大きくする 標準 小さくする
前ページ 次ページ

2008年09月30日(火)更新

天才アラーキーの眼を磨け 荒木 経惟 (著)

週末にはおおよそ夢遊病者のように古本屋に立ち寄る習慣が付いてし
まった。
今週、ふと目に入った本は写真家、荒木経惟さんの「天才アラーキーの
眼を磨け」という本だった。

araki

あまり目にしない本だと思って手に取ると、なんと対談集で、しかもそ
の対談相手が竹原あき子さんなのだ。

竹原あき子さんといえば、私の前職である工業デザイナー界の大先輩で、
現在は和光大学表現学部芸術学科教授でもあられる。
私はプラスチックという素材がいまだに大好きで、彼女の「魅せられて
プラスチック―文化とデザイン」という本は、工業デザイナーをやめてから
読んだぐらいだ。
とまれ、その竹原さんが荒木さんと同級生だったということで、フランク
でテンポの良い会話から荒木さんの想いがストレートに伝わってくる。

荒木さんは時にぶっきらぼうな物言いになるが、実は非常に良く考えて
モノを言っている。別の言い方をすれば彼の写真と同じで突き詰められ
ているから無駄がない、ということなのだろう。
この本は対談集だが、まさに天才アラーキーのエッセンス、名言にあ
ふれていた。

「シャッターチャンスは神が与えてくれるものなので、逃すはずがない」

「良くヌード写真のことをいわれるが、一番”真っ裸”なのは、実は人
の顔だということにあまりにもみんな気がついていない」

「人の顔を撮ればすべてがわかる。ただ女性の顔は50過ぎじゃない
と語るものが少ないのでなかなか写真にならないんだ」

「芸術家は自殺する奴はいるが、写真家は自殺しない」

「朝、目が覚めたらバルコニーから青空を撮る。眼を磨くんだよ。毎朝
歯を磨くみたいに」

「良い写真を撮るコツは量を撮ること。量は質を凌駕する」

「レンズで撮るもんじゃないね。知性が先に走ったらいい写真なんか撮
れないってこと」

「写真はやはりアナログが良い。アナログの写真は現像するときに一度
濡れる。それが重要なんだ。デジタルはプロセスが乾いているのが問題」

「みんなPCや携帯で同じ文字を打っているだろう?あれじゃ気持ちなん
か伝わらないよ。自分の字を書く。自分の声で伝える。それが大事だ」

「写真には”情”が写る。被写体に対する思いやりと慈しみ、つまり情を
写してあげる気持ちが必要なんだ」

自分で撮ってみてわかるが写真を写真たらしめるのは、やはり想いだ。
そう考えるとこの本で言っていることはほぼ「コミュニケーション論」と捉
えても差し支えない内容だ。

何を伝えるか、ではなく、どうしたら伝わるか、そんなヒントを沢山いた
だいた。

2008年02月05日(火)更新

インターネット系雑誌の休刊が相次ぐ

ここのところ立て続けにインターネット系の雑誌の休刊の知らせが
届いている。
昨日はウェブフラッシュ。そして今日はヤフーインターネットガイドだ。

ウェブフラッシュはいわゆるWEB制作会社の作品紹介のような雑
誌(ムック)だが、制作費の推移や現場担当者へのアンケートなど
貴重な定量情報も掲載していたので、それなりに価値はあったの
だが、そもそもの掲載事例が均質化してきており、製作会社の宣
伝にはなるもの、買ってみる側にとって目が慣れてきて新鮮味が
薄れてきた、といえなくもない。

また、ヤフーインターネットガイドはコンスーマ向けのインターネット
情報誌として先駆者だった日経ネットナビなきあと、毎回読み応え
のある充実したコンテンツで面白かったのだが、自分にとっては
「読みきれない・おなかいっぱい」という印象がぬぐえなかった。
Newsingバザールなどのソーシャルニュースサイト、キザシ
クノラティ
などのブログ検索が発達すると、オンタイムの話題性や
人を通して紹介され、そこにシンパシーを感じることの方が情報を
得るプロセスとして雑誌よりもモチベーションが高くなることもある
のだろう。

