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2009年10月21日(水)更新

嬉しいような悲しいお話

今年前半はビジネスにおいては本当に辛い時期でした。
弊社にとっても多くのお客さまから仕事の延期や中断を余儀なくされ、
事務所の縮小を行わざるを得ない状況でした。

やっと夏前から少しずつ復調の兆しが見えてきたというところでしょうか。
それでもまだ、何とかビジネスを続けさせてもらえているだけでも幸せ
なのかも知れません。

「まだ綱渡りだよ」

というと、友人には

「いやいや、綱の上にいられるだけ、まだマシなほうだよ」

と返されました。

事実、私の事務所があるのは青山の骨董通りの裏手なのですが、骨董
通り近辺は、夏ごろから路面店(ブティック、レストラン、美容室、ギャラリ
ー)の撤退がいまだに続いています。
また、オフィスビルやマンションにも小さな事務所が多く入っているのです
が歩きながら少し顔を上げると、これもまた確実に空き部屋が増えている
状況です。
話は変わりますが、実は近所に私にとってのオアシスがあるのです。
(本当はあまり教えたくないのですが・笑)
いわゆる美術書やデザイン関係の書籍、雑誌を中心に扱う「オヨヨ書林」
という古本屋さんです。
http://oyoyoshorin.shop-pro.jp/

昨年、根津から青山に移ってきました。

最近ここを覗いたら、すごいことになっていました。
と、いうのも、あまり見かけないような貴重なデザイン関係の書籍が床から
幾山も平積みになっているのです。

帰りがけに立ち寄って、おもわず何冊か取りおきをお願いしてしまいました。
しかも値段も安かったので驚きです。

これは推測の域ですが、残念ながら事務所の整理や移転を行った近所の
デザインオフィスから大量に出たものではないかと思います。
その事実を思えば、ちょっと悲しい話ですが、勝手に志を引き継ぐつもりで
引き取る決意(笑)をし、久しぶりにまとまった資料を買い込みました。
普段は夜中に海外のオークションなどで探っていたような資料(本)が手ご
ろな価格で買えたのはラッキーでした。

2009年07月28日(火)更新

ラッキーをつかみ取る技術

実はこのタイトルのエントリーを書くのは2回目です。

これは友人の小杉俊哉さんが4年近く前に書かれた新書のタイトルで、
以前のエントリーはもう丸3年前になります。

なぜ、今一度このエントリーを書くかというと、昨日小杉さんからこの本
が中国語に翻訳され、中国で発売されるというお知らせをいただいたか
らです。
すごい!どれだけのビジネス書が中国語に翻訳されて発売されている
のかは詳しく知りませんが、それだけこの内容に共感する方が彼の地
でもいるということなのでしょう。

小杉さんは人事、キャリアデベロップメントの世界では高名な方ですが
いくつも面白い本を書かれていて、特にここ数年は「ラッキーをつかみ
取る技術」以外にも、「好きにやっても評価される人、我慢しても評価さ
れない人」
「組織に頼らず生きる―人生を切り拓く7つのキーワード」
など、変動期におけるビジネスパーソンの心構えの本質を突いた快作
が目立ちます。
仕事柄、お会いする多くの企業広報担当者やWeb管理者の方は組織
内で孤立し、悩んでいます。

「企業でコミュニケーションに関わる仕事しながらどのようなキャリアパス
を作っていけばよいのか?」、「そもそも日本の企業社会では認知もほと
んどないような職務でそうやって仕事をしていけばよいのか?」

私自身の今の仕事は私自身が企業人だったときの経験に基づいていま
すが、常に小杉さんの考えに共感するのは、以下のような観点が大きい
のです。

すなわち、

「仕事で関わる多くの人(経営者、上司、同僚、部下、顧客、サプライヤ、
パートナーなど)の気持ちをどれだけ理解できるか。まずそれを相手に
表すこと。するとその延長線上に相手の理解や共感、信頼が芽生える。
キャリアを形成するきっかけとなる”評価される仕事”とは、そのようにし
て作られる」

