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2010年08月17日(火)更新

笑いカワセミの声を聴いてベリカードを集めよう

このタイトルで反応するのは70年代に青春を送られた同志でしょう。
当時の子供の三種の神器といえば、フラッシャー付き自転車、エレキ
ット、そして短波放送が聴けるBCLラジオ!
中学生のとき、お年玉をためて買ったのがこのスカイセンサーICF
-5600でした。

先週お盆に実家に帰ったとき、ふと二階の押し入れの天袋に手を突っ
込んだら出てきたのです。35年ぶりの邂逅!その時代の布団の枕も
との薄暗い光景すらよみがえります。

radio

出てくると鳴らしてみたいのは当然ですが、通常こういう電気製品
はだいたい電池の液漏れを起こしており、分解掃除で何とかなる場
合もあるのですが、相当手間になります。

しかしなんということでしょう。(多分僕が)電池をひとつはずし
て保管してあったのです!
カバーの合成皮革は劣化してべたべたしていましたが、それで保護
されていたせいもあり、本体はぴかぴかでした。

茶の間に降り、単2電池を4本入れてみると、信じられないほど鮮
明な音が聞こえてくるではないですか!これには感動しました。
この時代の製品ですからメーターもつまみもボリュームも全てアナ
ログで古ければ全てノイズを発生するものなのに、まったく問題が
ないのです。
また、モノラルなのにラウドネスエンハンサーやトレブル、ベース
の独立したイコライザーがついていたり、ダイアルロックがあった
り、FMのNULLインジケーターがあったり。
この時代の、時間をかけて丁寧に作られた工業デザインの証が詰ま
っているようです。

このラジオ、一番気に入ったのは12歳の娘でした。ラジオは何か
の機械(たとえばCDラジカセやステレオ)の一部の機能という認
識しかなかったようで、ラジオだけで単体、しかも持ち運びができ
て音が良い、というのがことのほか新鮮だったようです。
さっそく自分の勉強机のところに持っていってしまいました。

これからどのぐらい使えるか判りませんが、パソコンで3年、家電
製品も5年から10年しかもたない昨今の状況からすれば、35年
ぶりに復活して使ってもらえるのは道具としては幸せなことでしょ
う。

今の生活空間の中においても古さや違和感を感じさせないデザイン
というのは、この時代のSONY製品の実力を物語っています。

物を減らさないと、と常々思っているのですが、物持ちのよさが災
いしています。家人にはこれ以上実家の物置に手を突っ込むな、と
釘を刺されました。

2008年12月17日(水)更新

キングジムの「ポメラ」に見る現代のマーケットコミュニケーション(3)

マス広告やニュースリリースの一斉配信によるメディアリレーションの限界という
ようなものがささやかれ始めた。
コンスーマー向けビジネスであろうとビジネス向けであろうと、マーケットコミュニ
ケーションやカスタマーリレーションのあり方を考え直さなければならない時期に
きているのだろう。
「広告だけにお金をかけても企業イメージやブランドを維持できない会社が出て
きた」とさえ言われている。
しかし多くの広報担当者は、今までどおりのメディアリレーションから新たなカバ
レージや影響力が生まれにくい事がわかっていても、踏み出せないままでいる。

先月、キングジムが発売した「ポメラ」と言う商品がある。
私は現物を見ずに予約し、発売日に入手して使っているのだが、この製品は当
初マスメディアによる懐疑的なコメントが多かった。

http://crossmedia.keikai.topblog.jp/blog/103/10011390.html
http://crossmedia.keikai.topblog.jp/blog/101/10011657.html

しかしその後の状況を見ると様子は一変している。(ファーストロットは完売)

その一旦としてソーシャルネットワークのMixi上でのコミュニティ展開を見てみよう。

ミクシィの「ポメラ」コミュニティはすでに参加者が450人。

中には有名なブロガーも参加しているのだが、みなとても活発で、すでに自主的な
イベントを開催し(参加無料)、メーカーの開発者を呼んでオフ会を開き、意見交換
をしている。
  →参加者のブログ

また、「広報室」と言うトピックではどこのメディアにどんなカバレージがあったか
をみんなでピックアップし、それについて感想を述べ合っている。これらはいまま
でお金を払ってPRエージェンシーにお願いしていたような業務だ。
その他、このコミュニティではユーザーインプレッション、新しいアイディア、価格
情報、バックアップソフト、バグ情報の共有、ATOK(FEP)の変換できない漢字の
一覧から「すでにここが壊れた」と言う話まで、かなり活発な情報共有がなされて
いる。傑作なのは原宿のデザインコンセプトショップ、アシストオンのアドバイザー
の大谷和利さんのアイディアで、カバーの塗装が硬質で厚いことを利用し、ホワイ
トボードとして活用する、というものだ。
http://wiredvision.jp/blog/gadgetlab/200811/20081125170000.html
先日の「ディーター・ラムス展」の影響ではないが、この製品の外装カバーにロゴ
や商品名などのプリントが一切ないからできたことだ。(この点も秀逸)


