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2007年12月20日(木)更新

企業コミュニケーション優位性とウェブデザインは必ずしも一致しない?

オンラインメディア関わって10余年、自らがデザイナー出身という
こともあり、コミュニケーションメディアにおけるデザインの重要性
をそれなりに訴えて来た感がある。
たしかに優れたデザインは人に感動を与え、興味や理解を喚起さ
せる。
しかし今見るとほとんどの大手企業のコーポレートサイトは、トップ
上段に大きなビジュアルエリアがあり、左側にホワッツニュー、右
側にコンテツバナーが積みあがっているというような形骸化したも
のが多い。

良く制作会社が言う「見慣れたレイアウトはユーザーにとっても利
便性が高い」という理屈は一見まともに聞こえるが、バラエティと
個性にあふれた海外の企業のウェブサイトを見るにつけ、その企
業のメッセージとコミュニケーションモデルが明確であればそれを
体現するデザインはそれぞれだ、という確信を持つことが出来る。
と同時に「デザインだけがオンラインコミュニケーションを成り立た
せるものではない」という思いに触れることも少なくない。
(もしくは「洗練=グッドデザイン」とは限らない)
ウェブサイトはあくまで「デザイン」と「利用技術」と「コミュニケーシ
ョンモデル(コンテンツ)」のバランスで成り立つもので、企業それ
ぞれにおいてどれかが強く、どれかが弱い場合があってその企業
の個性となるのではないか。
別の言い方をすれば、企業の「思い」が強く現れていれば洗練度
が高くないウェブサイトでも信頼とブランドロイヤリティを築くことは
可能である。

「痛くない注射針」で2005年にグッドデザイン大賞に輝いた岡野
工業。他社がまったくまねが出来ないリチウムバッテリーケースの
深絞りで有名になったこの会社は社長の岡野雅行さんの元に国
内外の大手企業が黒塗りのハイヤーで日参する、という脅威の町
工場だ。
そしてこれだけ有名な「偉大な町工場」のウェブサイトがこれまたす
ごい。

1997年からろくに更新されていないこのページは、それ以降のウ
ェブ表現技術革新をすっ飛ばしているだけに逆にアクセシビリティも
悪くない。
仕事や技術に自信があれば、そもそもそんな凝ったページは要らん
わい!という勢いである。
http://www005.upp.so-net.ne.jp/OKANO_to_ONDINE/

アドレス、タイトル、内容、すべてがアナーキー。
しかしこの会社のすごさは、途中にある顕微鏡写真1枚で「見る人
が見ればわかる」のだ。

僕らはコミュニケーションを提案する側として、ある狭い了見の中で
「こうあるべき」というものをお客様に押し付けているのではないか?

岡野工業にとっての「正解」が僕らに示す「コミュニケーションの可
能性」を無視できない。

以前も書いたことがあるが「不用意にウェブサイトを作ることはブラン
ド価値を下げることになるので2000年まで表紙1枚、ロゴだけの
ウェブサイトを持っていた」ファッションブランドもあった。
「中庸なマーケティングサイトを持つのでは他社との差別性がつかな
い」とオリンピックを迎えるホットシーズンを前に半年サイト全体を
シャットダウンし、その後大幅なメッセージの変更とウェブの方向転
換を図ったスポーツブランドもあった。
他にも実験的とも言える思い切った表現をする会社は2000年ぐら
いまでは海外に散見できた。

自分たちの意思の元にウェブサイトをおいている企業は、実は大変
少ない。
そもそもそれっておかしくないか?
今年の収穫はそんな疑問を解いていく仕事が少しずつ増えてきた
ことだ。

2007年12月05日(水)更新

イーコマース2.0

もう20年も前の話になるが、海外(主に米国)出張に出ると暇な時間に
街歩きに精を出していた。
といっても主な目的はレコードハンティング。
あるチェーン展開の古本屋に行くと、ほとんどのLPが5ドル以下。半数は
1.99ドルだった。
現在ブックオフで250円のCDを漁る原型はすでにこのころから出来てい
たのだ。1回の出張で50枚以上のLPを買いこみハンドキャリィで帰国し
た時は成田の税関で笑われたものだ。