これらの雑誌以外にも昨年は社会現象にまでなった「LEON」の
女性版として登場した「NIKITA(ニキータ) 」や駅のキオスクでつい
手にとってしまう「ダカーポ」、注目していた「日経EW(イー・ダブリ
ュ)」なども休刊になった。ネット・PC系ではハッカー御用達の「ネ
ットランナー」、これも記事の寄稿でお世話になった「月刊ソリュー
ションIT 」なども同様だ。地味だが内容の濃い、良い雑誌にとって
は生きにくい時代なのかもしれない。

海外では90年代からネットビジネスの時代の代表的雑誌として
出張時に良く空港のターミナルで手に取った「Business2.0」も休刊。
元々メディアミックスでネットと雑誌の融合で名を馳せていた雑誌だ
ったが現在はCNN傘下に入り、CNNMoney.comにリダイレクトされ
ている。反面、ただで記事が読めるようになったので、休刊も時代
の流れ、といえるかもしれない。

画面で長文を追うことがだんだんつらくなってきた自分にとって、
すべての情報がネットや携帯に置き換えられることはあまり歓迎
するものではない。(プリントアウトも横書きの長いコラムでは読み
にくい)
この時代にあっても雑誌や本、新聞などのペーパーメディアの(復権
とは言わないが)新たな存在意義を願ってやまない。

2007年04月05日(木)更新

出版記念告知:「心の癒し・骨董市」

あるカルチャーセンターの講義がきっかけで知り合い、かれこれ10年近く
わたしたち夫婦を家族ぐるみでかわいがってくださるアンティークコレクター、
著作家の末続尭(すえつぐたかし)先生がる。

末続先生はいわゆる「目利き」にとどまらず、それらをどう愛でるか、楽しむ
か、という視点があるので著作を読まれていても、コレクションやお言葉に
ふれても、とても暖かいものを感じるのだ。
たとえば、出版者の関係で残念ながらすでに廃刊になってしまったのだが
「日本のアールデコ」という本はとてもユニークだ。

アールデコといえば20世紀初頭に欧米で大きなムーブメントとなった装飾
芸術様式だが、日本における展開を体系立てて解説した本は少なく、
「こんなものにデコを感じるのか」という視点のユニークさに敬服した。

そんな先生の待望の新書が出た。
たまたま別の友人のセミナーに出席するので参加できないが、今日4月
5日、19時から新宿の紀伊国屋でサイン会も催されるそうだ。

よい意味で物好き、そして色気とスケベ心を失わない、とってもチャーミン
グなおじさまだ。

心の癒し・骨董市 見るたのしみ、買う楽しみ、使う愉しみ
末続尭/著


解説引用:

昔は店のガラス戸を開けなければ買えなかった骨董も、現在では屋外屋内
含め、たとえば関東周辺だけでも月間延べ四十日もの市が立っている。その
他に会員同士の売買を仲介するオークションの組織も広がりを見せてきた。
三十年ほど前までは正札もつけず、客の顔色を窺って値段を小出しにしてい
た商品も、いまでは値札が付き、気兼ねなく手に取って見ることが出来る。
千円札を何枚か、ポケットに入れて行ってみよう。
身近で奥深い大人のワンダーランド。


[目次]
1 骨董って何だろう;
2 ホビイ商品、フリマ商品は骨董か;
3 何故人は骨董に惹かれるのだろうか;
4 隗より始めよ(骨董収集の動機);
5 骨董屋さんはどういう人達だろう;
6 骨董市を訪れる前に決めておくこと;
7 さあ骨董市に出掛けてみよう;
8 骨董品のチェックポイント;
9 海外の骨董市にも出掛けてみよう;
10 国際オークションにも簡単に参加出来る;
11 本物と贋物;
12 手軽な骨董;
13 骨董と生活空間

いいなと感じさせてくれる物、懐かしさを呼び覚ましてくれる物、そんな骨董たち
との出会いを演出してくれる、骨董市の魅力を解説する

2007年03月21日(水)更新

大企業のウェブはなぜつまらないのか

「大企業のウェブはなぜつまらないのか」
本荘修二 (著)



非常にキャッチーなタイトルで、私自身の興味とシンクロしているの
だが、著者の本庄さんが冒頭で書かれているように、WEBの本では
なく、

「経営にとってのオンラインコミュニケーションの課題」

について書かれた本だ。

前半はソーシャルコンピューティングの解説が多いのだが、最後の章
で「社内の組織的な関与が欠落している」
と、いつも僕が言っているようなオチになっている(笑)。
この本は、とても画期的だが、大きな流れの序章に過ぎないと感じた。