もちろん「顧客が本当に望む商品やサービスありき」なのかも知れないが、完璧な
製品ではなくとも、ここに参加している人たちは自分たちだけで意見交換をするだけ
ではなく、「僕たちが意見を言い、企業が一緒に一緒に考えてくれることでさらに
良い商品を作ってくれるだろう」という期待値が大きいのだ。ユーザーはただ商品を
買うだけではなく、メーカーとの「関係性」を欲しているのだろう。(それが企業コミュ
ニケーション)

企業がこれらの意見を聞くことは言うまでもなく重要だし、広告やイベント、金銭で
時間を買うグループインタビューと比べても同等以上の高い価値を見い出すことが
できるはずだ。

これからのマーケットコミュニケーションはこれらのコミュニティの存在なしには成立
しないのかもしれない。企業はコミュニティを自ら提供(コントロールはできない)する
か、その存在に気づき、認め、サポートするか、だ。

私自身は「ポメラ」のマス広告をまだ一度も見た事はないが、12月中旬の現時点で
ほとんどの店舗、オンラインショップで「在庫切れ入荷待ち」の状況だ。

2008年11月30日(日)更新

「純粋なる形象 ディーター・ラムスの時代-機能主義デザイン再考」展

先週あたりから年末進行に突入し、様々なイベントやそのセットアップに
奔走し、なかなかエントリーが出来ない状況だった。

そんななか、28日の金曜日は大阪である業界の国内/外資系の企業広報
の方が集まる勉強会に講師として招かれた。この件に関してはまた別途報
告したいと思う。さて、本来は夕方からのセミナー、その後の懇親会に参
加し、新幹線の終電でその日のうちに帰京する予定でいたのだが、自腹で
一泊し、翌日に帰る事にした。
その理由は大阪港のそばにあるサントリーミュージアム天保山で開催され
ているディーターラムス展
を見るためだ。

tenpozan
ディーターラムスは1997年に勇退するまで四十年以上に渡りドイツの
ブラウン社のデザイナー及びデザインディレクターを務めた方だ。

rams

その業績を網羅する300以上の製品を見られる稀な機会で、このタイ
ミングに大阪の仕事があって本当にラッキーだった。

数年前にも六本木のアクシスギャラリーで同様のものが開催されたが
規模が圧倒的に違う。特にポータブルラジオからモジュラーステレオ
のコレクションが圧巻だった。

ブラウン社のデザインはどれも究極に考え抜かれた謙虚さやストイシ
ズムのようなものに立脚しているのだけれど、そのデザイン言語を読
みくだいていくと到達点に朗らかさや優しさ、が感じられるのが、た
だひたすらすごい。

ブラウン社にはデザイン哲学がある。
===============================================
‐革新的であると同時に、自然である。
‐機能的であると同時に、感情に訴える。
‐識別的であると同時に、個性と、世界的に受け入れられることを
調和させる。
‐恒久的な品質を誇ると同時に、高水準の視覚的アピールを備える。
‐明確であると同時に、最適条件の多機能を提供する。
‐誠実に、誤った期待を抱かせることなく、みずからの基本価値を
肯定する。
‐審美的であると同時に、高度な合理性をも表現する。

これら対立するニーズを調和させ、デザイン要素の説得力ある統合を
達成できるようにするための価値の統合は不可欠と考えます。
===============================================
http://www.braun.co.jp/designs/index.html

そうなのだ。常に対立するニーズを調和させ、解決する。
私はそこにデザインやコミュニケーションの力や役割を見た。

面白かったのはロゴ(ブランドのマーク)の位置がそれぞれの製品で
意外に一定しておらず、上面や側面の場合すらある事だ。ただしどの
製品にも「ロゴをうつのはここしかない」という所に打ってある。そ
してそのまわりにくだらない品番表記(FX-800diみたいなもの)が
ないのが良い。