さておき、もうひとつ気がついたのはアウトドアショップや本屋に行くと
「通販カタログ」が売られていることだった。
国土の広いアメリカでは昔から通販が必須だったのだ。
細かい英語の文字を読んでいくと、「クレジットカード決済なら海外から
でも注文を受け付ける」と書いてある。
主にアウトドアブランドが多かったが、この時期さまざまな通販カタログを
集めて帰り、日本では手に入らないテントやキャンプ道具を帰国後FAX(
当時はネットも社外への電子メールもなかった)で注文して買ったものだ。
10年ちょっと前、インターネットが使えるようになってもこのときの勘は
役に立った。
あいかわらず時々海外の通販サイトやオークションサイトを調べては日本
で見たこともないものを見つけて喜んでいる。

カナダの造形作家とはそんな縁でしりあい、出張のついでにバンクーバー
まで会いに行ってきたほどだ。

たんなる「モノ好き」だが、デザインやマーケティングを生業にするものに
とってショッピングは重要な市場調査の機会なのだ(大いなる言い訳)。

前振りが長かったが、そんなことを思い出したのは衝撃的なニュースが
新聞の一面に踊っていたからだ。

「ヤフー(ジャパン)、国際ネットオークションでイーベイと提携」

これにより両国のユーザーがそれぞれスルーでオークションに参加出来
るようになるばかりでなく国際間の決済と配送に関するエスクロー(中間
業者)がいるので煩わしさはかなり軽減される。

オンラインコマースが立ち上がって10年見ていて疑問に思ったことは
なぜ大手のネット企業がいまだに国際間のオンラインショッピングに本格
参入しないんだろう?ということだ。

問題は3つある。

1.言語(主に英語)の壁

2.決済(クレジットカードをオンラインで使うことに対する心配)

3.モノは安くても結局配送料が高くついて海外から買う意味がなくなる

逆に言えばこの3つを解決できれば、かなり大きなマーケットがつかめる
はずで、1と2についてはある程度解決する方法は見出せている。
問題は3で、今回の発表でもエスクローサービスに購入代金の15%
をサービスチャージに払わなければならない。
そういう意味ではまだ過渡期かもしれないが、ヤフージャパンが今回の
提携で足場を作り、続けて日本の数10倍とも言われる米国のオンライン
ショッピングサイトと提携したらとても強力だ。

さて、GやR天はどうするのか?
その前に自分の物欲から解脱しておくことのほうが先決のようだ。

2007年11月29日(木)更新

「仕事が肩書きを決める」本田技研工業ウェブマスター渡辺春樹氏

昨日は午後いっぱいお世話になっている企業のオープンセミナーを
お手伝いし、そのまま夜は宣伝会議の「インターネット広報」を聴講
しに行った。
自分の回が終了しているので気楽だが、楽しみにしていた本田技研
のウェブマスター、渡辺さんの回だったのだ。

渡辺さんの名前は何度となく同じ会社のセミナーで拝見していたの
だが徹底的にニアミスで、ぜひ話を聞きたい、お会いしたい、とずっと
思っていた。

内容は想像以上に濃く、さすが10年以上にわたって大企業のウェブ
をマネージしてきただけのことがあるものだった。
具体的にいえば一番のポイントはすべて定量データに落とし込んで
評価できている点だ。

ホンダが他の大企業や自動車会社とまったく違うウェブ戦略を持って
いることは実はかなり前から気がついていた。
それは、圧倒的に情報量が多いのだ。私が最後にチェックしたのは
3年近く前だが、すでにその時点で最大手のT社の倍以上のページ
ボリュームだった。また、ドメイン内に荒れないコミュニティを持ってい
るのはアップルとホンダぐらいなのではないだろうか?
それに裏打ちされるものがなければこれは普通の会社には不可能
だ。

さすがにお話し慣れしている感じで、軽妙な口調で話はどんどん進
んでいくのだが、企業ウェブマネージメントを知り尽くした方ならでは
の示唆にとんだキーワード満載だった。

