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2007年09月26日(水)更新

働く日常をブランド化

自宅のマンションは20年ぐらい前に立てられたものだが、有線が
入っていて、自宅作業をするときなどテレビを消していろいろなB
GMが聴けるので重宝していた。。
それが時代の波でとうとう光ファイバーとケーブルテレビに変更す
るということになった。有線と引き換えということで基本的に無料な
のだが少し残念だった。
あまりテレビばかり見ているわけではないが、ならば、ということで
いっぱいあるチャンネルを一巡り色々見てみた。
結局、面白いな、とおもうのは自然科学系でディスカバリーチャン
ネルとナショナルジオグラフィックぐらいだ。
特にディスカバリーチャンネルは面白く、そのなかでも、ニューヨー
クのオレンジカウンティーにあるカスタムバイクショップの日常を描
いた「アメリカンチョッパーズ」が秀逸だ。
例えば、インテルが新製品のコアが4つある製品(クワッドコア)の
プロモーションのために4つのシリンダーを持つバイクを作って欲し
いとオーダーする。その製作過程をドキュメントしているのだが、
「こんな創り方でいいの?」というほどあっけにとられるような行程
で話は進む。試行錯誤はするものの、長い経験に裏付けられた創造に
よって形と機能が修練されていく。
チョッパーメーカーといってもオールドファッションなつくりではなく、
インテルのオーダーに応えるべくPCを実装していて、右手のグリッ
プのところにある指紋認証パッドがスターターキーの代わりになっ
ている。(事前に登録した人しかエンジンがかけられない)
これなど、日本メーカーのお株を奪うようなハイテクだ。

結果的には「迫力」とか「挑戦」が感じられる「作品」が創られていく。
マスプロダクションの、いわゆるメーカーとは違うが、「世界に一台」
を創るクリエイティビティの現場はそれだけで魅力的だ。

彼らはその働く日常をドキュメンタリーで売ることでも効果的に自社
をブランド化している。会社を興したお父さんを中心に二人のキャラ
クターが違う息子たち、そして一緒に働く仲間たちのそれぞれが強
烈な個性を振りまき、とても魅力的だ。

http://japan.discovery.com/series/index.php?sid=640

http://www.orangecountychoppers.com/occ/index.html

創造的な仕事・経営をするものにとって、プロジェクト以外にこのよう
な形でブランド化・売り上げを創出していくというのもひとつの形かも
しれない。

家内はOCCのファンになってしまい、Webサイトのオンラインショッ
プでTシャツを買いそうな勢いだ。

intel bikeocc choppers

2007年09月21日(金)更新

偶然の一致?発想の貧困?

先日ソニーから次世代音楽ツール「Rolly」が発表になった。
鳴り物入りのプロモーションで、当初はデザインを見せず、いわゆる
「ティーザー」で期待値を煽った。

はたして発表されたデザインは、ラグビーボール上の小さなプレイヤー
で、音楽とともに光り、踊るのだという。
別にiPODに対抗意識を燃やしているわけではないだろうが、SONY
なりの新しい価値観、新しいライフスタイルを提案すべくデザインされ
たようだ。

http://www.sony.jp/products/Consumer/rolly/


オープニングムービーになんのひねりも無く、意味を感じない。
これは悪い予感を想起させるに十分な演出だ。

そして先日ソニービルで製品を見てきた。

一目見たとき、「これはいらないなあ」と思った。

二目には、「ひょっとしたら、これはとんでもないあだ花になるかもしれ
ないので買っておこうか」という変なスケベ根性が頭をもたげた。

しかし、どうにも腑に落ちない、引っかかるものがあって後日ネットで調
べていたら、自分の疑念の元にあったのはこれ(↓)だった。

http://miuro.com/

厳密に言えば大きさも機能も違うし、完全なパクリとはいえないだろうけ
ど動きやコンセプトは似ている気がする。
また、この商品とて日本人の生活観に合うか?といえばあだ花かもしれ
ないけれど、私自身がソニーのデザインディレクターで、このようなもの
が先行して市場にあったら、基本コンセプトから白紙に戻してやり直しす
ると思う。