実は昨晩、この出版記念パーティーがあり、たまたま本庄さんを知る
私のサラリーマン時代の先輩に頼み、参加させていただいた。

著者ご本人からご紹介いただく光栄を預かりながらも、上記に書いた
「序章に過ぎない」ということが確認できたことが大きかった。

この本のアマゾンの書評を見ると大きく意見が割れている(笑)。
実際、本庄さんが説いている事(僭越ながら私も同じ思い)を企業が
理解し、実践するまでにはかなりのハードルとプロセスがある。

私自身は現場のコミュニケーション担当者をサポートしながら、その
道を作っていこうと考える。


関連情報だが、昨年わたしが参加した「New communication forum」と
いうシリコンバレーで開かれた会合の本年度のセッションでのエピソードを
「Corporate Conversation」の著者、Shel holtsが、最近彼自身のブログで
こんな風に言っている。

======================================================
The value of company websites
http://blog.holtz.com/

今年のNew Communications Forumで繰り返されたテーマのひとつに
「企業WEBサイトの価値」がある。パネルスピーカーのデヴィッド・ワイン
バーガーやジョン・ベル(オグルヴィーPR)は、

「人々は、Googleで検索し、ブログスフィアでつながり、その会社のWE
Bサイトを訪れる前にどの会社がどんなことをやっているのかを探し出す。
それでも企業のWEBサイトに訪れるとすれば、その企業の見解や考え
方を得るためだけで、そこに最終的な判断を受け賛同するためではない」

と述べているが、私自身は企業WEBサイトの中のメディアルームやIRサ
イトがジャーナリストや投資家にとって有用性があると感じているし、マイ
クロソフトのように透明性を持ってオープンなコミュニケーションを行う企業
もあるので、そんなにソーシャルコンピューティングが企業WEBの価値を
奪い去るものとは思えない。
======================================================

上記の本と同じ観点だ。
まだまだ企業は企業WEBサイトのポテンシャルを活かしきれていないのが
日本でも米国でも現状なのではないだろうか?

2007年01月09日(火)更新

計画された偶発性~書評:好きにやっても評価される人、我慢しても評価されない人

好きにやっても評価される人、我慢しても評価されない人
小杉 俊哉 (著) ¥ 1,365 (税込)
PHP研究所 (2006/9/26)


小杉さんは、尊敬する「仲間」の一人だ。
今までも、何度となく仕事をご一緒させてもらった。

既に何冊も本を書かれていて、 この本は昨年紹介した「ラッキーを
つかみ取る技術」に続く本だ。 テーマとしては全てのビジネスパー
ソンに、「評価」の側面からキャリアの形成を 語ったものだが、既に
独立している私のような人間にとっても、多くの示唆にとん だ内容
だった。
人材を採用する立場から見ると、スキルや適性試験での判断はあ
まり信用できない というのが定説で、一番信頼できるのが「顔つき」
で判断する事だ、というのが痛快 だ。なぜなら変化の激しい今のビ
ジネスにおいて、人間力が大きく問われ、それは まぎれもなく「顔
つき」に表れるのだと言う。

また、あまり「自分はこうありたい」というプランに沿ったキャリアを
歩むよりも 非主流や新規部門での仕事が「自律」を促し、その力
が不確定な時代の先見力を磨く という。
「顔つき」にしても「自律」にしても、言わんとする事は「技能」や「知
識」などの 「ハードスキル」に対する「ソフトスキル」の重要性だとも
言える。

このような面を無視して、企業の成長に合わせて一般的な人事評
価システムを導入し、会社の雰囲気がおかしくなってしまったベンチ
ャー企業をたくさん見た、という話は、読んでいて寒気をおぼえるく
らいリアルだった。
一番強烈なのは、米国で数百人に及ぶ成功したビジネスパーソンの
キャリアを分析し たスタンフォード大学のクランボルツ教授の調査結
果で、その8割は「いまあるキャ リアは予期せぬ偶然に因るものだ」
と答えているのだ。
それを「Planned happenstance(計画された偶発性)」と呼んでいる
そうで、最初 にキャリア目標を置くよりも、自分にとって好ましい偶
然が起こりやすくなるような 行動を日頃からとることが肝要だと説い
ている。