というものです。

まさに「Give First」。そしてそこにラッキーの要素が振り込まれるのかも
しれません。

ちなみに、この本には小杉さんの数多くの素敵なお友達に混ざって、私
もエピソードとして登場させていただいています。

伺うと、私の名前は感じでそのままですが、弊社の社名、「クロスメディア・
コミュニケーションズ」は「是網路顧問公司
」と訳されるのだそうです。

もちろん読めませんが機会があればぜひ中国語版も手にとって見たいと
思います。

皆さんには、もちろん日本語版のほうをオススメします

lucky07

2009年05月08日(金)更新

「ウェブはバカと暇人のもの」 (光文社新書) 中川淳一郎 著

ひとつの流れが行きすぎると、それを省みる視点が必ず出てくるようです。
この本の著者はややラジカルに

「ネットはもう進化しないし、あなたの人生を変えないから」

と痛快に言い放っていますが、決して外野からの批判ではなく、どっぷりネ
ットにつかり、いまなお「何よりもネットが大好きである」とし、Web2.0に代表
されるような「可能性」を冷静に評しています。

この手の本は、アマゾンの書評などを見ても読む人の立場や捉え方で2分
するものですが、大半の方が賛同している所を見ると、捉える側も同じよう
に感じるようになっているのかと思います。
私自身は主に、内部告発に端を発し急速に風評が広まるような現代の企業
広報が、それらとどう対峙していくべきか、という見方で興味深く読みました。
冷静な判断力を持つ余裕が得られました。
また、危機管理的な見方だけではなく、

「次から次へと技術革新がおき、あれも出来る、これも出来る、と言われて
いるが本当に自社がやるべきことは何なのか」

と悩まれている企業の方にも、一度自社のスタンスで客観的に振り返るチャ
ンスを与えてくれる本だと思います。

結論として、今日、企業がオンラインコミュニケーションの可能性を見だすた
めには、

その会社にしか伝えられないこと。
その会社にしか感じられない気づき。
それらをどう伝えるか。

そこまで行き着かないと、良くも悪くも情報過多の現代にあっては企業の情
報など高速に見た人の記憶から消されてしまうといえます。
言い換えるなら、

「目的に拘泥した丁寧な落とし込み」

「感動」とまでは言いませんが、「共感」レベルまで落とし込む努力が最低必
要なのでしょう。

そうやって見返すと手近にやるべき課題が見えてくるはずです。

=================================================
クロスメディア・コミュニケーションズ株式会社
代表取締役 雨宮 和弘
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷4-3-6B1
Tel: 03-6418-0336 Fax: 03-6418-0337
URL: http://www.crossmedia.co.jp/
日本PR協会正会員
IABC( http://www.iabc.com/ ) 正会員
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2009年04月30日(木)更新

「謎の1セント硬貨 真実は細部に宿るinUSA」 向井 万起男

謎の1セント硬貨 真実は細部に宿るinUSA
向井 万起男


mukaibook

ゴールデンウィークの読書にお勧めの本です。

例のユニークな髪型で「日本人初の女性宇宙飛行士である向井
千秋さんの印象を一発で抜いた」旦那さまの新作です。
アメリカを訪れるたびに感じる非常に素朴な疑問を、丁寧にひ
もといていくのですが、そのプロセスに感銘を受けます。
1.
まず、現地に行ってみる。
2.
そしてそこで出会う人に疑問をぶつけてみる。
3.
さらにインターネットで調べてみて、知見を集めて見る。
4.
自分の興味に一番引っかかるWebサイトに対し、率直な質問メールを
ぶつけてみる。
5.
その返事から自分なりの答を見いだしてみる。

テレビが急激に普及した時期(私の成長期)には日がなテレビを見ていて
思考停止に陥ると親に揶揄されたものですが、現代におけるネットも同じ
かも知れません。
いつでもたくさんの情報が得られて世界が変わったとすら言われています
が向井さんのアプローチで言えば、殆どの人がやっているのは上記の「3」
のみなのかもしれません。

向井さんの本には圧倒的な「共感」と「感動」があります。
それは「1~5」のプロセスをきちんとたどって自分なりの結論を見いだし
ているからかもしれません。

多くの企業コミュニケーションはまだまだ「情報」を提供しているだけに過ぎず、
「検索」によって得た「知識」は明日にはまたすぐに忘却の彼方へと押し
流されていくのでしょう。

仕事や講演、セミナーなどで知り合う企業や団体の方のお話を聞いていると
その企業や団体ごとにユニークな魅力やアイディア、社会的価値をたくさん
感じます。そしてそこに関わる方々の姿勢や努力に共感し、感動します。
本当は別にWebでなくても良いのだけれど、なんとかそれらの良い事を、
良く伝えたい、と思います。わたし自身が企業コミュニケーションやPRの
仕事が好きな理由はそんなところにありますし、オンラインに注力するのは
経験を活かせるからにすぎないのかもしれません。