そんな些細な事もひとつひとつの製品が画一的にならず個性を持って
存在しているかも知れない。

この展覧会のために用意された図録の出来も素晴らしく、至福のひと
ときを過ごす事が出来た。

東京で開催されるかは判らないが、デザインやビジュアル表現に関わる
方にはお勧めだ。

2008年10月30日(木)更新

デザインの定量評価

昨日は宣伝会議さんの「インターネット広報講座」の第7回目の講義を
受け持った。
今月合計11回あったセミナーの最後の回だ。
今回のテーマは「企業Webにおけるデザイン・ビジュアルの理解」という
ものだが、一番お伝えしたかったことは

「自分の好みだけではなく、客観的にデザインやビジュアル表現を評価
出来るようになる指針の持ち方」だ。

「できるだけ多くのものを見て味わうこと」

と言ってしまえば身もふたもないが、見るポイントを因数分解していくと
判断が容易になるのだ。例えば、レイアウトの間、使う色彩の明度、彩
度、色相、色数、文字のレイアウト、色、ボリュームなど。もしくはリンク
の配置やナビゲーションプロセスなど。
内容を理解しようとページを繰っていくだけでも「これは辛いな」とか「理
解しやすい」と言う差は生じてくるものだ。それらの経験値を積み重ねて
いくと自社にとってふさわしいデザインはどういうものか、という指針が
築かれてくるのだ。
そのなかでも他社との差別性は重要なポイントだが、一概に差別性を
つけること=奇をてらう、ということではない。パナソニック株式会社の
ウェブマネージャーであられる次田寿生さんが言うように「コアバリュー
の表出」がキーになってくるのだ。

実は企業ウェブサイト、特に日本企業のウェブサイトはここ数年トップペ
ージのレイアウトや構成が非常に似通って来ている。
弊社がコンサルに入っているある企業ではリニューアルコンペを実施し
たときに5社ともほとんど同じレイアウト、企画の絵を持ってきて広報部
長がキレかけた、ということもあった。

レイアウトの独自性=コアバリューの表出と言うことではないが、ブラン
ドロゴを隠してしまったらどこの会社かわからない、というものが多いの
も事実だ。逆に言えば、コアバリューの表出をきちんと行っている会社
はデザインにもオリジナリティがきちんと見られるといえる。

参考になる書籍として、
「売れる商品デザインの法則」
と言う本がある。主にプロダクトデザインを紹介しているのだが、単に
形や色だけでなく、秩序の法則や人間工学、認知工学、そして「心に
届くかどうか」まで言及しているのだ。
デザインの読解能力をつけるヒントになる優れた書籍だ。

以下の既出エントリーも参考にして欲しい

盗作とインスピレーションの境界線

その2:盗作とインスピレーションの境界線


これからの広報:新しいチャレンジを、確実に世に問う方策

2008年10月22日(水)更新

キングジム:デジタルメモ「ポメラ」

数年前から、「出先で簡単に文章を書けるポケットワープロが欲しい」と
思っていた。

観念的には一昔前の「モバイルギア」や「オアシスポケット」のようなも
のだ。ただ、それらは電池で20時間ぐらい使えるものの、OSが重いせ
いか、長い文章を書いているとスクロールや変換が重くなる。

世の中にはこれだけ電子辞書があるのだから、これにメモ程度のワー
プロ機能が付いていればどれだけ便利だろう?と思ったのだが、そのよ
うなものは皆無だった。
こんな考えを持つのは自分だけか、と思ったら「たのみこむ」でも5年前
から要望の高いアイディアとしてリストされていた。


今回キングジムから出た「ポメラ」はまさに希望していたものだった。

pomela


キーボードも折りたたみ式で大きなものなので通常のタイピングが出来
る。

興味深いのはこのニュースが出てから数多くの方がブログでコメントして
いることで、やはり期待が高かったのだと思ったが、それらの多くが意外
にネガティブなものだと言うことだ。
不満点を要約すると、以下のようなポイントだ。

1.通信(無線LAN)機能などがない

2.スケジューラーなどの付帯機能がない

3.全体のストレージボリュームが少ない

4.もう少し出せばUMPCが買える


私自身は2日以上PCに触れないことがないと言う前提であれば、出先や
空き時間、移動時間にバッテリーを気にせず文章がチェックでき、書ける
と思うと、非常に有用性を感じる(きっと予約する)。

UMPCの価格は非常に魅力的だが、バッテリーと起動時間の遅さ(「ポメ
ラ」は2秒)には閉口する。

きっとこの商品もユーザーによって磨かれ、進化していくことだろう。
半年後にはもっと高性能で利便性の高いバージョンが出るかもしれない。
しかしそのバージョンアップに寄与するつもりでも、ここまで割り切った勇気
と開発者の信念に応えて購入してみたい。
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