たとえば
「大手のメディア系サイトのページビューがホンダの3~5倍程度しか
ないのは情けない!近い将来マスメディアどころかネットメディアです
ら企業は見向きもしなくなるのではないか?」

「社史なんて出版するのやめてデータをすべてオンラインにアップし
てしまおう。そのほうが利便性が高い」

「顧客は面白いと思って自分の意思でそのサイトにとどまるだけ。C
RMで顧客を囲い込めると思ったら大間違いだ。」

「ひとつの入り口、ひとつのもてなししかできない単機能サイトの未
来は暗い」

とどめは、
「ウェブ以前にまず会社自体が面白くなければ(ウェブマスターが会
社を面白く伝える喜びを持っていなかったら)人が興味を持って見に
来るサイトになるわけがない」

聞いていてとてもすっきりした。
しかし、簡単にできることではない。

渡辺さんは95年にウェブの担当になってから、広報を皮切りに色々
と所属部署が変わっていったそうだ。
しかし本人はまったく意に介していない。
「やっていることはひとつですから。ニーズに応じて会社がやりやすい
部門に僕を引っ張っているだけなんです。」

ゆっくり話を聞きたいことはいっぱいあるのだが、とりあえず来週も楽
しみだ。

参照記事:

読売ADレポート「企業サイトは広告効果を映す鏡」

2007年11月21日(水)更新

話の通じない制作会社が多い

前回のエントリーでセミナーの参加者から「自分たちは社内の業務
プロセスについての理解が足りていなかった」という話が出たことを
紹介した。

引き続きだが他の参加者からは「ウェブに限らずなんだけど制作会社
の質が落ちてきているのか、話の通じない会社が多い」という意見も
何件か見受けられた。

これは耳の痛い話だ。
しかもよく聞くと決して制作会社だけが悪いという一方的な話ではな
さそうだ。
担当者自身も自分の知識不足(特にIT関連)や何からやればよいの
かという優先度付けができない問題もあり、効果測定もしっかりでき
ないのでさらに話がわかっていない上司を説得するなんて到底無理
、やりたいことをきちんとした要件定義書に落とすことができないとい
う5重苦の状況なのだ。
こういう状況を察知したうえで、現実的なサポートをしてくれる制作会
社を望んでいる、というのが企業担当者側の本音なのかもしれない。

さらに話を聞くと話の通じない制作会社」には以下のような共通点が
あるようだ。以下は数名の現場担当者から聞いた話だ。

1.とにかく最先端技術やツールを提案したがる
SEOやLPO、CMSやSNSといった具合で3文字英単語が大好き。
自分たちが導入すべき理由がなくても「他の会社もやっていますの
で」と、とにかく飢餓感をあおる。

2.デザインを押し付ける
「今のトレンドはこういうレイアウト」とか「大手の多くで採用されている」
などといいながら無個性なデザインを提案する。しかし「私たちがこの
デザインを採用すると、どういうメリットがあるのかは具体的には教え
てもらえない。(ロジカルに語れない)

3.「戦略」という言葉が好きでやたらと使いたがる
確かに仕事が高級に聞こえるマジックワードだ。
しかし「戦略」には「それによって築かれるものやもたらされるメリット」
が明確でなければならない。また、そこに至るプロセスが明文化され
ていなければ「とにかくがんばれ」程度のものにしかならないはずだ。
そのあたりがあいまいな「戦略」提案が多いそうだ。

4.そのチーム編成の根拠は?
見積もりに順ずる形で関与するスタッフィングの数を見て驚く。
冷静に考えるとその会社がまわしている年間のプロジェクト数と売り
上げを見れば一人のスタッフが複数のプロジェクトをタイミングを見て
切り盛りしているのがわかる。それ自体は常識的な範囲であれば別
に問題とはいえない。
しかし見積もりにはあたかもフルコミットするがごとくの人件費が計上
されていることも少なくないという。

