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2006年08月15日(火)更新

谷岡ヤスジは日本のマチスか?

知人に超有名なまんが家の先生がいます。
彼は高校出てすぐにプロデビュー、すでに四半世紀、第1線にいます。
色々な時期を乗り越えたにせよ、変わらずに活躍していることはすごい
ことです。

今日の話はこの方とは違うのですが、私たちの世代(40代半ば)だと、
小学生の時代に一大ショックを与えた漫画家がいます。

谷岡ヤスジさんです。
約7年前に急逝されたときは残念でたまりませんでした。ちょうど80年代
後半に、彼の旧作が世の中から消えた時期があったので、そのころセコ
セコ集めていた自分としては、亡くなってから、また作品を目にするように
なったのは本当に皮肉なものでした。
小学校時代の彼の登場感は、まさにセックスピストルズよりも10年早い
パンクそのもので、みごとに少年漫画の既成概念をぶち壊すパワーに
満ち溢れていました。

しかし、私自身が「谷岡さんは本当にすごい!」と実感したのはちょうど
私が美大に通っている頃に、偶然夜中に見たイレブンピーエム(11PM)
という番組でした。スタジオいっぱいに敷き詰められた大きな紙に、2
メートル近い大きな筆でムジ鳥を描く、というものでした。
俯瞰で見ていないのに、ほとんど一筆書きで一切パースの狂いのない
ムジ鳥を描くや、最後にバケツに残った墨汁を鼻のあたりからぶちまけ、
「鼻血ブーッ」。

一昨年だったか、近所の川崎市市民ミュージアムで大掛かりな回顧展が
あり、数多くの原画やスケジュール帖、スケッチなどを見ることが出来まし
た。
あまりにもパンクなアウトプットとは裏腹に、大変几帳面なスケジュール管
理や繊細なスケッチなどを見るにつけ、またまた「なるほど」と感動したも
のです。

描写そのものよりも、線の勢いがストーリーを作る、といった感じです。

その、

「一見テキトーに描いているようでいて計算しつくされている」

という素描は、マチスのクロッキーをほうふつとさせるものがありました。

「まねできそうなんだけど、絶対に出来ない」

ゆるぎないもの。

そうおもうとまた、いとおしく遺作を手に取りたくなってしまいます。
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