目標の貫徹にあと何が足りないだろう、と考えると、ない事だらけで
笑ってしまうほかない。

しかし今までやってきた事が不思議とすべて布石になっている、と
思える自分が今あれば、この本はさらに背中を押してくれる。

2006年12月20日(水)更新

年末のオススメ:書籍編

年末の読書というと、やはりビジネス書を読まれる方も
多いかと思いますが、少し視点を変えられる本をご紹介
します。
芸術起業論
村上 隆



私自身がデザイナーだった頃、よく社内外の方から、
「良くわからないけど、クリエイティブな仕事でかっこいい
ねぇ」
と言われました。

もちろん皮肉です。

結局デザインの価値をきちんと他のプロフェっションを持つ
人に説明できないところが多くのデザイナーの悪いところ
です。

昔エントリーで書いたことがありますが、レイモンドロウィー
などは究極の他者理解のかたまりで、
「どれだけデザイナーとしての自分のエゴを消し去れるか」
がキーでした。

村上さんも、アプローチは近いものがあります。
芸術家が、自分の考えを世に問うためには、今まで脈々と
行われてきたアートの文脈を理解し、その上で新しい価値を
提示できるかどうか。そしてその価値を認めてくれた人に
対し、持続できるかどうか、が大事だと解きます。

芸術の歴史を学習し続ければ、どんどん自由になれる。
芸術の歴史の文脈の引き出しを開けたり閉めたりすることが
価値や流行を生む。
引き出しを知らずに作られた作品は「個人のものすごく小さな
体験を基にした面白くもなんともない経験則のドラマに過ぎな
い。まるで小さな浪花節だ」
と言い切ります。

これはファッションやデザイン表現も同じような気がします。

大学で学ぶときに、このような視点をもてていたら、と思いま
すが、デザインやコミュニケーションのような定量化しにくい
価値の重要性を共有してもらいたいと思うとき、アプローチの
ヒントにあふれた本だと思います。

2006年11月21日(火)更新

松岡正剛さんの書評:「千夜千冊」グーグル・アマゾン化する社会

松岡正剛さんがやっている脅威の書評サイト、「千夜千冊」で、
森健さんのの『グーグル・アマゾン化する社会』をとりあげている。

http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya.html

梅田望夫さんの『ウェブ進化論』や佐々木俊尚の『グーグル』など
との内容比較に始まり、SEOやレコメンデーションエンジンにまでも
解説が及ぶ。

途中でインプレスR&D代表の井芹昌信さんの話ががでてくるが、
ぼくがサラリーマン時代にネットで最初の事例を作ったとき、ちょうど
インターネットマガジンが創刊され、インタビューかたがた、井芹さん
とも何度かお話をさせていただく機会をいただいた記憶がある。

10年たってきらめいては消えていく人が多い中で、じっと日本の
インターネットを見据えている、数少ない人の一人だなあというのが
印象だ。こういう人は消えない。

松岡さんのお話の中では、
====================================================

せめてアクセス数や従事率ではなく、そこに多様なキラーテクノロジ
ーが自在に開花し、そこに痛快なコースウェアや深々と感じられる学
習機会が生まれていってほしいのだ。
時代がそろそろキーワード主義(小泉時代も終わったのだから)から、
コンテキスト主義に移ってほしいのだ。

====================================================

という言葉が印象的だった。

時代的には「WEB標準化」という流れがあるが、それを乗り越えた
ところにもう一度自由を見出そうとしているようだ。

ただ、松岡さんに言及されているグーグル自身も、

”イノベーションを起こすには、会社を「カオス状態」と「きちんと構造化
された状態」の間の "structured chaos"(構造化されたカオス)と呼ぶ
状態に置くのが一番良い”

といっているところが興味深い。
http://satoshi.blogs.com/life/2006/10/googlestructure.html

どっちが上手出し投げか、けたぐりか。(笑)

2006年10月02日(月)更新

愛読雑誌「Communication Arts」

ミクシィにも「雑誌が好きすぎて死ぬ」というコミュニティに参加
している雨宮です。

月にほとんど定期購読状態で買っている雑誌が10誌近くあり
ます。
半分ぐらいはビジネスや広報・コミュニケーション系のものです
が、大好きな音楽やインテリア、雑貨、デザイン系のものも、見
るとついつい買ってしまいます。