私自身の会社で言えば、あるクライアントにはこのあたりまで正確に
聞いてきて実行実現性を問われたことがある。

5.自分たちのプロセスに当てはめたがる
「私たちのやり方はこうだ」というプロセスに拘泥し、フレキシビリティ
にかける会社が多いそうだ。
企業が「ここからここまでは自分たちでできるので端折りたい」といっ
ても聞いてくれない。
たしかに「ウェブを作るということはこういうことだ」という理屈もわかる。
そのこと自体に以前よりも多くのプロセスが介在し、きちんと考えな
ければならない事が増えたのもわかる。
しかし一つ一つのコミュニケーションモデルはユニークだ。
もちろん「完璧なリニューアル」がゴールとならない場合もある。
そうであればヒアリングを通じて相互理解を進めてからプロセスを見
直すということでも良いのかもしれない。

正直に言うと、この点に関しては書いている私自身も自社のサービス
においてフレキシビリティに欠けていたことは否めない。

つい先日のことだが、あるベンチャー企業から相談を受けた。
2ヶ月足らずで会社概要(企業情報サイト)だけをリニューアルしたい、
というオーダーだった。
最低でも3ヶ月。余裕があれば半年近くかけてコンテンツの質を導き
だしたいと考えた。
しかし担当者はどうしても納期を延ばすことに承諾してもらえなかった。

そのとき私たちにかけていたことは
「伸ばせないよっぽどの理由とは何だったのだろう?」
という相手への理解力だった。

それがどんな理由であれ、まずはコミットしてしまうことで同じ土俵に
あがることもできたのではなかっただろうか。

数日前に社長交代のインタビューの記事を新聞で見つけ、担当者の
顔がぱっと浮かび、申し訳ない気持ちで一杯になった。

2007年11月16日(金)更新

広報部は社内の実態を知らない

今年は冒頭からセミナーの機会を多くいただき、10月にいたっては
9回、今月も4回予定している。
ほとんどの会で毎回参加者にアンケートをいただいている。それを
見るとまだまだ改善すべき点や、参加者の方々の意外な興味に気
づくことも多く、とてもありがたい。

そのなかで、現在行われている宣伝会議の「インターネット広報」の
シリーズのコメントで印象的だったものがある。

「雨宮さんの話を聞いていて、いかに自分たち広報部の人間は社内
の事を知らないか、思い知らされた。これで外に向かって何かを伝え
ているなんて片腹痛い。猛省する」

というものだ。
私のセミナーはほとんどが自分がサラリーマン時代に広報担当だっ
た経験に根ざしており、「インターネット広報」といってもIT系の提案
企業の視点で語ることはほとんどない。
どちらかというと、今までの広報が、急激にオンラインコミュニケーシ
ョンが発達する時代、変化対応するためにはどのようなアプローチを
取るべきかというものだ。

企業に勤め、仕事としてコミュニケーションに携わるためには、いくつ
かのステップが必要な気がする。

1.モチベーション
社長は大雑把に「これからはコミュニケーションが大事だ」という。
しかし、それを具体的に解決するのは自分(の部署)だという気持ち。

2.業務プロセスの理解
会社はいったいどういうプロセスで利益を生み出しているのか。
そのためにそれぞれの部門はどのような役割で関連しあっているの
かを理解する。

3.現状把握
ビジネスの改善のためにボトルネックになっている事象はなにか?
原料のコスト高か?生産プロセスの無駄か?社員のモチベーション
か?そのためにコミュニケーションの改善がどのように役にたつの
か?経営視点での把握が必要だ。

4.目標値の設定
どのような状態になれば「改善」といえるのか。
定量的な数値目標を持つことが肝要だ。

5.コストとリソースの調達
ハッスル(世代バレ・涙)だけでは半年も続かない。
上記の目標とその価値に見合う投資を経営に理解してもらう必要が
ある。実際には「いきなりは無理」といわれることも多いが、そのため
にも「すぐにできる小さな改善」を積み重ねて「日ごろから意味のある
活動を担っている」という信頼を得ておくこともプロジェクトを起こしや
すくする要因となる。
いずれにせよ、きちんとしたアサイメントと予算がなければ自分以外
の人員調達もままならない。

6.キャリア目標の設定
この仕事を続けていく上で、どうキャリアアップするのか、自分なりに
絵を書いておくことも必要だ。
なぜなら今までの組織には、そのポストは用意されていないからだ。
実績を作れば他社が渇望し、転職しやすくなるかもしれない。
しかし自社でキャリアアップするためには、自分で部門を背負っていく
ぐらいの自負がないと続かない(評価されない→ポジションと給与が
上がらない)。
さらにコンサルタントなどで独立する、となるとどうなるか。
この絵を描けるか、は私に課せられたタスクだ。
オチは自分でつけろ、というわけだ。

この話、もう少し続けてみようと思う。

2007年11月07日(水)更新

ロゴのガイドラインはありますか?