皆さんは色々違う印象を持つかもしれないが、調べてみるとすでにいくつ
かのブログではこの偶然の一致が話題になり始めているようだ。

やはりありえないなあ。。。ローリー。買っておこうかな(自虐的)。

2007年09月15日(土)更新

価値の創造

今のっているヨーロピアンワゴンのディーラーから、クーペの新型車と今のっている車種のマイナーチェンジのお知らせが来た。
行けばミニカーがもらえるという事もあり、子連れで見に行って来た。
北欧=インテリアというのは短絡的だが、さりげなくアルネ・ヤコブセンがデザインしたアントチェアをカタログに置いているのだが、その理由はセンターコンソールとドアパネルの肘置のところにその椅子と同じようなプライウッド(積層合板)の本物の木が使われているのだ。

集積合板とはいえ、曲げ加工が入っているし目も違うから、手間もかかるし歩留まりも良くないだろう。そんな高級車でもないのに本物の木が使われている事にちょっと感動した。
よくやるなあ、と思いつつ、5年前にある日本の自動車メーカーに取材に行った事を思い出した。
volvo
約5年前だが、セダンの再建をかけて企画された新車で、テーマは「インテリア」だった。
担当したデザイナーもベテランで、コストや条件の厳しい中でコンセプトをまとめる苦労話はとても共感する事が多く、面白かったのだが、最後の一言が辛かった。
それは、
「今回はインテリアがテーマなのでシートのみならずパネルも家具調で”木目”も新たにパターンを起こしてかなりこだわった」
というものだ。
それが「プラスチックの成形パネルに木目の転写シートを貼付けたもの」という事はわかるが、恥じらいもなく誇らしげに語るところに一抹の寂しさを感じたのだ。

全体のコストの厳しさはわかるが、結局のところコンセプトの具現化は均質的なところでとどまり、細かいところに気が届く反面、貧乏くささを払拭できない。それが多くの日本車の「所有する楽しさ」のものたりなさに通じるのではないか。
ヨーロッパ車など、シートやドアパネルのつくりが安っぽく、エンジンのうなりも乱暴だったりするのだが、一点突破的な良さがどこかにあると愛着につながるから不思議だ。
日本に入ってくる外車は大体トップグレードのものばかりだが、ヨーロッパのレンタカーのサンクやパンダは笑っちゃうぐらい何もついていなくて、却って「走らせてやる」という気になる。

バランスしないところから生じる意外性を尊重したり、そこから価値の創造をみる事が、私達は弱い。

2007年09月12日(水)更新

オフィス椅子の変遷:その2

頑張って最高級のオフィスチェアを買ったわたしだが、なぜこの
椅子に座らなくなったかというと、それは腰痛対策で、この椅子
が原因というわけではないのだが、そもそも座り仕事が続くと
ぎっくり腰を誘発しやすくなってしまっていたのだ。
その対策の意味もあって、3年前からバランスボールにすわって
仕事をするようになった。
これは画期的だった。長年の腰痛がぴったり治まっただけでなく
内臓脂肪も減った(ような気がする・当人比・笑)。
都合、ボールには2年座り、ボールの破裂とともに昨年卒業した。

ball

現在は、これまたデザイナーズチェアなのだが、ストッケのバラ
ンス・バリアブルという木製の椅子だ。
基本的には背もたれが無く、背骨が立つタイプなので、バランス
ボールとほぼ同じ効果が得られる。
http://www.scandex.co.jp/stokke/products/variable_index.html

そんなわけで現在の弊社のスタッフはケヴィに座ったり、バランス
ボールに座ったり、モダスに座ったりと様々なのだが、ここにきて
新人が増えたので、きちっとそろいの椅子にしよう、と考えた。