前回のエントリーでは「Webリニューアルをやめろ」と書きましたが、それは
コミュニケーションのアプローチがツールに頼ってインスタントに片寄り過ぎ
ている場合が多いからなのです。
自分たちが大事にしている価値はなんだろうか?それをどう伝えたらいいのか?
向井さんほどまでに、とは言いませんが、しっかり咀嚼する癖を取り戻すため
にも「考える楽しさ」や「伝える楽しさ」を読んでみて下さい。

きっと何かヒントを得られるはずです。

2008年12月09日(火)更新

「グランズウェル(大きなうねり)」と「ゆで蛙」

約2年半前、ちょうどこのブログを始める直前に久しぶりの米国出張
に出かけていた。
それはサンフランシスコで行われている「New Communications Forum」
に出席するためだ。

当時私はツールベンダー側の立場ではなく、それ(オンラインテクノ
ロジー)を使う企業側の立場で話ができる勉強会はないものか、と探
していた。結局国内にはまだ見当たらず、米国のこの会議に興味を持
ったのだ。
3日間のコンファレンスは参加者300名弱のこじんまりしたもので
あったが、名だたるブロガーや企業の担当者が集まり、非常に刺激的
だった。

今年の春にも2度目となる参加をしてきたのだが、その様子は以下を
参照して欲しい。

http://crossmedia.keikai.topblog.jp/blog/110/10009082.html
http://crossmedia.keikai.topblog.jp/blog/110/10009096.html
http://crossmedia.keikai.topblog.jp/blog/105/10009166.html
さて、2年前にその会議に初めて出たときのスピーカーの中でもひと
きわ際立っていたのが米国のテクノロジーリサーチ会社、フォレスタ
ー・リサーチのシャーリン・リー氏だった。

彼女は1時間のコマのうち、約35分かけて、通常のスピーカーの
およそ2倍近い速度でプレゼンテーションを行っていく。
価値の高い情報を凝縮して進めていくため、聞くものの緊張感を強い
る、ハードだが見たことのない個性的なプレゼンテーションだった。
しかも1時間のコマを1時間使うのではなく、30分ちょっとで終わ
らせる理由は何か?参加者に「対話」を求めていたからだ。

質疑応答の挙手は途切れることがなく、やむなく司会が制止して、や
っと彼女はPCからUSBメモリーを抜き取り足早に会場を後にした。

当時、いやそれ以前から彼女は世界各国のネット状況を見、評価し、
ネットの世界から見て企業が今、どういう状況にあるのかを正確に捉
えていた。

それから2年。この6月にニューヨークのIABCのグローバルコン
ファレンスに出席したとき、やはり話題だったのは、そのシャーリン
が出版した「GROUNDSWELL: Winning in a World Transformed by
Social Technologies」だ。

日本でもいち早くその原書に書評をつけていたのがアジャイルメディ
アネットワークの坂和さん
だったのも興味深い。。

怠惰な私は当時読みたい本が山積しており、とても原書を読む気力が
なく、翻訳本が出るのを待っていた。それがこの秋に出版されたのだ。

グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略 (ハードカバー)
シャーリーン・リー (著), ジョシュ・バーノフ (著), 伊東 奈美子 (翻訳)


groundswell

ここ数日、アマゾンや検索エンジンで「groundswell(日本語のペー
ジ)」で検索すれば書評が多く出てきたので詳細は譲るが、数多くの
具体的な事例やエピソード、そして定量的なデータに満ち溢れている
ため、非常にロジカルなところも良い。
多くの企業広報・コミュニケーション担当者に読んでいただきたい一
冊だ。

本書では「groundswell」を、

「グランズウェル」とは社会動向であり、人々がテクノロジーを使っ
て、自分が必要としているものを企業などの伝統的な組織ではなく、
お互いから調達するようになっていることを指す

と定義している。

そして

「groundswell」をマスターするための原則は「テクノロジーではなく、
関係に焦点をあわせること」

とある。この本はここに始まり、ここに戻ってくる。

まだ水はぬるいと慢心して気がついていたらお湯から出るタイミング
を逸してしまった「ゆで蛙」。
わたしたちがそうならないためにも、自社が社内外に向けて、特にオ
ンラインテクノロジーを活用して取るべきコミュニケーションとはど
ういうものなのか?
状況把握から徹底的に洗いなおす時期はもう目の前にきている。
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