オンラインコミュニケーションのサポートを中心にしているが、
意外に相談が多いのが、「ロゴの利用規定に関する基準書
を作って欲しい」というオーダーだ。

多くは、企業合併に伴う場合が多いのだが、一番興味深か
ったのはある中央省庁から(間接的に)依頼を受けたときだ。

これだけ知的所有権がうるさい時代であるにもかかわらず、
ロゴやブランドに対する認識がかなりおろそかだった。
まず目に付いたのが名刺だ。約10名弱の方々(半数は官
僚)の名刺はそれぞれフォーマットがばらばらで、つい先日
リニューアルしたばかりのロゴの配置や有無もまちまちだっ
た。

それで理由を聞いてみると

「名刺の作成は各自のポケットマネーで各自が発注する」

からだったのだ!

それでは無理もない。
しかしそうだとすると、自身の信頼を一番最初に裏付けるは
ずの名刺に「ホンモノ感」がないこの状況は問題ないのだろ
うか?

企業や団体のロゴとは何か?
「その企業として行うビジネスや活動に責任を持つこと」だ。

なぜ利用規定を設置する必要があるのか?
「個々のビジネスや活動が同じ会社のものだということを理解
しやすくするため」だ。

会社を作って、あるいは合併などして、みなほとんど例外なく
新しいロゴを作る。しかしその利用規定(ガイドライン)に関して
はおざなりなことが多い。
以前知り合いのベンチャー企業会社(昨年上場)は7年前の
開業時、社長は僕にうれしそうに新しいロゴの図案を見せてく
れた。
それは有名なデザイナーに数百万円(上のほう)で発注したも
のだそうで、それなりにユニークな素敵なロゴだった。
しかし名刺やレターヘッドなど、いくつかの簡単な利用例がつい
ているだけで、システム化された利用規定はなかった。
些細なことかもしれないが、おかげでその会社のWebサイトは
制作会社の好みで作られており、ロゴの視認性が悪く、他の
インターフェイスが目立ちすぎていてロゴ自体の存在感が薄い。

内部告発による企業の不祥事や倫理の低下が顕在化する中、
「私たちはどうやって信頼を得、それを継続しているのか」を社
員全員で再認識するきっかけとして、企業ロゴをどう扱うのか
見直してみると良いのではないだろうか?
ブランドを失うのは一瞬だ。

企業ロゴのガイドラインを作るメリットはそんなところにもある。

2007年11月03日(土)更新

ドメインを失う恐怖

仕事に関連して毎日何十というウェブサイトを見ているとたまに
「おや?」ということに出会う。

杞憂(何かの間違い)であってほしいと思うのだが、昨日金曜日の
朝からあるベンチャー企業のサイトが見られなくなっている。
正確に言うと、
「このドメインは失効しています。再登録の手続きはこちら」
という、いわゆるドメイン登録業者の告知ページになっているの
だ。

ひょっとしてドメイン更新を忘れたのだろうか?
もし、そうだとしたら、気が付いてすぐに再登録すれば、すぐ元に
戻るはずだが、、。
もし、失効してすぐに他社に横取りされていたら。。。
そしてそれを取り返すのに、多額の金額を要求されたら。。。
最悪なのは、取り戻せなかったら。。。