久しぶりにオフィスチェアを扱うオンラインショップを覗くと、現在は
椅子も中国生産が多く、安いものでは1万円を切る値段で流行の
デザインのメッシュチェアが買える。
きっと機能的にも遜色は無いのだとは思うのだけど、耐久性や安
全性についてはなんともいえず、やはりなかなか買う気がしない。
しかしまともなメーカーのオフィスチェアだと定価は10万円以上の
ものばかりだ。
そこで以前から利用しているのが「オフィス中古家具屋」さんだ。

今回も色々と検討したのだが、あるお店でスチールケースの「Think」
という、最新鋭のデザイナーズチェアが6脚そろいであり、定価の
30%ぐらいの値段で購入することが出来た。これはラッキーだった。
しかも使用感がほとんど無く、とてもキレイだった。
ネットで調べても新品では2割引程度しか値崩れないものだけに激安だ。

http://www.interior.ne.jp/Steelcase/think/

実はこの椅子は、ひそかににあこがれていた椅子だった。
オフィス用のデザイナーズ(オフィス)チェアとして一番人気のある
のは、相変わらずハーマンミラーのアーロンなのかもしれないが、
アーロンは、わたしにはバネが強すぎるのと、椅子自体が重く感
じてどうしても好きになれなかったのだ。
「Think」はとても軽く、体を自由な感じで支えてくれる感じなのだ。

まあ、ウンチク語っても実際に座るのはスタッフの皆さんなので、
「あ、そんなの関係ない」といわれてしまえばそれまで。。。

2007年09月11日(火)更新

オフィス椅子の変遷:その1

25年も仕事をしていると、つくづく色々な椅子に座ってきたなあ
と思う。振り返ってみるとそれなりに有名なデザイナーの椅子に
数多くすわっていることに気づいた。。
オフィスチェアは遊びのない、人間工学の粋を集めた世界なの
でデザイナーにとっても、とてもハードルの高いものだ。また、一
度デザインすると軽く10年以上は作り続ける(供給する)事にな
るので、それだけの完成度を要求される。
最初に勤めた会社では、職場がデザインルームと言うこともあり、
ひとりひとりがドラフター(製図台)(当時はマックはなく、マーカ
ーやパステルでスケッチを描き、トレーシングペーパーで図面を
書いていた)がデスクの代わりで、製図用具はジョーコロンボが
デザインしたボビーワゴン、椅子はヨーンラスムセンがデザイン
したケヴィチェアだった。

http://www.kanshin.com/keyword/269780
http://www.rigna.com/item_pics/img440c29367da91.jpg

ケヴィはシンプルだが驚くほど頑丈で、座面の高さをかなり低く
できることから、子供でも使える利点がある。

働き始めて3年目ぐらいに、自宅の作業用に買ったケヴィチェア
が今も手元にあるが、まだしっかりしている。

その後、この会社で広報に移ったとき座っていたのはマリオ
ベリーニがデザインしたヴィトラのフィギュラ・チェアだった。

独立した当初の事務所は先輩が使っていた事務所の部屋を家
具つきのまま居ぬきで譲り受けたもので、机は作り付けのオリ
ジナル、椅子はあまり高級なものではなかった。
しかし、独立するとなると、事務所費用だけでなくスタートアップ
に色々と金がかかることを思えばどれだけ助かったことか、感謝
に耐えない。
当初は前出のケヴィチェアで仕事をしていたのだがそこにひとり
で篭って1年、何とか仕事が軌道に乗ったことを自分なりに形に
したかった、ということもあり買ったのがウィルクハーンのモダス。
この椅子はすばらしく、いまだに私には手に余る感じがしている。
http://www.wilkhahn.co.jp/products/working/modus/pop_vp_19.html

しかし現在、この椅子に座らなくなって3年がたつ。
(続く)
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