持ち運べる、目に付くマテリア
ルでスローガンやメッセージ、問いかけをデリバリー(可視化)し、
質問や意見を聞き入れる対応窓口を設ける。そこで起きたトランザクシ
ョンを逐次ネットツールで開示していく、というようなものです。
成功している会社は無理な情報管理や監査、コントールは行わず、まず
聞き入れること、細やかに対応することに集中しています。
そこで信頼形成を行うことで活性化が進むと信じているからです。

さらにコミュニケーションに関わる組織が機能している企業はこのしくみ
を持って外(顧客、株主、社会)と内(社員や内部関与者)とをつなぐ
役割を担っています。この段において、広報やコミュニケーション担当者
の役割がかなり変化してきていることがわかると思います。

振り返って今回のNECさんの記事は見た目には地味なもので(失礼)
広報として一般的にメディアリレーションを行っている立場からすると
よく記事になったな、という印象は否めないかもしれません。逆にみれ
ば、それほどコミュニケーションの問題は深い課題として多くの企業、
特にトップの念頭にあるという証左だと思います。

小さな記事の中に、大きな変化の兆しが見えたような気がしました。
«前へ 次へ»