洋書はビジネスウィーク(ほとんど写真をスクラップするため)の
定期購読していたのですが、3年とってやめてしまったため、残
るは1冊のみとなってしまいました。

で、本日紹介するのがその最後の1冊「Communication Arts」
です。
Communication ArtsCommunication Arts
この雑誌は、商業デザインに関する隔月刊の雑誌(ムック)で、
フルカラーで広告、ポスター、CM、イラストレーション、写真、サ
インデザイン、CI、WEB、企業出版物の編集デザインなどの
最新の事例を、フルカラーで紹介しています。

あわせて年間1冊ずつ、イラストや写真、グラフィックデザイン、
インタラクティブ(フィルムやウェブ)のアニュアル(別冊)も発行
されます。
年間購読料は110ドルですので、1冊の単価は1000円ちょっと。
洋書雑誌を扱うお店では3000円近くしたりするので、とてもお得
です。

一番の魅力は、なんといっても米国を中心に世界の最新の事例
に触れられることと、その品質の高さです。
ビジネスコミュニケーションの中で、デザインやビジュアルの要素
の重要性が伝わってきます。

日本でも「アイディア」誌など、近いコンセプトのグラフィック雑誌や
「+81」のように挑戦的に新しいグラフィック表現を模索する刺激
的な雑誌がありますが、このような洋書雑誌の良い点は、ある意
味日本国内の「流行」みたいなものを感じなくてすむところにあり
ます。

昔デザイナーだったときにも強く感じていたのですが、日本のもの
ばかり見ていると、情報源が画一的なせいか、発想がみな近くな
ってしまうことが少なくないのです。

ネットにももちろん海外の有益な情報はあふれていますが、閲覧
性の高さや光の色ではなくインクの色、というのも、この雑誌の魅
力です。

お近くでしたらオフィスに見に来てください。

http://www.commarts.com/

2006年09月12日(火)更新

芸術起業論 (単行本) 村上 隆

芸術起業論 (単行本)
村上 隆

現在は企業コミュニケーションのお手伝いをしている私ですが、元々は
美大のデザイン科を卒業して最初の10年は工業デザイナーをやってい
ました。

同級生には絵画科や彫刻科も多く、当時ほぼ100%大手企業に就職
できた工業デザイン専攻とはちがい、彼らの多くは教職につくか、日銭
を稼ぎながら年に数回個展や展覧会を開く、といったライフスタイルでし
た。

その中で一人だけ、非常にマーケティングセンスに優れた女性がいて、
彼女は積極的に現代美術ビエンナーレ等の活動をやっていました。

うがった見方をすれば、自分を売り込むために何でもやるのか、というよ
うに見られなくもありませんでし、友人の間では少々浮いた存在に見られ
ていましたが、現代美術を取り巻く世の中がどうなっているのか?その中
で自分が生きていくためには何をすればよいのか?
考えれば至極当然のことを彼女はやっていただけでした。

逆に自分の芸術だけを信じ、「いつかは認められるときが来る」と思って
続けている友人も、30代半ばを過ぎてのフリーターライフはきつく、ひ
とり、また、ひとりとそれぞれ仕事を持つようになって行きました。

村上さんのこの本はとても明快でした。
現代美術を志すひとだけでなく、なにより働く価値の転換期にある現代
においては、すべての人に共通する「知っておくべきこと」が書かれてい
るような気がします。
もはや終身雇用の時代ではなく、企業は自分の人生をゆだねる寄る辺
にはなりえません。
自分が何をやりたいのか?そこで成功するためのアプローチとは?
そんなヒントが書かれています。

特に、
「なぜ日本の芸術家が世界に通用しないのかというと、文脈の設定に対
する理解不足と人間と人間の勝負に弱い」
という文章には、
単に作品の芸術性そのものだけでなく、自分の表現やアートにどういう価値
があるのか、ということを相手に伝えるコミュニケーション能力(プレゼン
テーション能力)が重要だということが伝わってきます。

それは芸術だけの話ではありません。

「そんなこと、言わなくても常識だからわかってくれるだろう?」ということで
はビジネスは成り立たなくなってきているのです。

「好きなように生きる」と「自分の興味を究明する」は違う、と説きます。
文脈の歴史の引き出しを開けたり閉めたりすることが新しい価値を生むので、
引き出しを知らずに作られた芸術作品は「個人のものすごく小さな経験則の
ドラマに過ぎない。そんなものは小さな浪花節だ」といいます。
歴史を学習して始めて自由な表現ができる。とも。