ドメイン失効の場合、以前のドメイン保持者に一ヶ月以内の買い
戻し猶予があるのだが、以前「Pukiwiki.org」がドメイン売り業者
に取られて戻せなかった、という事例がある。

http://yoosee.net/d/archives/2005/09/06/002.html


すでに失効から2日たってサイトが戻っていない。
もしドメインが戻らないとするとメールアドレスも使えなくなる。

失効したのは「.com」ドメインなのだが、きちんとした法人なのに
なぜ「co.jp」を取らなかったのだろうか?
「co.jp」なら取得に謄本まで要求されるので簡単には横取りされない。
また、同じ名前の.jpも未登録で開いている。

以前はトヨタの「WILL-VS」という車のキャンペーンサイトが失効
してすぐにポルノサイトに取られたことがあった。
(4年たってやっと最近消失した)
民主党の大阪府連の女性議員でも同様にえげつないエロサイト
に取られたこともあった。(こちらはいまだに)

シリアスな事態にならないと良いのだが。
人事とはいえ、週末が落ち着かない。

2007年10月31日(水)更新

宣伝会議札幌:編集ライター講座

10月は姫路、金沢、札幌と、ほぼ毎週末アウェイのセミナーがあり、
その間を東京のセミナ-がつなぐ、という状況だった。まるで旅芸人
のような状況で、ホテルでは乾燥によって喉を痛めないように、携帯
の加湿器まで持参している。喉を酷使し、風邪をひきやすい季節だ
が、なんとかしのいでいる。

アウェイのラスト、先週末の札幌は、実はピンチヒッターで急遽決ま
ったものだが、通常おこなっているようなインターネット広報などの
ウェブ関連の講義ではなく、一般的な「編集・ライター」向けのシリ
ーズだった。そういうこともあって内容を変更し、聴講生の興味に応
えるように調整した。
sapporo

実際、一般の人がブログを持ち、社会にも企業にもメディアにも対等
以上にものが言える世の中だからこそ、受けてたつ社会や企業、
メディアにとって「プロの編集ライター」の必要性が高まってきている
のだ。

特に企業のウェブの内容は
「アクセシビリティやユーザビリティに長けてはいるが内容はつまら
ない」
というものが少なくない。

なぜか?
それは、いまだに年次で出している印刷物の会社案内やアニュア
ル、CSRレポート、入社案内などを元にデジタル(HTML)化ではな
いのか?
そのような定量的な情報や型にはめられた文章に、もはや「感動」
や「共感」を感じられなくなっているのだ。

企業のコミュニケーションは、いままでそういうタイムスパン(年次
対応)で事足りていた。あとはせいぜい事あるごとに出していたニ
ュースリリースぐらいだった。

先日の続きだが、なぜ不祥事が顕在化するかというと、このような
対応の準備しかしていないためで、社会の興味は事が起きた後、
どのように継続的に追求される責任に対応していくかにあるのだ。

それがほとんどの企業がやっているように、記者会見に加えてウェ
ブではPDFの謝罪書面一枚の対応では納得し得ず、火に油を注ぐ
のは目に見えている。

今後、企業のコミュニケーション担当者は、一層恒常的かつ定性
的な情報発信・対応をおこなう必要がある。
だからこそ、企業のコミュニケーション部門をサポートする編集ライ
ティングのプロのサポートが必要不可欠になる。

事後、懇親会にも招かれ、直接話を伺えたのも良かったが、このよ
うな可能性を感じていただけたのであればありがたい。

宴が明けてひとつやり残したことがあった。それは前回食べられな
かった「うまいラーメンを食べる」ということだ(笑)。
もちろん夜10時以降ではメタボリックリスクが高いのも承知の上、
果たして飛び込んだ店のオススメは「ホタテのソテー入りコーンバ
ター味噌ラーメン」。
一杯5000キロカロリーぐらいありそうな重戦車だ。

おかげ翌日は朝食が取れなかった。。。
しかし札幌はすでに凛とした空気の中、街全体が針葉樹の香りで
包まれ、紅葉がまぶしく、とてもきれいだった。良い時期に機会を
いただいたことを感謝しつつ、少し街歩きをして空港に向かった。

2007年10月29日(月)更新

21世紀のリエンジニアリング革命

年初の不二家に始まって、「白い恋人」の石屋製菓、最近では個人的に
大ファンだった赤福まで。この数年で企業の不祥事発覚がかなり顕在化
してきた。

以前にも書いたが、その理由は紛れもなく「内部告発」である。

先週末、宣伝会議のセミナーで札幌に行ってきたが、懇親会で新聞社に
勤めていたフリーライターの方と話したが、やはりひと月に数十件の告発
が届くそうだ。(北海道地元メディア1社だけで!)

もちろんその中には、たんなる不平やグチに近いものもないわけではなく、
メディアとしてもすべてすぐに取り上げるわけにはいかないので、内容を吟
味し、本当かどうかの確認にかなり時間をかけ、そのうえで社会的影響力
の大きいものを取り上げていくのだそうだ。

特に中小企業やオーナー企業などでは、競争の激化から利益優先でコス
トカットやプロセスカットを行い、結果、一線を踏み越えるところも少なくない
のだろう。
今、石屋製菓や赤福の報道を見て、冷や汗をかいている企業は意外に多
いのではないだろうか。
米国の巨大エネルギー企業、エンロンが不正経理の告発で破綻したのが
1991年だ。破綻まで行かなかったが国内金融大手でも10年前に相次い
で大掛かりな不正利益供与事件が発覚したことがある。
しかしこの3年は明らかに不正発覚がスピードアップしている。その原因が
ブログやSNS、コミュニティサイトの充実によるものだということは間違いが
ない。今まで告発を行う個人の力は弱かった。仮に掲示板に書いたりメディ
アに持っていっても、確証をとることが難しかった。
しかし現在はソーシャルメディアの特性(相互検証性)により、ネット上でそ
の確を取ることも比較的容易になってきたのだ。

これも以前書いたが、昨年参加した米国のコミュニケーション関係の会議で
盛んにみんなが言っていたのが「透明性」という言葉だ。
多くの企業トップ、または従業員がブログを書く中で、それらのブログの華燭
や創作(いわゆるフェイクブログ)がばれたおかげで反論が集中し、ブログの
閉鎖からサービスの終了、ブランドの消失にまでつながる例が多かったから
だ。もちろん企業の不正の告発に端を発したものもある。

いずれにせよ、コンプライアンスやCSRの観点からも、企業は正直な経営を
(当たり前だが)徹底しないとあっという間に足元をすくわれかねない時代だ。

これを解決するためにはどうしたらよいか。

経営者が正しい経営をする。ごもっともだ。しかしそのためには根本的に「勝
てる」ビジネスモデルが必要になる。そうでなければ続かない。
また、従業員が「勝てる」ビジネスモデルを理解することが重要だ。
最後は、企業が顧客の意見を聞く耳を持つことだ。

ここまでは教科書的なことだ。
しかし多くの企業が悩んでいるのは、この問題をどのようなプロセスでそれを
実現していくか、ではないだろうか?
(弊社への相談もこの点が多くなってきた)
何しろ旧来の広報ブには新しい問題を解決する予算も経営の理解もない。

「リエンジニアリング」は15年前のビジネスプロセス見直しの理論だ。
本もベストセラーになったが、今ではブックオフで105円だ。

しかし、当時の日本企業は製造開発にしか、これを取り入れなかったような
気がする。この本の真意は、事業全体で業務プロセスを見直すところにあっ
たはずだ。
米国と日本のウェブサイトがどうしてもうも違うのだろう、と思うとき、米国は
リエンジニアリングプログラムの延長線上でタイミング良くネット戦略を考え
てスタートしたという気がしてならない。10年過ぎても、「骨」があるから余り
おおきな変化がなく、「コミュニケーションの積み上げによるコーポレートブラ
ンディング」が実現できているからだ。
例外的な危機があったとしたら、皮肉なことだが2000年のSIPSブームの
ときだったかもしれない。このころはいくつかの企業がSIPSによってテクノ
ロジーエンターテイメント化していた。

話を戻すと上記の問題のブレイクスルーには、日本企業でも、もう一度間接
部門を中心にしたの「リエンジニアリング革命」が必要なのではないだろうか?