私たちはもっと伝達(コミュニケーション)能力をみがかなければ、いつまで
たっても世界共通の土壌で戦えない。

私は仕事で、主に企業のオンラインコミュニケーションを見ています。
「インターネット」といいながら、真にインターナショナルなコミュニケーションを
している企業はまだほとんどいないといっても過言ではないでしょうか。
まだまだやるべきことはいっぱいあります。

全編勇気のみなぎる本でした。
自分が学生のときにこの本を読んでいたらどれだけ勇気付けられたことだろう。
こんなに明快に伝えることのできる先人は皆無でした。

これから社会に出る学生の方から、経営者の方まで、ご一読をお勧めします。

2006年09月01日(金)更新

なぜ日本企業では情報共有が進まないのか?

「なぜ日本企業では情報共有が進まないのか?」
田坂 広志


田坂さんのこの本が上梓された1998年に私は独立しました。
言ってみれば、自分の起業の根っこにあった思いを代弁して
くれているような本でした。

ビジネス書は5年もすると古くなって使いようもなくなることが
多いのですが、真理に触れている本はそうならないものですね。

この本は、ビジネスにおいて、特にIT化によって引き起こされる
コミュニケーションの不可視化の弊害の解決を、「ナレッジマネ
ージャー」という管理職のマネジメントスタイルにあててわかり
やすく解説しています。

毎日同じようなことを書いている気がしますが、
企業WEBサイトやイントラネットについて、「何をするのか?」とか
「どう使うか?」とか「どんな機能を持たせるか?」というような悩み
をお持ちの企業様からの相談が増えています。

しかし、お話を伺えば、おのずと根源的にツールやテクノロジーだけ
では解決できない問題があることに気がつきます。

久米さんもよく語っているように、ブログは人に自分の思いをひけ
らかすためではなく、自身の思いを整理するために使うものだと
思います。
自分で書いて自分でその知見を積み重ね、再利用できる。
企業コミュニケーションもその延長のような気がします。
自分に対するホスピタリティの延長に、自分の部署、あるいは
組織、あるいは社会に対するホスピタリティがある。

こんな積み重ねをしていけるナレッジマネージャー。そしてそんな
彼、彼女に率いられた組織であれば、その思いを最大限に活用する
ツールを見出すのはそんなに難しいことではないのです。

久しぶりに本棚から出してページをめくり、8年たってもあまり状況は
変わっていないなあ、という思いを持ちました。
«前へ 次へ»

20141009bnr.jpg

会社概要

1999年2月創業。 ビジネスにおけるインターネット活用経験は日本のインターネットの発展の変遷とほぼ同期しており、豊富な経験を有する。 主宰者は企業広報から自己啓発でWEBマスターになった経験から、今後オンラインを中心とした企業コミュニケーションが重要になるとの思いで独立、創業した。...

詳細へ

個人プロフィール

美術大学デザイン科を卒業後、12年間工業デザイナーを勤める。当時勤めていた外資系メーカーで本社出張を重ねるうち、本社の親組織で行っている「コーポレートコミュニケーション」の役割と重要性に魅了され、セルフリストラして広報部に社内転職。自ら部門を超越した「コーポレートコミュニケーション」を実践する...

詳細へ

<<  2017年9月  >>
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

コメント一覧

最新トラックバック

  • フェラガモ アウトレット from フェラガモ アウトレット
    50万円のパソコン用キーボード! - クロスメディア・コミュニケーションズ 代表取締役 雨宮和弘
  • mbt mens shoes from mbt mens shoes
    企業広報誌 - クロスメディア・コミュニケーションズ 代表取締役 雨宮和弘
  • Air Jordan?1 from Air Jordan?1
    企業広報誌 - クロスメディア・コミュニケーションズ 代表取締役 雨宮和弘
  • Chanel Perfume from Chanel Perfume
    企業広報誌 - クロスメディア・コミュニケーションズ 代表取締役 雨宮和弘
  • Polo Ralph Lauren from Polo Ralph Lauren
    企業広報誌 - クロスメディア・コミュニケーションズ 代表取締役 雨宮和弘