目先で小手先の対処をしても、手に余るほど、問題は大きくなってきている
気がするのだ。
手探りだが、今年の仕事のほとんどがこのようなアプローチに近づいている
のが証左だ。

2007年10月18日(木)更新

ReuseとCreativity

約10年ほど前、まだウェブサイトを持つこと自体がステータス
だった時代、ある雑誌のインタビューでシーナ&ザ・ロケッツ
の鮎川誠さんが自分のウェブサイトについて語っていて、とて
も感心したことがある。久しぶりにひょんなきっかけで思い出
した。(細部表現は忠実ではないかもしれないが容赦)

インタビュアー(以下・イ):素敵なデザインのウェブサイト
ですね。

鮎川誠(以下・鮎):まあ、ファンと直接対話ができるメディ
アをもてるということはすばらしいことだよね。
イ:音楽活動でも精力的に世界中を走り回ってお忙しいと思い
ますが、ウェブサイトの構想はどのようにして考えられたので
すか?

鮎:言いたいことや伝えたいことがたくさんある、それだけだ。

イ:デザインも相当凝られているようですが、これは奥様のご
意見なども取り入れているのですか?

鮎:いや、まったく。実際のところ、デザインなんて自分には
できないからネットを見ていて気に入ったサイトのデザインや
ボタンなどのパーツをそのまま拝借して使っているだけなんだ。

イ:えっ?著作権の問題など、そういうことをするのは鮎川さ
ん自身、アーティストとしても問題があるのではないですか?

鮎:そりゃあ、まったくないとは思っていないけど、これでだれ
かの権利を奪っているとは思えないな。だいたいあなたはイン
ターネットの雑誌のくせにインターネットのことがわかってい
ないのではないか?そもそも回線もコンテンツもみんなとシェ
アするためにやっているのではないか?みんなが行き過ぎた権
利主張したらネットは味気のないものになってしまうだろ?
第一、突き詰めてみたら、本当にオリジナリティのあるものな
んてそんなにないはずだ。
人からインスパイアされたものを、もがきながら自分のものに
する、それがロックンロールなんだと思う。
要はオリジナルに対するリスペクトがあるか、ないかだ。

      ◇      ◇      ◇

オリジナルは博多弁だったので、もっとケンカっぽく伝わった
が、写真は笑っていた。多少理論展開に無理があるとは思うも
のの、96年当時にこういいきる鮎川誠はかっこよかった。

そして「ひょんなことで思い出した」きっかけは以下のブログだ。
とても共感した。

株式会社ヘッドストロング・ジャパン
北添 裕己さんのエントリーです。
http://blogs.itmedia.co.jp/torapapa/2007/09/reuse_creativit_a251.html

(抜粋ここから)
コンサルタントには創造力が求められる、とは思いますが、じゃあ単純に
Creativeに富んでいればそれが効率的かというと、必ずしもそうでもなく、
どっちかというと高い「再利用」能力があるかどうかの方が、はるかに戦
略コンサルタントとして大成できそうだし、実際、個人がCreativeをうたう
そのコンテンツ自体は、かなりの割合、いろんな過去の資産、他者から
得た知識・知恵の「再利用」で構成されていることが多いそうです。

「ReuseはCreativityに勝る」
Creativeだといわれる人は、その過去の秀作を上手にReuseする能力に
たけているのだと思います。
(抜粋ここまで)

鮎川誠のインタビューの真意とは少しずれるかもしれないが、彼自身の
楽曲の真意はまさに「最高のReuse」だ。
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会社概要

1999年2月創業。 ビジネスにおけるインターネット活用経験は日本のインターネットの発展の変遷とほぼ同期しており、豊富な経験を有する。 主宰者は企業広報から自己啓発でWEBマスターになった経験から、今後オンラインを中心とした企業コミュニケーションが重要になるとの思いで独立、創業した。...

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個人プロフィール

美術大学デザイン科を卒業後、12年間工業デザイナーを勤める。当時勤めていた外資系メーカーで本社出張を重ねるうち、本社の親組織で行っている「コーポレートコミュニケーション」の役割と重要性に魅了され、セルフリストラして広報部に社内転職。自ら部門を超越した「コーポレートコミュニケーション」を実践する...

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